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INTERVIEW

Japanese

ヤーチャイカ

2013年11月号掲載

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Member:ニシハラ シュンペイ (Vo/Gt) キク値 ユウタロウ (Ba) ナカムラ ヨシミ (Dr)

Interviewer:沖 さやこ

FUJI ROCK FESTIVAL'11 ROOKIE A GO-GOに抜擢され、2012年2月に完全自主でリリースした初の全国流通盤『ただしくはばたけ、鳥たちよ』はプレス数1000枚完売。その後KOGA RECORDSに所属し、活動の幅を広げる4人組バンド、ヤーチャイカ。彼らが1年振りの作品『ふぁるすふろむあばゔ』をリリースする。ノスタルジックな雰囲気を醸す緻密かつ爆発的なアンサンブルと、あどけなさのあるヴォーカル、文学的かつ抽象性のある歌詞――浮雲のように佇む彼らの生態を探る。

 

-2008年の結成以降、この5年間はバンドにとってどんな年月でしたか?

ニシハラ:バンドを結成してから自我が目覚める......物心つくのが遅かったので5年も経った気がしないです(笑)。最初の3年くらいは何やってたか思い出せないし......。やりたいことを叶えるためにバンドを組んだんですけど、とろいのでどうしたらいいのかわからないままだったんです。自分たちなりにあがいてもがいて......そういうときに(FUJI ROCK FESTIVAL'11の)ROOKIE A GO-GOとか、古閑(裕)さん(※レーベル・オーナー、ROCKET Kなどのバンド活動も行っている)との出会いとか、自分の力の及ばぬいろんなものが降ってきて、試練を与えてもらうような感じで。その度に"ちゃんとしないとな""じゃあやってやるか"と......そういうときにちょっとずつ成長していったのかな。溺れているように見えると思うんですけど(笑)、なんとか沈まずに犬かきで泳いでいるような感じです。

-この5年間でメンバー同士変化が見えることは?

ニシハラ:僕はないですね。このバンドは大学のサークルで組んだので、組む前から知り合いだったんで。

キク値:あんまり印象は変わらず。

ニシハラ:......仲良くもならず(笑)。

-ははは、いい感じの距離感を保っているんですね。

キク値:それはすごく大切にしています(笑)。周りのサークルのバンドがパッと解散しちゃったりしてたんで、そういうのを見ていて......いい距離感と温度感を保つことで継続できればと。

ニシハラ:サークルを出てもバンドを続けるのは大変で。バンドを続けないと何をやりたいのかわからないまま終わってしまうし。今も何がやりたかったのかをずっとさがしてる状態なんです。それがあり続けないと多分、曲は作れない。

-今作『ふぁるすふろむあばゔ』は前作『メルヒェン』から約1年振りのリリースですが、その間のバンド活動としては具体的にどういうことを?

キク値:去年全国流通のリリースがあったからだと思うんですけど、地方に行く機会がここ1、2年でグッと増えてきて。行ったことがないところにも行ったりしましたし、今年はそういうことが新しくやってみたことかな。

-エンジンが掛かり始めている。

ニシハラ:んー......でもギアをトップに入れるのは今じゃない。それは自分たちではわからない見えざる力に掛かってると思うんですけど、それもいつか来そうな気がしてます。本当に"何で!?"と思うことの繰り返しでバンドが続いてきたんで、それを逃さないために常にいい感じにアンテナを張って。

-曲の作り方はどのように?

キク値:ほとんどニシハラが弾き語りで構成まで決まった状態で持って来て、それにオケを乗っけていきます。

ニシハラ:(弾き語りの時点で)リフまで作ることが多いです。僕が頭からお尻まで器を作って、そのなかに他の3人がブチ込んでいく。"○○(というアーティスト)っぽく"みたいなことは絶対に言わないし、お題を明確な言葉では出さないんですけど。

-じゃあその制限のなかで楽器隊が各々の個性を出していくということですね。

キク値:そのほうが手ごたえがあることが多いですね。弾き語りを聴いたときに3人は"○○っぽい"と思ったりはするんですけど、それを共通させちゃうとそれっぽくなるだけだから、"(ニシハラは)こう弾いてほしいんだろうな""一般的にはこう弾くんだろうな"と考えつつもそこをはずしたり、かなりやりたい放題個人でやって、最後に4人が1本に繋がる部分を探ってまとまりを出すというか。フレーズのアイディアは大喜利みたいな感じで出してます。だから曲を作るのには時間が掛かるんですけどね。

ニシハラ:(良い悪いのジャッジは)表情で伝えたりね。眉間に皺を寄せたり、いいと思ってるときはにこにこしたり(笑)。首を傾げる角度で伝えたり......。

キク値:5年の繋がりで、そういうものを察知して作っていきます(笑)。ニシハラが納得できたものが、世に出ていくという感じですね。

-ニシハラさんは結構頑固なんですね。妥協しないというか。それはご自分の理想に近づけたいからですか?

ニシハラ:理想のものを作りたいんですけど、その理想がこの世にないからどれが理想なのかわからないから続けているので......なのでまだないものに近づくには妥協しないほうがいいのかなと。ない目標に対して走っている感じ。ライヴごとにどんどん曲も改造されていくし、増改築を繰り返して迷路になったり。

-『ふぁるすふろむあばゔ』は"過ちや馬鹿馬鹿しさが天から降ってくる"という意味が込められているそうですが、このコンセプトに行き着いたのは?

ニシハラ:コンセプトやタイトルも勝手に僕が決めて"これになったからね"という報告をみんなにするんですけど、今回は曲が出揃ってない時点で先にタイトルが決まって。その当時の僕が――あんまりそういうことはしないんですけど、思ってたことを今回はばちこーんと表紙に出したいなと思って。

-紙資料には"やりきれない出来事や悲しみは避けようもなくやってくるけれど、そこには喜劇性とおかしみが潜んでいる"という記述がありましたが。

ニシハラ:僕らがバンドをやっていく上で"何でこのタイミングで?"という風にいいチャンスが巡ってくるのと同様に、悲しい出来事や試練も"何でいまなの?"というときに突然やってきたりして。それがたまたま僕も実生活で......しんどかったけど、それで苦しんでいるときは苦しくて、でもそんなじたばたしている自分を俯瞰で見たとき、そうやってもがいているのはただ悲しいだけじゃなくて喜劇的で、情けないところも実は面白い。そういう風にちょっとでも考えられたら、楽になる気がして。俯瞰で見れたらいいなという願望も込みで、一生懸命作品に書き込んでいった。レコーディングが終わって電車待ってる間にビールを飲んでいて、そのとき単純に"しんどかったけど楽しかったな"と思ったんですよね。それがタイトルにすごく反映されているかな。震災とかも急にやってきて......答えはないんですけど"そういう避けられないものが来たときにどうする?"という作品にしたいなと思って。

キク値:コンセプトに対しての拒否権は僕らにはないけれど(笑)、こういう意味だよということも言われなくて。だからしっかりした意味を聞くのはこういうインタビューのときが初めてなんです。意味を知りすぎたら、その意味に向けて曲を作っちゃう気はするので......それも多分4人の共通認識だと思うんですけど、あんまり知りすぎないほうがいい。僕は事前に歌詞を聞くこともしないんです。後から"そうなんだー"みたいな。その後からが俯瞰にも繋がるかもしれないんですけど......特にそのタイトルは先に決まってたけど、作っているときはバンドの曲として合うことに焦点をあてているので、歌詞や曲名、タイトルに向かっているつもりではなかった。でも最後に通して聴いたらぴったりだなとは思っています。

-タイトルがひらがなの理由は?

ニシハラ:英語、カタカナ、ひらがな、全部考えたんですけど、"ふぁるす"にfarce(滑稽さ)とfalse(間違い)という二重性があるので英語は無理だなと思って。それでひらがなにしたら怪文書みたいに見えて。字面だけ見たら英語なのかなんなのかわからない。暗号というか......そう見えるのが面白いなと思って。『ふぁるすふろむあばゔ』という作品の入り口に鍵をかけているというか。......僕は頑固でひねくれ者なので(笑)、その鍵を開ける作業から楽しんでもらうのもいいかなって。仕掛けは多いほうが面白い。