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INTERVIEW

Japanese

ヤーチャイカ

2013年11月号掲載

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Member:ニシハラ シュンペイ (Vo/Gt) キク値 ユウタロウ (Ba) ナカムラ ヨシミ (Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-なぜ"空から降ってくる"という表現になさったのでしょうか。

ニシハラ:"避けられない"という意味ですね。飛行機やUFO、隕石が落ちてくる夢をすごく見るんで......そういう感じです。

-歌詞も人工衛星、月、太陽、夜空、朝焼けなど、空に繋がる言葉が多いですよね。

ニシハラ:そうですね。ブログで毎日青空をアップするような感じではないですけど......(笑)。不思議だなとは思いますけどね。怖がりなので人工衛星とか、飛行機とか落っこちてきそうな不安感が常にあるんです。......ロシアに隕石が落ちてきたじゃないですか。あのニュースはわくわくしました。

キク値:怖がってないじゃん、わくわくしてるじゃん(笑)。

ニシハラ:(笑)......非日常が日常のなかに急に飛び込んでくるときなんてそうそうないじゃないですか。SF未満みたいなことが起こると"遂に来たか!"みたいな。わくわくと恐怖が同居している、そういうものが好きなのかもしれないです。ちょっと怖い、少しだけ怖い、みたいな曲も作りたいなと思っているので。本当に起こったら嫌なんですけど。......僕はあんまり生活のことを歌っていないなと思っていて。"誰かが好きだ"とかそういうことを歌いたいんだけど、別の形を借りて歌うためにややこしい手続きを踏んで作っているのが、現実を生きていないような感じに写ったり。

-いやいや(笑)、絵を描いているような歌詞だと思います。言葉が踊っているような感覚もあって、楽しんで書いてらっしゃるのかなと。

ニシハラ:歌詞も曲もあんまり音楽的には作ってないんです。ここにこれを置く、この色を塗る、こんな形にする、こういう風に遠近感を出す......のように、絵や粘土細工みたいに作ろうと思っているので。なので聴く人は"ん?"って頭にハテナが浮かぶみたいですけど(笑)。歌詞を書くのはしんどいけど、楽しいですね。でも昨日久々に家に帰ったら親に"あんたの歌詞はよくわからない"と言われて......親がわからなかったら誰がわかるんだろう? とへこんだけど(笑)。確かに1曲全部を通して意味が通っているわけではないのは自分でもわかっているんです。歪や凸凹がたくさんあるけれど、サビや何でもないBメロの終わりに言いたいことがちょこっと仕込んであって、そこに行くまでに......さっき言った暗号というか、掻き分けて掻き分けてたどり着いてほしいなと思います。

-季節や色を表す言葉や綺麗な言葉もたくさんあるけれど、普通は歌詞に入れないような"にきび""汗疹"などの言葉もあって、生々しい部分も強い気がします。違う曲に同じワードを散らせているのは意識的なものですか?

ニシハラ:そうです。同じことを何度も言っちゃいけない、みたいな使命感は要らないかなと常に思っていて。でも、同じことを何度も言うことがテーマではなくて。藤子・F・不二雄とか手塚治虫は違う漫画に同じ登場人物が出てきたりするけど、それぞれ意味が違ったりもするし。今回は特に作品トータルで考えて、それをやったら面白いかなと。タイトルのテーマがあるので、そこでそれを表現して。

-花や色彩もたくさん用いられていますね。

ニシハラ:曲を聴いたり作ったりするときに、"この曲はあの色だな"と色が聴こえてきたりすることがあって。聴こえてきた色と出てくる色は必ず合うわけではないんですけど、赤だから元気とか、青だから悲しいとか、そういうものも違うなと思っていて。そういう文脈から切り離されてポッと色が出てきたのかな。花は別に僕好きなわけじゃないんです。見た目とかグロいから、綺麗なものではないなと思っていて。道に咲いている植物の名前とかはあんまりわからないんですけど......それも色と一緒で、みんなが花に持ってる一般的なイメージとは切り離された使い方をしているのはあります。そういう生のままの思考をどうやって言葉に残していくかは苦労しますね。

-なるほど。サウンドはギターがハード・ロック調なのもいい違和感になっていると思います。

ニシハラ:僕らの曲は歌ものなんですけど、前は歌ものから逃れたくて。構成の面白さとか、弾き倒したりとか、突拍子もないことをやって受けを狙いたいとか思っていたんですけど、違うなって(笑)。それよりも出てきたものをどう変形させるか......別人になりたいわけではないけど、違うバンドにはなりたかったんです。どう自分たちが変わっていくかが面白いかなと。今回はメンバーみんなが持ってくるフレーズや持っている感覚が歌ものだと思って。その感覚をどうハードに鍛え上げていくか......フィットネスみたいな感じに作り上げていったんですけど。新しいことも取り入れたけど、自分の持っているものを全て捨てたわけではない。持っているものをどうやって違う表現に、どうハードにしていくかという挑戦ができたのはこの作品の自信だなと思います。

キク値:もがきながらね(笑)。曲作りのときはすぐ雰囲気悪くなるから。

ニシハラ:(笑)そうやってもがいてるところを見てもらうのも面白いかなって。それも今回のテーマに繋がるのかな。

-「鈍亀」は初期デモに収録されている人気曲ですが、今回この曲を入たのは『ふぁるすふろむあばゔ』のコンセプトに合っていると思われたからですか?

ニシハラ:入れたほうがいい、入れてほしいという意見もあって入れたんですけど、自分たちでも合うなと思ったし。結果的に繋ぐ役割にもなって、顔にもなって。この曲にまた助けられたなあという感じで。テーマがいちばん濃縮されている気はします。

-あと歌詞に"七"という言葉が多いのも気になって。

ニシハラ:すごい! それは僕が意図して入れ込んだんですけど、気付いてくれた人は初めてです。歌詞だけでなく、「散ル散ル満チル」の間奏があけるキメも7なんですよ。今回は"七"にしようと思って。

-それはなぜ?

ニシハラ:んー......あんまり言いたくない(笑)。

-ええっ、そんな(笑)。謎にしておきたい感じですか?

ニシハラ:(笑)......今回は末広がりの"八"の一歩手前の"七"。でも前向きな"七"です。1曲目「F(f)FA」は"ふぁるすふろむあばゔ"のことで、8曲目はタイトル・トラックで、この2曲を頭とお尻にしようと最初から決めていたんです。あんまりコンセプチュアルにするつもりもないんですけど、サンドイッチすることによってそうなったというか。今回はこういう曲が足りないならこういう曲を作ろうと、枠を作っていったのはあるかも。

キク値:最初と最後の曲が決まっているというのは珍しいパターンでしたね。ニシハラがどういう風に作っていったのかは、こういうところで知るわけですけど(笑)。

-(笑)なんだか不思議なバランスですね。皆さんがニシハラさんについていくというわけでもなさそうだし。

ナカムラ:そうですね、反発もしますし。

キク値:うん、ついていくほど従順ではない(笑)。弾けと言われたものはそのまま弾かないし。それでみんながお互いのやりたいことに納得できるところまでギリギリで落とし込めた曲になっている。お互いがしっくりくるものを探すために曲を作っているような感じはあるかな。

ナカムラ:4人それぞれが我をぶつけ合っていくのも面白いかなと思うし。自分の好きなことをやって、ぶつかり合ったときは折衷点を見つけていい感じにして......それくらいでいいと思ってます。意思統一してしまうとつまらないし。

キク値:"こういう曲でこういうジャンル"という定義は、このバンドではピンとこない。そうやって作ったら早く曲が作れるのかもしれないけど(笑)、それじゃあつまんないよね。レコーディング終わって寝かせてちょっと経って聴いて"ああ、どうにかなったなあ"って。作ってる間はなかなか客観的にはなれないけど。

ニシハラ:作ってる最中は空気も険悪だし、しんどいけど、それがライヴではまると楽しいよね。そこで解き放たれる感じというか。......危ういバンドです(笑)。