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INTERVIEW

Japanese

ザ50回転ズ

2012年12月号掲載

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Member:ダニー (Vo/Gt) ドリー (Ba) ボギー (Dr)

Interviewer:天野 史彬


-実際、今はインターネット上でいろんな音楽の情報が行き来してるし、人々の趣味趣向も細分化していってて。その分、誰もが憧れるポップ・ミュージックっていうものが成立しづらくなってる時代ですよね。でも、50回転ズがリスペクトして鳴らしてきたのって、多くの人の気持ちを動かしたり、憧れられたりするようなロックンロールやパンク、歌謡曲じゃないですか。このアルバムでは、もう1度その原点を自分たちで鳴らそうとしたからこそ、ホーンを取り入れたポップな曲調が生まれたんだろうし、時代の変化を意識したからこそ、歌詞もノスタルジックになったんじゃないですかね? だから、「あの日のロックンロール」の<あの日の歌が思い出せない>とか、「さよならヒーロー」の<あの頃はよかったなんて 言いたかないぜ>っていうのは、ポップ・ミュージックの現状に対して歌われてるんじゃないかと僕は思ったんです。

ダニー:なるほど……。俺たちは個人的な思いで、去っていった友達とか、離れざるをえなかった人たちのことを思ったりして、対人間で歌詞を考えてたけど、確かに、対社会で考えることもできるかもしれない。特にインターネットに関しては、もう、苦言だらけで毎日暮らしてますからね(笑)。

ドリー:たとえばYouTubeひとつとっても、便利なものですけどね。便利なんですけど……(笑)。

ダニー:俺は、YouTubeで検索してる姿がもう、ミュージシャンの姿ではないと思ってしまうもん。ただ酒飲んで喧嘩して、お姉ちゃんはべらしてっていう古きよきミュージシャン像はやっぱカッコいいと思う部分があるんですよね。“Mick JaggerはYouTobe見いひんやろうな”とか、“Keith RichardsがYouTubeチェックしてたら嫌やろ?”とか、そういうロマンチックな部分はずっと持ってて。だから俺たちもインターネットに接するのは凄く慎重ですし。インターネットのすべてとは言いませんけど、便利なだけで、そこから感動とか発見する喜びを見出すのが難しいなと思ってて。それよりも俺は、“あの日ライヴハウスへ行って見た無名のバンドがカッコよかった”とか、“YouTubeで見たRAMONESより、あの日見たRAMONESのコピーバンドのほうがカッコよかった”って思うし。

ドリー:今の人って、古いバンドにしても新しいバンドにしても、みんなYouTubeで検索してて、すごく詳しいんですよね。いっぱい知ってて凄いんだけど、その中からひとつのアーティストを挙げて酒飲みながら話すと、全然そのバンドのよさをわかってないじゃん! っていうのも多いんですよ。

ダニー:そう、浅っちい奴が多いなっていう印象があるんですよね。これはあくまで俺らの個人的な意見であって、音楽の聴き方が正しいとか間違ってるとか言うことはできないですけど。ただ、俺たちは今でもレコード屋さんで、これいいのかな? と思いながら買って、失敗する、と! 全然不経済よね(笑)。金ばっかりなくなって。でも、レコード買って帰る時のドキドキ感、汗ばむ感じとか、ロックンロールの基本はそこにあるんですよ。

-だから今回のアルバムって、今の時代に対して凄く喧嘩腰というか、批評的な作品だと思うんですよね。だって、今はボーカロイドを使ったり、動画配信サイトを通してプロ・アマ問わず誰もが音楽を作って世に出せる時代だけど、ホーン隊と一緒にライヴ・レコーディングをしてパッケージングすることは、自分たちの演奏力に対する自信とか、自分たちはプロのミュージシャンなんだっていう意識がないとできないことだと思うし。

ダニー:鋭いねぇ~。おっしゃる通りで、アンプとギターとベースと太鼓さえあれば負けん自信とかプライドがあって。それを根底今回に持ちながらバンド活動をしてる気はするんですよね。手ぶらで海外に行って、海外ツアーをやる自信があるんですよ。パンツ1セットくらい持っていけば(笑)、向こうで楽器借りてやっても、俺たちはいつもどおりのカッコいい演奏をできる自信があるんで。バンドのパワーってそこだと思うんですよね。

-だから、このアルバムは凄く、50回転ズのアイデンティティが詰め込まれた作品だと思うんです。ただ、今おっしゃってくださったような、50回転ズ的な音楽との触れ合い方をする人っていうのは、特に若い人たちの間ではもうほとんどいないかもしれない。だからこそ、50回転ズの存在意義っていうものも、これからますます大きくなっていくんじゃないかと思うんですよね。ここから50回転ズと若い音楽リスナーの間で起こる化学反応が凄く楽しみだし、その取っ掛かりになるのが、このアルバムなのかなって。

ダニー:自分たちの中では、世の中が移り変われば変わるほど、ネット主体の社会になればなるほど、自分たちの存在意義は大きくなっていってるんですよね。それが現状、世の中とマッチングしてないところが痛いところかな(笑)。でも、マッチングしてないからこそデカいとも言えるんですけどね。だって、いきなりインターネットがある時代に生まれた子らの中には、レコード・ショップの存在を知らない子たちもいると思うんですよ。そういう子らの音楽の接し方が僕らと違うっていうのはまったくしょうがないことやけど、俺たちみたいにメジャー・レーベルと契約して、ライヴしたらお客さんが来てくれるようなバンドが、せめて言っていかないとあかんこともあるんじゃないかなと思うんですよね。使命感じゃないですけど、もし、音楽の深層に触れたがってる子たちがいるのなら、俺たちの音楽とか喋ってることに触れてもらって、“そういう方法もあるんや”って思ってもらえると、それだけでもこうやって、唾飛ばしながら喋らせてもらった甲斐があると思いますね。