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FEATURE

Japanese

ZOC

2019年05月号掲載

ZOC

Writer 宮﨑 大樹

シンガー・ソングライターの大森靖子を中心として結成されたアイドル・グループ、ZOC。彼女たちが、平成最後の日となる2019年4月30日にデビュー・シングル『family name』をリリースする。ここで、本作について紹介する前段として、まずはZOCという存在について触れていきたい。

そもそも"ZOC"という言葉は"支配領域"を意味するゲーム用語"Zone of Control"の略だが、このユニットにおける"ZOC"は、"Zone of Control"に、大森靖子が提唱している"孤独を孤立させない"という意味を持たせた"Zone Out of Control=孤立しない崇高な孤独が共生する場所"だという。このグループ名、実に言い得て妙なネーミングだということが、ZOCのメンバーのプロフィールを見ていくとよくわかる。

ZOCのメンバーは、大森靖子が2018年にリリースしたアルバム『クソカワPARTY』収録曲「ZOC実験室」のMVとともに華々しく披露された。始動当時のメンバーは計7人で、現在は6人体制。自らを、プロデューサー兼メンバー兼同志を表す"共犯者"と位置づけた大森靖子、APOKALIPPPSのメンバーであり、現在断食(活動休止)中の生ハムと焼うどんのメンバーとして知られる西井万理那、そして、このふたりを除いたメンバーは、大森靖子も選考委員を務めている講談社主催のオーディション"ミスiD"の出身者で構成されている。各メンバーのプロフィールを抜粋すると、"毎夜ぼっちで踊ってた熊本のワンルーム・ロンリーダンサー"藍染カレン、"自らの実体験を元に児童虐待に対するNPO法人「bae(ベイ)」を立ち上げ、コラムを書き、華麗に踊る、少年院帰り"戦慄かなの、"孤高の横須賀バカヤンキー"香椎かてぃ、"女子百八のコンプレックスを持ち、そのすべてを「カワイイ」に変え突き進む"兎凪さやか、といった具合に、どこか心の闇を感じさせるメンバーが揃う。例えるなら、休み時間にクラスの輪の中心にはおらず、一歩離れて読書や音楽に興じていたり、はたまた学校を抜けだしたりと、アウトローまでは言いすぎかもしれないが、そういったマイノリティ、孤高な存在たちの生きる場所がZOCなのかもしれない。


さて、そんなZOCのデビュー・シングル『family name』は、大森靖子が"family name、チュープリの二曲ともメンバーそのまんまの曲、圧のある可愛さかっこよさ潔さを楽しんでいただける仕上がり"とコメントしたとおりの作品になったようだ。

大森靖子が作詞作曲を手掛けている表題曲「family name」は、Aメロでの痛々しく、そして生々しいストレートな歌詞が胸に突き刺さってくる1曲。しかしながら、いわゆる"病んでいる"曲ではなく、どうしようもない現実から希望に向けてあがいていく姿がこの曲では思い浮かぶ。それはまるでグラデーションのように、情景が闇から光へ変化していく感覚を覚えた。琴線に触れるような湿ったメロディを、美しくもエモーショナルに歌いあげているサビのユニゾンも感動的だ。c/wの「チュープリ」も大森靖子による作詞作曲で、"気づいていたの/私の名前のTシャツの下に/透けてるあの子の文字"といった、アイドルならではの視点で綴られた、メンバーの等身大を感じられる歌詞がユニーク。サウンド面としては、ZOCの所属事務所 ekomsの代表であり、Maison book girlなどのプロデューサーでもある音楽家 サクライケンタが編曲を手掛けていることもポイントで、彼女たちの持つかわいさを見事に引き出したポップ・ナンバーに仕上げている。



そんな曲の表情がはっきりと異なる2曲を収録した本作を聴くと、ZOCの底知れないポテンシャルを感じるとともに、いやが上にも今後のアルバムなどにも期待が高まってくる。本作を聴きながら、今後の動向も注目していきたい。



▼リリース情報
デビュー・シングル
『family name』
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1. family name
2. チュープリ
3. family name[instrument]
4. チュープリ[instrument]

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