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スピッツ

 

スピッツ

Writer 遠藤 孝行

「あふれ出しそうな よくわかんない気持ち」ストレートなロック・ナンバーにのせて繊細でひねくれていて甘酸っぱい歌詞が歌われる。今回もスピッツ節が炸裂。
スピッツの35枚目のシングルとなる『君は太陽』がリリース。タイトル・トラックは8月22日からロードショーされているアニメ映画「ホッタラケの島 ?遥と魔法の鏡?」の主題歌でもある。アニメの内容は、忘れられた宝物="ホッタラケ"にされた宝物でできた不思議な島に迷い込んだ遥(はるか)と、その島の住人であるきつね「テオ」の冒険ストーリー。
意外だが、スピッツがアニメの主題歌を担当するのは今回が初めて。アニメの冒険ストーリーに似合うポップで爽やかなナンバー。

スピッツは1991年ミニ・アルバム『ヒバリのこころ』でデビューしてから今年で18年。バンド結成時から数えると22周年を迎える。しかしその楽曲ももちろん本人達も若々しさを全く失っていない。これは凄い事だ。
95年の11枚目のシングル「ロビンソン」でブレイクを果たし、それ以降も「空も飛べるはず」、「チェリー」、「渚」など数えきれないほどのヒット・シングルを世に送り出し、今や日本を代表するトップアーティスト。それでも変わらない等身大のスタンスこそが彼らの魅力だろう。

僕がスピッツを知ったのは、「ロビンソン」からだった。ちょうどその頃はだんだんと音楽に興味を持ち始めた時期だったが、まだ残念ながらスピッツの熱心なリスナーでは無かった。それでも、曲名は忘れてしまっていても、メロディはしっかりと憶え続けていた。そう、耳に残りそして口ずさめるメロディをスピッツは書き続けている。普遍的なメロディはやはり残っていく。
その後、僕はスピッツにハマり、またその頃に耳にしていたメロディと出会う。『ハチミツ』、『インディゴ地平線』、『フェイクファー』の3作は個人的にもとても良く聴いたアルバムであり、今でも聴くと当時のことを思い出したりもする。思い出だけに限らず、曲を聴いて風景や情景がこんなにも浮かんでくるバンドもいないだろう。現時点で最新アルバムにあたる『さざなみCD』もシンプルながらダイナミックで新しいスピッツを見せてくれた。

今年の7月ASIAN KUNG-FU GENERATIONが主宰する「NANO MUGEN FES.」において、僕は初めてスピッツのライヴを見る事が出来た。他の出演者とはひと味違う緊張感が漂う中、4人は登場する。想像とは違いとてもアグレッシブで熱いライヴ。ベースの田村明浩はマイク・スタンドを倒しながら熱いプレイを見せてくれた。確かな演奏力と草野正宗の透き通る様な歌声、スピッツはライヴ・バンドとしても素晴らしいと実感することができた。

スピッツに個人的に惹かれる理由の一つは歌詞。この時のライヴでも歌詞がしっかりと耳に入ってきて心に響いてきた。ただ熱い歌詞というのではなくて、何処か頼りなくて、捻くれていて、だけど男の本音が見え隠れする様な歌詞。
今回のシングル「君は太陽」でも、「止めたくない今の速度 ごめんなさい」とか「理想の世界じゃないけど 大丈夫そうなんで」などの歌詞があって、少し頼りなさげな印象をあるけれど、最後は「もう迷わない君と」と締めくくる。この絶妙なバランスがとても心をくすぐるというか、スピッツにしかない音楽だと思う。

今年の夏のスピッツは「NANO MUGEN FES」をはじめ様々なフェスに出演した。スピッツ自身が主宰するイベント「ロックロックこんにちは」も行われ大盛況のうち幕を閉じた。セット・リストを見ると、どの会場でも古い楽曲が演奏されていたり、同じセットの物がない。それは新たなチャレンジをバンドがしていて、常に新鮮な気持ちを保ち続けているという事を示している。

結成22周年を迎えて更なる進化を続けるスピッツ。このニュー・シングル「君は太陽」でも瑞々しさは失われてはいない。この22年目の新しいスピッツを是非とも感じてほしい。

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