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前作『Depression Cherry』からたった2ヶ月で届けられたボルチモア出身のドリーム・ポップ・デュオによる6枚目。スパンの短さは決してサプライズ的ではなく、創作の泉が湧き続けたゆえで、いつだって彼らは自然体だ。この2枚で無理にアプローチを変えたり、対となる要素を持たせることもなく、まるで同じ方向を向いている。ただ新たな創作の刺激となったのはVictoria Legrandが数曲ベースやギターを弾いていることだろう。前々作『Bloom』までのシンメトリーで幾何学的な美しさを持つメロディと規則正しいサウンドが、彼女の絶妙な拙さによって歪み、グルーヴが引き出されることで新たな心地良さを生む。彼らの航路は少しずつだが着実に舵を切っている。
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2010年の年間ベストの呼び声高い『Teen Dream』から約2年、またしてもVictoriaとAlexによるポップ・デュオBEACH HOUSEは傑作を創り上げた。儚いイマジネーションが開花した時に得られる一時の美しさを『Bloom』......花にモチーフを与え、制作された今作は、前作ほど"逃避"の様相は薄れ、だがしかし甘美で深遠ゆえの危うさの漂う、喪失感を伴った叙情性溢れる音楽。ギターのアルペジオとオルガン・ピアノが絡み合い飛翔していくかのような官能性と、Victoriaの中性的でイノセントなヴォーカルが手を組んで新たなユーフォリアを演出する。これは前作を聴いたときにも感じたことだが、黄昏時に聴くには、これ以上ないBGMなんじゃないかと思う。今作のテーマは"旅"なのだという。
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あのFLEET FOXESやGRIZZLY BEARも絶賛するボルティモア出身のドリーム・ポップ・デュオBEACH HOUSEから3rdアルバムが届けられた。本人達も自分達のクラシックが作れたと語る本作は、深くそして穏やかで、まるで森の中の優しい雨のように心が洗われる作品だ。前作リリース以降、地元ボルティモアを離れNYの教会を改造したスタジオで作った今作は完成度が高く、1つの世界観で統一されている。スライド・ギターとオルガンとフランス映画音楽の巨匠Michel Legrandの姪であるVictoriaの存在感抜群のヴォーカル。彼らはこの組み合わせだけで幻想的な世界へ僕らをどこまでも連れて行ってくれる。しかしそれは自分の中に閉じこもる様な世界ではなく、とても開放的なものだ。
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多言は無用だろう。これがBOOM BOOM SATELLITESの最後の作品だ。その事実はどうしても切り離して考えられないが、ここまでポップで突き抜けていて美しいエレクトロニック・サウンドに昇華できたのは中野雅之(Ba/Prog)が探求に探求を重ねたからだろうし、逆に川島道行(Vo/Gt)の歌と言葉は、希望も絶望も共にある彼の心から自然に浮上したように聞こえる。タイトル曲の中で川島が"Lay your hands on me(ずっとその手で触れていてくれ)"と歌い、"I fly(僕は飛ぶ)"と歌う時間は聴き手が存在する限り永遠に思える。全4曲の後半2曲はもう歌ではなく川島の"声=意志"の力に寄り添うようにメロディ、サウンドが吟味され尽くしているのだが、そのことが何かに機能するために作られた音楽の一切を凌駕する。鳴っている音すべてが美しく、0.01秒の残響も聴き逃したくない。
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オリジナルとしては『TO THE LOVELESS』以来、約3年ぶりとなる8枚目。ギター・サウンドやヴォーカル・ワークのオリジナリティに磨きがかかり、エレクトロニックなサウンドの中にもオーガニックなグルーヴを感じさせるなど、新鮮な驚きに満ちた新章に相応しい仕上がり。昨年6月にシングル・リリースした「BROKEN MIRROR」をはじめ、初のカヴァーであるTHE BEATLESの「HELTER SKELTER」でのBBS流カオティック・ワールド、温度感や曲のストーリーをリアルに伝える「SNOW」。フィジカルに訴えるハード・チューン「FLUTTER」などを経て、ピアノのサウンドや清冽なサウンドスケープが印象的なタイトル・チューン「EMBRACE」や「NINE」へ至るエクスペリメンタルな全10曲。
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アジカン企画&主催の夏フェス"NANO-MUGEN FES."も今回で9回目(ツアー形式だった「NANO-MUGEN CIRCUIT2010」を含めると10回目)。WEEZERやMANIC STREET PREACHERSをヘッドライナーに、BOOM BOOM SATELLITES、the HIATUS、若手注目バンドねごと、モーモールルギャバンなど、洋邦共に相変わらずの豪華ラインナップ。出演バンドの楽曲が1曲ずつ収録されているコンピレーション・アルバムは、今作で5作目。そして、今回収録されているアジカンの新曲は2曲。チャットモンチーの橋本絵莉子(Vo&Gt)を迎えた「All right part2」は、後藤と橋本の気だるい歌い方と熱が迸る歌詞のコントラストが鮮やかで、高揚感に溢れたギター・リフとメロディも力強く鳴り響く。ユーモラスなあいうえお作文、男性の言葉で歌う橋本の艶とレア感も思わずニヤついてしまう。東日本大震災時の東京を描いた「ひかり」は、人間の醜い部分や絶望感にも目を逸らさず、物語が淡々と綴られている。言葉をなぞる後藤の歌に込められた優しさと強さは、当時の東京を克明に呼び起こしてゆく。生きることが困難な時もあるだろう。だが"オーライ"と口ずさめば、ほんの少し救われる気がする。音楽の持つ力を信じたい――改めて強くそう思った。
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BOOM BOOM SATELLITESから届いた衝撃の新作。徹底したブレのないスタイルから繰り出されるストイックなビートと姿勢はデビュー以来変わっていないが、今作もまた自由でエネルギシュ。誰もまだ到達出来ていない孤高とも言えるその世界感を完成させながら彼らはまた新たな一歩を踏み出している。どの曲も既存のポップ・ミュージックのフォーマットから外れていながらとてもドラマティック。そして彼らの持つダークなムードは維持しつつどこか暖かいフィーリングに包まれている。"聴いてくれた人の想像力と音楽が合体した時に本当の意味で完成する音楽"と語るように今作は私たちに訴えかけてくるような作品だ。
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昨年リリースされたシングル「Back On My Feet」は、最早説明不要の大衆性を獲得した後のBBSと、デビュー当時のエクスペリメンタルな要素が見事に調和した素晴らしい曲だった。そして、満を持しての2枚組究極ベスト盤が登場。これはもう、タイミングばっちりでしょう。選曲はメンバー自らが行い、リミックス&マスタリングも敢行。これまでにリリースした(「Back On My Feet」を除いての)8枚のシングルからは意外にも3曲しかセレクトされていないが、まるで2 枚のオリジナル・アルバムのような選曲の並びになっているので、単なるヒットコレクションとは違う聴き応えのある作品だ。「Well Kick Out The Fading Star」そう、彼らの快進撃は、またここから始まる。
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『Full Of Elevating Presures』『On』『Exposed』は、それぞれ違うアプローチではあるものの、どれも甲乙つけ難いほどの傑作だったことは言うまでもない。そして『Exposed』から約一年半、遂に彼らが始動した。このニュー・シングル『Back On My Feet』は、アニメ『亡国のザムド』のオープニング・テーマに決定している。トランシーながらも、どこか遠くから聴こえてくるかのような音作りで、ドラムの音だけが規則性を保ちながら波のように押し寄せてくる。とてもドラマチックでスケールの大きい曲で、思わず鳥肌が立ってしまった。BBS至上最高傑作といっても過言ではないだろう。また、『All In A Day』はRADIOHEADの『Pyramid Song』を彷彿とさせ、『Spellbound』から『Caught In The Sun』は、ひとつの曲として捉えるならば、14分にも及ぶ大曲だ。
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今年1月にリリースされたミニ・アルバム『FRESH』では様々なゲスト・ミュージシャンを迎え入れ、新しいアプローチをした彼女達。フル・アルバムの今作では、『NUDE』というタイトル通り"ありのままの3人の姿"をはちきれんばかりに詰め込んでいる。菜花知美の切れ味抜群のディストーション・ギターと、攻撃的でいてふくらみを帯びたヴォーカル。それをがっしりと支える、スケール感のある重厚なベースとドラムのリズムが耳を劈く"ガレージ・ディスコ"。メンバー3人の本気が激突する尋常じゃない破壊力は非常にポジティブで、その爽快感に満ちたサウンドに自然と笑みがこぼれる。近年の精力的な海外でのライヴ活動で培ったタフネスの賜物だろう。結成10年目前、培ったスキルとキャリアは伊達じゃない。
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detroit7と様々なアーティストとのコラボレーション・アルバム。TOKYOエレクトロの新世代DJユニットMYSS、DUCK ROCKとのコラボレーションでは、00年代以降のエレクトロをdetroit7印の荒々しいガレージ・サウンドで仕立て上げた、縦ノリ・エレクトロ。元晴(SOIL & PIMP SESSION)のサックスが吹き荒れる「PEANUTS BUTTER BOMB」はノー・ウェーヴのようなパンク。金澤ダイスケ(フジファブリック)とはオルタナティヴ魂全開に疾走し、安部コウセイとは柔らかなバラードを披露する。しかし、新たなスパイスを与えられたdetroit7には全くぶれがなく、オルタナティヴなロック・バンドという根幹がより浮き彫りになっているところが面白い。
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EELSが3部作以来、2年半ぶりの新作をリリース。先行公開されている「Peach Blossom」のようにどでかいドラム&ベースからスウィートなメロディに展開するような鮮烈なナンバーは全体の3割ほどで、他はEならではの内省的で美しいメロディが、ローファイなフィルターを通したグッド・アメリカン・ロックやブルースと融合する、聴くほどに味わい深い楽曲が大半を占める。もちろん、前作『Tomorrow Morning』でも聴けたエレクトロニックなエッセンスもより大胆に導入。今回はE以外のメンバーも曲作りに参加していることも手伝ってか、そうした組み合わせの妙も有機的かつダイナミック。心にしみる哀感と未知の音像がナチュラルに同居するなんてEELS以外、成し得ないだろう。
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昨年アルバムをリリースしたばかりなのに、早速フル・アルバムが到着。前作がガレージ・ブルース・ロックとでも言うべき力強さが前面に出ていた反動なのか、今回は穏やかなアコースティック・ナンバーがほとんど。特徴的なのは、ほとんどがドラムレスで、ギター、ベースとうっすらとのるキーボードという編成での楽曲であること。「Gone Man」ではカホン(ペルー発祥の打楽器( 体鳴楽器) の一種)を使っているが、「Paradaise Blues」までドラムは出てこない。つまり、このアルバムはE の歌が剥き出しになったアルバムである。タイトルが『End Times』と冠された意味はまだ分からないが、しゃがれたEの声はいつも以上に生々しく、そして力強い。いくつもの悲しみをポジティヴな歌に変えてきたEという生身の人間の姿がそこにある。
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BECKとともに、ローファイ・ロックを代表するバンドの一つであるEELS。いつの頃からか、僕はEELSという名前に無条件に反応してしまうようになったのだが、4年ぶりの新作となる本アルバムで、リーダーであるEはとんでもない顎鬚をたくわえたブルース親父になって帰ってきた。ひねくれた味わいを持つローファイ・ロックから、ドリーミーなポップ、そして人間臭いローファイ・ブルースまで、Eの奇才っぷりが全開だ。叫んだり、求愛したり、泣きそうになったりするEの男臭くて切ない声。時に優しく、時に荒々しい音からは、哀愁と孤独が滲み出ている。EELSという不器用な性格のひねくれもの集団がまたも届けてくれた愛すべき音楽。どうやら、EELSという名前に無条件に反応する癖は、まだまだ治りそうもない。
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逞しく成長した姿に、“これはギークからジョックへの痛快な反撃だ!”なんてキャッチ・コピーを捧げたい。あっ、彼らがギークかどうかわからないけどね……。カリフォルニアのヤンチャなインディー・ロッカー、THE SOFT PACKが約2年振りの新作『Strapped』をリリースする。ヘロヘロっとした脱力ヴォーカルにパンキッシュなギター・メロディの疾走感そのままに、グラム・ロックとアメリカーナの中間を突くような新境地はこれまたクセになる。どちらかというとアーシーな方向性だが、アコギやシンセにホーン・セクションを取り入れたネオアコ風味も交え、ワクワクする自由奔放さが最高なんです。ちなみにレコーディング時はDENIMにLee HazlewoodやGrace Jonesをよく聴いていたとか。マジか?!と疑っちゃうけど、このポップ感覚はそういうことね。
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これがデビュー・アルバムなのにこんなに変わるってどういうことだ!?ローファイなガレージ・ロックンロールでEPの時点で注目を集めていたサンディエゴ出身のTHE SOFT PACK。どうやら、大きな思い違いをしていたようだ。初期パンク、ガレージの雰囲気は残しつつも、その音は一気にソリッドでクリアに。とは言っても、変なプロデュース感が出たという意味ではない。本当にやりたいことができる環境が整ったのだろう。THE STROKESがTHE VELVET UNDERGROUNDだとすれば、このバンドはTHE MODERN LOVERS。キレのあるギターと洒脱なアレンジ、楽曲をうねらせる骨のあるベース。サイケもパンクも呑み込んだ、最新型ガレージ・ロックンロール。ギター・ロックにまた希望が灯った。
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既にTHE LAST SHADOW PUPPETS、FRANZ FERDINANDなどのサポート・アクトを務めるなど、話題をかっさらっているTHE SOFT PACKの10曲入りデビューEP。BLACK LIPS、VIVIAN GIRLS、THE DRUMSといったバンドと同じ流れにあるローファイ・ガレージパンクを繰り広げる彼等。初期パンク、パブ・ロックの影響を感じさせるメロディ・ラインに、軋みながら突き進むギターと少し籠もったドラムが心地よい浮遊感を漂わせる。初めて聴いた時は、最近こういうバンドが多いなという程度の感想だったのだが、流行云々なんてものを頭から抜かして聴いた時に、このシンプルなパンク・ソングが持つ中毒性にやられてしまった。刻み付ける為に鳴らされる音に、流行や理屈は関係ない。