『PARAISO』、『WAVES』、『BLUEHARLEM』の"島3部作"を経てヨギーが向かったのは月だった――というのは比喩として、表題曲に溢れるリバービーでどこか幻惑的、メジャー・コードのサイケ感は、たしかに月に向かって車を走らせるようなSFムードに満ちている。東京ニーゼロニーゼロと五輪に向け浮き足立つ東京とは別の自分の東京を生きるのだ、そんな生き様がサウンドにも歌詞にも現れる。この浮遊感、フィッシュマンズ「WALKING IN THE RHYTHM」も彷彿する。シャッフルで少し軽快になるTrack.2、再び超リバービーで響きの中に溺れてしまいそうな、ロマンチックなTrack.3など、自分が美しいと思うものを美しいと言えばいいという角舘健悟(Vo/Gt)のイズム満載。
もはや多言は無用かもしれないが、テン年代シティ・ポップという形容は単なるタグ付けに過ぎなかった。はっぴいえんどや山下達郎、サニーデイ・サービスやフィッシュマンズといった日本の70s、90sからの影響のほかにも、UKのネオアコなどのエッセンスも存分に吸収したヨギーは、現代において奇跡的な存在なのでは。メジャーからの初作となる今回は、相変わらずロマンチック。風のように自然で人間的なエモーションに溢れ、且つ他者に向ける眼差しが頼もしい。ポップ・ソングとして完成度の高い「Bluemin' Days」、愛すべき対象への瑞々しい感情を閉じ込めた「Boyish」。少々無機的でミニマルな音像にバンドが音楽作りを楽しむ様が窺える「Summer of Love (Sinking time ver.)」など、彼らの現在地を示す。