Japanese
yonawo
Skream! マガジン 2023年01月号掲載
2022.12.11 @恵比寿ザ・ガーデンホール
Writer : 稲垣 遥 Photographer:Toyohiro Matsushima
yonawoが3rdアルバム『Yonawo House』を引っ提げて全国を回ってきた"Yonawo House Tour"がファイナルを迎えた。クリスマスが近づきすっかりイルミネーションに彩られた恵比寿の街を通って向かうのがyonawoのライヴだなんて、それすら演出みたいで開演前からドキドキしていたのは筆者だけじゃないだろう。会場に着くと、JIWOOの「Comme Des Garçons」など、yonawoとも親和性の高そうな、温かで洗練されたBGMが流れていた。
幻想的に白く眩いライトに照らされるなかメンバー4人が登場。荒谷翔大のヴォーカルから「tonight」でゆっくりとライヴを始めた。斉藤雄哉(Gt)は丸みのあるエレピを奏で、必要以上の鳴りを抑えた野元喬文の繊細なドラム、ボトムから支え、ムードを作り上げていく田中 慧のベース、そこに荒谷のウォーミーな歌声が重なって特別な"今夜"の幕を開ける。そして続く「苺」からは音源とライヴを別モノとするyonawoのスタンスが表出されてゆく。そう、yonawo=ベッドタイム・サウンドのイメージがある方もいるだろうが、ライヴではひと筋縄ではいかないのが彼らなのだ。この「苺」も音源のムーディなテイストは残しつつも、テンポを上げてカッティング・ギターやうねるベースを効かせ、ガラリと空気を変えてグルーヴィなダンス・チューンのように奏でる。「Lonely」も浮遊感のある前半から後半荒々しいインタールードを差し込むなど、その抜き差しでぐっと惹き込んだまま、シームレスに「26時」へ繋ぐ。キメを効果的に聴かせ、単なるメロウな心地よさだけでない展開の妙で、序盤からyonawoのライヴの醍醐味を味わわせてくれた。
一曲一曲"ありがとうございます"と丁寧に礼を告げる荒谷。ここで"ようこそ、Yonawo Houseへ"と会場へ挨拶すると拍手や指笛の音などが飛ぶ。yonawoはこの公演から声出しOKということで、"久しぶりで新鮮です"と嬉しそうだ。
ギターを弾いていた荒谷がキーボードに移り、斉藤がドラム・セットの横に腰掛けながらギターを紡いだ「yugi」では、リバービーな音像でロマンチックに会場を包み込む。ドラム、ギター、キーボード、ヴォーカル、ベースと順に加わっていくかたちで始めた「good job」。じんわりとグッド・ミュージックを身体に染み渡らせるように、フロアを軽快に気持ち良く揺らし、"Yonawo House、いかがですか?"という荒谷の声に大きな拍手が沸く。
そして"今日は特別に、クリスマスが近づいてきてるんで"と「はっぴいめりいくりすます」を紹介すると歓声が。ステージが緑と赤、温かなオレンジといったクリスマス・カラーにライティングされ、湿ったギターの音が際立つ素朴な音像と、とことん優しい歌声で、yonawoにしか奏でられないクリスマス・ソングをそっと届ける。本当に彼らの住むYonawo Houseに招いてもらったかのような、ほっとする素敵な時間だった。この日の前日、横浜のクリスマス・イベント"ヨコハマミライト CHRISTMAS FESTIVAL"に出演した荒谷の"クリスマス・マーケットいいよね。カップルじゃなくても"という話に、"うん。ソロでも「攻略」できると思うんで"と返す田中の言い回しに少し笑いが起きたり、フロアからの"メリー・クリスマス!"の声に"Oh、メリー・クリスマス!"となぜか外国人風に荒谷が返したり、和やかな雰囲気。さらに「雨宿り」では曲中"野元ちゃん、トランペット・ソロ!"と振られたドラマー、野元が口でトランペット音を再現して沸かせる。そんな楽しいムードからジャジーな「sunset」へ。後半の迫力を増すドラムや歪むギターで、壮大な大地や夕日の美しさを描き、そのまま3拍子のリズムを引き継いで「hanasanai」という流れも美しい。
2022年に福岡から上京してきたyonawo。荒谷が"家族、友達、故郷を思いながら聴いてもらえたら"と言い地元の街への愛を歌った「天神」のあとは、ファンキーなベース&ドラムも挟んだ「After Party」。"keep on trying, trying, trying~"のループの、誘い出すようなグルーヴに思わず身体が横に揺れてしまう。そうして、早いものでショーも大詰めだ。「矜羯羅がる」をワンコーラス披露したあとは、鈴木真海子(chelmico)、Skaaiがステージにサプライズで現れ、2番からは彼らも参加。鈴木真海子の楽曲「Blue」を引用するなどもあり、オーディエンスからも歓声が上がる。その流れのまま、ふたりが参加し現在ヒット中のナンバー「tokyo feat. 鈴木真海子, Skaai」へ。削ぎ落としたバンド・サウンドに鈴木、Skaaiがラップを乗せ、最後はキーボードを弾いていた荒谷も立ち上がって歌う。"働くこと、音楽と向き合うことを考えた1年でした"とライヴ中荒谷は話していたが、福岡のバンドのイメージも強かった彼らが上京し、Yonawo Houseで共同生活を始めて作品を作り上げた、バンドにとって大きな1年。そんな彼らが等身大の目線で"東京"を歌うこの曲は、同じように東京で"働く"人たちを包み込むような包容力があった。
アンコールの拍手に応えて、まず出てきたのは斉藤と野元のふたり。パートを入れ替えて斉藤がドラム・セットにつき、野元がギターを構え、即興で"コロナ禍の口裂け女"について歌い出す。そこへ田中と荒谷が合流しセッションするという不思議な始まりだったが、どうやら各地でこのアドリブ・セッションは行われてきたらしく、"だんだんネタがなくなってきた"と4人は笑い合っていた(ちなみに東京が一番シュールだったらしい)。このオーディエンスを煽るとかと真逆の、自分たちが楽しむ姿勢もyonawoって感じだ。
そして荒谷がフライヤーを手に、来年3月に日比谷野音でデビュー3周年を記念したワンマンをすることを発表。荒谷は本ツアーを12公演回れた礼に加えて、"みなさんが働いた大事なお金を払って、時間を割いてくれることで僕たちは音楽をできていると感謝しています。これからもどうかyonawoを末永くお願いします"と真摯に話す。アーティストとして生きていく彼らの誠実さを受け取ったフロアから拍手が送られた。そうして最後の最後は"誰かを愛することは、人じゃなくて音楽でも、喜びと同時に寂しさもあって、それを抱えながらも愛することをやめたくないなという曲"とアルバムのラスト曲「Yesterday」を奏でた。斉藤と荒谷の柔らかなギターが重なる、哀愁と共にバンドの気高さのようなものも感じた情熱的でエモーショナルな演奏。アンコールのセッション中に荒谷が"終わりたくない"と歌っていたが、リスナー側からしても終わってしまうのが惜しいと思った。そんな、今のバンドのいい空気感を表したような素晴らしいツアーが、大盛況のなか幕を閉じたのだった。
[Setlist]
1. tonight
2. 苺
3. Lonely
4. 26時
5. yugi
6. ijo
7. ダンス
8. good job
9. はっぴいめりいくりすます10. 雨宿り
11. sunset
12. hanasanai
13. 天神
14. After Party
15. 矜羯羅がる
16. tokyo feat. 鈴木真海子, Skaai
En. Yesterday
- 1
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ASP
Skream! 2024年09月号