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LIVE REPORT

Japanese

Awesome City Club

Skream! マガジン 2022年01月号掲載

2021.12.08 @東京ガーデンシアター

Writer 吉羽 さおり Photo by 後藤啓太

8月に中野サンプラザで行った"Awesome Talks - One Man Show 2021 -"以来となるワンマン・ライヴ"Awesome Talks One Man Show 2021 - to end the year -"が12月8日、東京ガーデンシアターで開催された。3rdアルバム『Grower』のリリース、そして映画"花束みたいな恋をした"のインスパイア・ソングとして書き下ろされ、ヒット・チューンとなった「勿忘」で始まったAwesome City Clubの2021年。コロナ禍、緊急事態宣言の発令でライヴの本数は少なかったが、「勿忘」をはじめ、ドラマ・オープニング・テーマ「夏の午後はコバルト」やCM曲など、様々なシーンでその音楽が起用されて新たなファンを増やした。年末の"第72回NHK紅白歌合戦"に初出場が決定したほか、"第63回 輝く!日本レコード大賞"で「勿忘」が優秀作品賞を受賞、ライヴ当日にはLINE NEWSが開催する"NEWS AWARDS 2021"での"2021年 話題の人賞"アーティスト部門で、Awesome City Clubが受賞。初の東京ガーデンシアターは、バンドにとって大きな1年となった2021年を締めくくるに相応しい舞台だ。

ライヴは、11月3日に配信リリースされた新曲「you」で幕を開けた。眩しいバックライトでatagi、PORIN、モリシーと、そしてサポート・メンバー 雲丹亀卓人(Ba)、伊吹文裕(Dr)、横山裕章(Key)、三星章紘(Per)がシルエットで浮かび上がり、男女Voが並走するようにハーモニーを描くミディアムなダンス・ナンバーが、会場に響く。そして"やっと会えたね"というPORINの声で、「夏の午後はコバルト」が軽やかにスタートし、メルティな「color」、「またたき」へと続いていく。前半は、今年春以降に発表された新しい曲が並んだ。メロディアスで、ドラマ性の高いatagiとPORINのヴォーカル、景色を色付けていくようなバンド・アンサンブルと、物語にアクセントをつけるモリシーのギターが冴え、また照明や映像などそれぞれの曲の演出も鮮やか。PORINのブルーのスパンコールのセットアップは、動くたびにキラキラと照明に輝いて、観客がするりとライヴの世界に滑り込んでいくのをいざなっていく。

"今年を締めくくるライヴ、僕たちも楽しみにやってきました"と、atagiの挨拶で突入した中盤は、新旧の曲を織り交ぜて華やかさを増す。「Sing out loud, Bring it on down」では5人の男女混声クワイア、TiA's Choirが加わって、ファットでサイケデリックなアンサンブルをソウルフルに彩っていく。その音に会場がパッと明るくなりハンドクラップが高鳴って、「Fractal」、「アンビバレンス」へとグルーヴィに突き進む。「Cold & Dry」でatagiがジェントルなハイトーン・ヴォーカルを聴かせると、続く「Moonlight」ではPORINがボルドーのロング・ドレス姿へ衣装チェンジして登場。ゆらりと揺れるドレスが「台湾ロマンス」の異国的シティ・ポップと相まって幻想的で、また「タイムスペース」では深みを増すアンサンブルやグルーヴ、ハーモニーでディープな世界へと観客を連れていった。

MCでは、この日前述の"NEWS AWARDS 2021"の授賞式に行ってきた報告がされ、華やかな場からライヴへと戻って、みんなの顔を見られてホッとしたとPORINが語る。そのほか、"レコード大賞(第63回 輝く!日本レコード大賞)"や"紅白(第72回NHK紅白歌合戦)"出演が決まり"やっとみなさんに恩返しができる"と言うと、場内から大きな拍手が湧いた。atagiは、ライヴでは声を出せないなど制限があるが、"せっかくのライヴやから、みんなと一体になりたい"とハンドクラップで盛り上がる「SUNNY GIRL」をプレイ。この曲ではクワイアに加えて、トランペット、サックス、トロンボーンのホーン隊も交えて、ハッピーな幸福感のボリュームを上げた。このアッパーな雰囲気をさらに盛り上げるように登場したのは、PES。コラボ・チューン「湾岸で会いましょう feat. PES」をまさにこの湾岸エリアで歌い、"踊りましょう!"(PES)とパーティーを盛り上げる。続く「but ×××」、「Don't Think, Feel」へと、そのダンスを止めず鼓動を上げていく。

ラストへと向かうMCでは、やっぱりライヴはいいねと笑顔を見せるPORINが、2021年は「勿忘」がいろいろな景色を見せてくれたと言う。モリシーはバンドをしながら、"MORISHIMA COFFEE STAND"店主として店にも立ってきたが、"紅白"出演の発表があった際に隣のブティックの方に"あなた何者なの!?"と驚かれその場でサブスクで曲を聴かせたエピソードを披露。一方で、"このバンドにはいろいろなストーリーがあるけれど、こうした景色を見ることができるのは、自分たちが歩みを止めなかったから"とPORINは振り返る。メンバーの脱退やレーベル移籍などこの約2年は、Awesome City Clubは激動と言える時間を過ごしたが、そのなかでより開放的に2作のアルバムを作り上げ、また「勿忘」は本人たちの想像を超えるスピードでAwesome City Clubの名前を広げていった。歩みを止めないという思いは、「勿忘」以降より強くなっているのかもしれない。冒頭で披露した「you」から、7作連続のシングルの配信が予定され、Awesome City Clubはその音楽の多面性や裾野を広げ続ける。この"Awesome Talks One Man Show 2021 - to end the year -"は、次なるイントロを鳴らすようなライヴだ。終盤、この進み続けるバンドを描いた「Okey dokey」を、観客の晴れやかなハンドクラップとともにプレイし、ラストに据えたのは「勿忘」。エモーショナルに咲き溢れるようなギターがメロウなふたりのヴォーカルを盛り上げ、2021年最後のワンマンを美しく締めくくった。

アンコールでは、2022年3月にニュー・アルバムがリリースされること、4月よりワンマンでのツアーを行うことが発表された。約2年ぶりの全国ツアーになるという。そしてファンの間で"冬と言えば"という曲「青春の胸騒ぎ」と、「雪どけ」の冬の曲2曲を贈り、2時間のショーを結んだ。


[Setlist]
1. you
2. 夏の午後はコバルト
3. color
4. またたき
5. Sing out loud, Bring it on down
6. Fractal
7. アンビバレンス
8. Lesson
9. Cold & Dry
10. Moonlight
11. 台湾ロマンス
12. 燃える星
13. タイムスペース
14. SUNNY GIRL
15. 湾岸で会いましょう feat. PES
16. but ×××
17. Don't Think, Feel
18. Okey dokey
19. 勿忘
En1. 青春の胸騒ぎ
En2. 雪どけ

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