Japanese
Mississippi Khaki Hair / THEティバ / 鋭児
Skream! マガジン 2021年09月号掲載
2021.08.02 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 吉羽 さおり Photo by うつみさな
8月2日に開催された"LIVEHOLIC 6th Anniversary series ~daybreak~"は、鋭児、THEティバ、Mississippi Khaki Hairの3組が登場した。
1番手は鋭児。今年4月に1st EP『銀河』、2nd EP『Fire』を配信リリースしたバンドだが、ライヴは作品からの曲でなく約35分間、ジャム・セッションで行われた。この日のムードで急遽決まったのだという。2020年に活動が開始され、今もオフィシャルのHPはなく、(プロフィールなど)バンドの情報は音源やMV、SNSという限られた手がかりしかない状況で、いったいどういうバンドなのか謎めいている鋭児。でもこのライヴでは、メンバー5人の研ぎ澄ました感性をぶつけ合う純度の高い音楽で、多くを語らずしてその存在感や姿勢というものを感じさせた。互いの呼吸を図りながら、じっくりと空気を揺り動かすようにスタートしたアンサンブル、そこに瞬間的に沸き起こる感情や言葉がラップや語りのように乗る。グルーヴに乗って高揚し、また心地よい余韻から、ビートやフレーズをきっかけに次なるシーンの匂いを音に変える演奏の、淀みなく美しい緊張感もさることながら、つらつらと紡がれる言葉も聴き手の想像力を刺激した。日頃から、視覚的であり思索的な感覚を研ぎ澄ませているところがあるのだろう。長尺の時間でもダレることなく、サウンドを編み上げる手練れなのがわかるし、ジャム・セッションという少々とっつきにくいものも、キャッチーに着地させていて、ゆらりゆらり揺れていた観客は最後には熱っぽい拍手を送っていた。面白いものを観た、そんな興奮がフロアを包んだステージとなった。
続いては、明智マヤ(Vo/Gt)とサチ(Dr)による2ピース・ガールズ・ロック・バンド、THEティバが登場。まずは、今年リリースした2.5th EP『THE PLANET TIVA part.2』から「I want nothing to do any more」をお見舞いする。どっしりとしたビートにひずみがたっぷりと効いたギターが炸裂する、ノイジーなアンサンブルは、おおらかでドリーミーなムードも漂う。向かい合うようにして楽しそうに笑顔を覗かせてプレイするふたりの姿も併せて、キャッチーでフレンドリーなステージだ。「down the river」から、ミディアムなビートでゆったりとした、どこか気だるさの漂うメロディ&ヴォーカルとディストーション・ギターで、ジリジリと熱っぽさを生んでいく「Sunny Side」へと続く。USインディー・ロック、'90sオルタナティヴの空気を吸い込んだシンプルでいて、ポップなねじれを感じるギター・サウンドが心地いい。久しぶりのLIVEHOLIC出演であること、そして"6周年おめでとうございます"と言って折り返した後半は、「Go back our home」、「Summer Ends」そして「Sweet liar」へと、パワフルにコードをかき鳴らして轟音と甘美なメロディの渦を巻き起こしていった。
ラストの登場は昨年1stアルバム『From Nightfall till Dawn』をリリースした、Mississippi Khaki Hair。そのライヴはヒリヒリとゾクゾクの連続で、会場に青白い炎を秘めた音の塊を打ち込んでいく。ポスト・パンク、シューゲイザー、ガレージ・ロックを下地に、切れ味鋭いスマートな構築性を持ったアンサンブルや、どう猛なグルーヴで確実に観客の身体を捉え、そしてアンセミックな(それでいてクールさも際立つ)ヴォーカルが曲の鼓動を上げて、ダイナミックに暴れさせていく。コンパクトなLIVEHOLICのステージから、音を何倍にも増幅させて轟かせるバンドのプレイに痺れる。この日は、「Moonshadow」や「Phone Call」といった1stアルバムの曲も押さえつつ、リリースを控えているEPの曲など、セットリストは新曲が多くを占めた。馴染みある曲の爆裂なパワーも凄まじいが、新曲もまた精度が高くバンドが自身の音楽を磨き上げてきた時間の濃さを感じる。特に、"優しい曲をやって終わります"と紹介してラストにプレイした新曲「Thunderstorm」は、ジェントルでいて力のあるサウンドと繊細な歌とでMississippi Khaki Hairの広がりや、来たる作品への期待が募った。
コロナ禍の現在、ライヴの場が減ってしまったり、また様々な制限もあったりしてコロナ以前のライヴの形とは変わっている現在。特にこれからのライヴ・シーンを担っていくバンドにとっては歯がゆいことばかりかもしれない。そのなかで、この"daybreak"はニュー・カマー3組が、それぞれのやり方の"ライヴ"で魅せた一夜となった。
- 1