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INTERVIEW

Japanese

u named (radica)

 

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Member:令(ハル/Vo/Gt) ヨシダ マサト(Ba)

Interviewer:高橋 美穂

僕らの音楽を聴いてくれる人に"本当はこうだった、こうしたかった"っていうことを思い出してほしい


-また、シネマティックな世界観の中で、「アルビレオ」なら"きっと/僕はここでしか生きられない"とかに、バンドや音楽に対するヨシダさん、radica(u named (radica))のみなさんのリアルな想いもこもっていると感じたんですが。このように、空想の中に現実を混ぜ込んでいくことも考えていらっしゃったりするんでしょうか?

ヨシダ:そこは自分も意識していますね。とっつきやすいようにというか、風景やファンタジーの中に、誰しもが日常的に発する言葉とか、そういうリアルを混ぜ込むっていうのは大事にしていますね。

-「アンファ」もそうで。大人になることへの葛藤が、ギュッと詰まった歌で畳み掛けるように飛び込んできますよね。

ヨシダ:「アンファ」は、先ほど話したようなファンタジーとリアリティの世界観だと、リアリティのほうを詰め込んでいるイメージですね。あまり自分のことを曲にすることってないんですけど、これはちょっと哲学的というか、ある種押しつけがましい価値観というか、自分が思っている不平不満、ネガティヴな要素を言葉にして詰め込んだ感覚はあります。

-特に"大人になんてならなくてよかった/こどもでいい、こどもがいい"は、大人になってしまった今、歌じゃなきゃ吐き出せない、心の中に秘めた想いのように感じました。

ヨシダ:なんというか、すごい自分に子供っぽい感覚があって(笑)。

令:(笑)

ヨシダ:ずっと子供のままでいたいし。でも、時が経って、社会に出て、いろんな人と会うなかで、どうしても子供のままじゃいられない瞬間のほうが増えていく。誰しもがそうだと思うんですけど、そこに対して、ほぼ妄執に近いですね。執念深く、少年性、少女性にこだわっている感覚はあって。創作することに関して、そこはフィルターかけなくていいんじゃないかって思っているので、「アンファ」はそこが色濃く出ましたね。

-少年性というキーワードは、令さんの声質にもマッチしていると思うんです。ヨシダさんの創作を引き出しているのは令さんの声質でもあるんでしょうか?

ヨシダ:あー......そこはどっちかっていうと偶然かも。僕の創作には最初から少年性、少女性っていうものがあって。ただ、そのテーマ自体は変わっていないんですけど、令の歌声を聴くことによって形がちょっとずつ変わっていったかもしれないですね。

令:前身バンドのときから、何かを失ってから気づくというよりは、僕らが生活の中でそれを忘れてしまっているだけで、その忘れてしまったものを思い起こしてもらえるようにっていう想いが、僕の楽曲にもヨシダが作る楽曲にもこもっていて。そこが共通しているので、少年性や少女性など、ノスタルジックな共鳴性があるのかなって思いますね。

-令さんが作詞作曲した楽曲についてもいろいろうかがっていきたいんですが、3曲目「羸劣」、恥ずかしながら読めませんでした(笑)。"るいれつ"なんですよね。

ヨシダ:読めないですよね(笑)。

令:"羸劣"は宗教とかで使われるような言葉ではあるんですけど。そこもニアな部分というか、僕らが何かを上から説くわけではないんですけど、僕が思うことを込めたっていう。ヨシダの楽曲には、自分がこれまで感じていたことや見てきた風景というインスピレーションがあって、そこにリアリティを感じるんですが、僕の楽曲に関しては、思ったことをそのまま表現しているというか。「羸劣」は明るい曲調ではないんですけど、最終的には誰かから何かされたトラウマや苦しみも、結局どう捉えるかは自分次第なので、自分の捉え方ひとつで、今もそうだし、未来にも進んで行けるっていう気持ちが込められています。

-同じ"ことのは"でも、"言の葉"、"言の刃"というふたつの表現が出てきて。これは、聴くだけではわからない、目で見なければわからない歌詞の醍醐味ですよね。

令:そうですね。今って、お互いが直接会わなくても、物理的に傷つけ合わなくても、SNSとかインターネット上で誹謗中傷ができちゃうので。なので、"言の葉"が"刃"になることもあるっていう意味で置き換えています。

-次の「残夏」もポップな曲調ではあるんですが、100パーセント明るいわけではない。そこがradicaらしさなのかなって思いながら聴いていました。

令:僕らなりのポップさは込めているんですけど、ただ、夏って楽しい思い出があるだけではなく、どこかしら憂いを帯びていると感じているので。そこが"また僕の夏が終わる"というところとかから、自分が果たせなかったこと、忘れちゃっていることを、少しでも思い出してもらえるようなストーリー性を持った曲になっていると思います。

-5曲目の「アザレア」はヨシダさんの作詞作曲ですが、野暮な質問でしたら恐縮ですが、今作でヨシダさんが作詞作曲された楽曲はすべて"ア"から始まるカタカナのタイトルなんですよね。

ヨシダ:そうですね(笑)。

令:たしかに(笑)。

-これはたまたまなのか、あえてなのか。深読みかもしれませんが、新たな1歩となる作品だから"ア"から始まるタイトルにこだわったのかな、とも思ったんですが。

令:それ、今度から我が物顔で言っちゃうやつだよね(笑)。

ヨシダ:頂戴したいですね(笑)。いや、まったく意識はしていなかったです。

-そうなんですね(笑)。

ヨシダ:たまたまです。なんでだ(笑)!?

-じゃあ、なんで「アザレア」は"アザレア"になったんですか?

ヨシダ:バラードを書く、というテーマが自分の中にあって。結果的に、平たく言うと失恋の歌になっているんですけど、これはさっきの話で言うとリアリティ寄りというか。こういったリアリティのあるラヴ・ソングをこれまであまり書いてこなかったので、新しい挑戦でした。"アザレア"は"恋の喜び"っていう花言葉があって、そこからインスピレーションを膨らませたんです。

-アレンジも構成もドラマチックですよね。

ヨシダ:具体的な話をすると、最後のセクションが決まっていなくって。最後のセクションを大サビとすると、そこまでのサビやAメロ、間奏は決まっていて、大サビがなくても悪いものではなかったんですけど、しっくりこなかったんですね。物足りないというか、普通というか。やっぱradicaっぽさがほしい、聴いていて面白い要素が欠けていると思ったので、大サビを書き切るまでは悩みました。

-そのあと「サイ」が来て、さらにドラマチックに作品が終わっていくっていう。令さん作詞作曲ですが、この楽曲はどのようにできあがっていったんでしょうか?

令:前身バンドのときは、どちらかというとギター・ロックというか、ギターが目立つような楽曲がスタンダードだったんですけど、そこから壮大な楽曲を作りたいと思ったときに、なるべくギターを歪ませないで、且つぐっと盛り上がるような雰囲気にしたかったんです。ギター・ロックの表現をしないでどうやって盛り上がる楽曲を作れるか、っていうのが少し考えなきゃいけないところでした。ピアノとかストリングスを入れながらも、ベースやドラムはバンド・サウンドを表現しきった楽曲ですね。

-ピアノとかストリングスを入れると、そっちに食われてJ-POPになるパターンもあると思うんです。だけど「サイ」はバンドのものになっていますよね。

令:そうですね。「サイ」は、バンドらしさにどうアプローチするかっていうところで、僕はラウド系のアーティストも聴くので、ギターのチューニングを1音半下げていて。それによってベースも同じチューニングにしているので、バンド・サウンドで、且つ今までの僕らのギター・ロックからひとつ抜け出た楽曲になったと思います。

-歌詞も良くて。"有限はくれてやるから"という一節は、すごくインパクトがありました。

令:ありがとうございます。僕らのコンセプトは、失くしたとかじゃなく、もともとわかっていたものを年を重ねて忘れていってしまう。それに対して、僕らに出会ってくれた人たちへの、僕らなりの発信、メッセージというか、必ずしもみんながみんな前を向いて明るく生きていられるわけでもないし、何かに縋りたい、救われたいとか、そういう想いって少なからずあると思うので。僕らの音楽性がその気持ちに添えられるように、という想いを「サイ」には込めています。自分が窮地だったら、なりふり構わずとにかくそこから抜け出したいっていう想いは......僕らが高校生の頃に震災があって、そこから後悔をしたくないと。明日が見えないことも恐怖なんですけど、音楽を始めてから、自分たちがやりたいことをやらないで人生が終わってしまうことも恐怖だと感じて。今回u named (radica)でCDを出すときにも、そういう想いを込めたりしています。僕らの音楽を聴いてくれる人にも、"本当はこうだった、こうしたかった"っていうことを思い出してほしいっていうのがありつつ、「サイ」には、誰かの苦悩に僕らなりに寄り添えるような表現を込めていますね。

-今回新たな1歩を踏み出して、見えてきているバンドの目標や展望ってありますか?

令:ここからは夢物語ではなく、僕らの音楽を僕ら自身でも広げていって。地元でワンマンをソールドさせて、キャパが大きいところでもライヴができるように。そうしたら東名阪でワンマン回って、全国でワンマン回って、ホールでもできるようにとか、どんどん僕らが作った曲を僕ら自身で発信して、多くの人に観てもらえるように進んでいきたいと思うのと、今回の『Distance to you』はひとつのジャンルには括れない作品になっていますけど、今まで聴いてくれている人の期待にも応えられるように、それを越えられるような曲をここからさらに作り続けていきたいです。

-ヨシダさんはいかがですか?

ヨシダ:"COUNTDOWN JAPAN"に出たいです。

-めちゃめちゃ具体的(笑)。"ROCK IN JAPAN(FESTIVAL)"じゃないんですね。

ヨシダ:とにかくデカいところで、たくさんの人に観てほしくって。自分の思い入れがあるフェスが"COUNTDOWN JAPAN"なんです。もちろん"ROCK IN JAPAN"でもいいんですけど。

令:上からだなぁ(笑)。

ヨシダ:お声掛けいただけるならどこでもいいんですけど(笑)。

令:すべてのフェス、イベント、お待ちしています(笑)。

-"COUNTDOWN JAPAN"は屋内で冬なので、音楽性的にはマッチしていますよね。

ヨシダ:そうですね。だいたいヘッドホンやスピーカー、ライヴハウスっていう閉鎖的な空間で僕らの音楽を聴くことが多いと思うんですけど、やっぱり広い環境だと、楽曲のスケール感が伝わると思うので。ぜひ爆音で、広いところでやらせていただける機会があれば、楽曲の輝きが増すのではないかと。それを自分たちでも聴いてみたいし、聴いていただきたいです。

-あぁ、「アルビレオ」や「アンファ」は夜空のもとで聴きたいですね!

ヨシダ:やってみたいです、本当に。