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INTERVIEW

Japanese

5kai

2023年06月号掲載

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Member:松村 了一(Gt) 太田(Ba) 若松(Dr)

Interviewer:山口 哲生

5kaiのアルバム『行』が、凄まじくいい。ポストロックやエモ、スロウコア/サッドコアなどを混ぜ合わせたその音楽は、ストイックでダウナーでソリッドで、それでいてとても美しく、心の隙間にすっと入り込み、奥底まで深く染み渡っていくものになっている。また、6月10日にはtricotとのツーマン・ライヴ"ツーマンショー秘蜜"にも出演するなど、バンドマンや感度の高い音楽愛好家から、熱い視線を注がれている存在だ。初インタビューとなる今回は、約4年ぶりのリリースとなった最新作『行』のことや、バンドのバイオグラフィなど、独自の世界を作り上げていく彼らの素顔に迫った。


なんか申し訳ない気持ちにはなりますね。蓋を開けたらもうね、全然気楽にやってますよ


-2017年に京都で結成されたそうですね。

松村:そうですね。たしかそのぐらいです。

太田:うん。だと思います(笑)。

-(笑)当時のメンバーは、松村さんと太田さんのおふたりだったんですよね。

松村:そうです。もともと同じ大学の軽音楽部で、前身のバンドを一緒にやっていたんですけど、そこをやめていったんふたりでやるかっていう感じになって。で、ドラムをやってもらっている若松さんは同じ大学の先輩なんですけど、最初はサポート・メンバーに入ってもらって、3ピースで活動してました。

-こんな音楽をやろうというイメージは、結成時から結構はっきりとあったんですか?

太田:やっていくうちに今の音楽性になってきたという感じだったので、最初はなかったですね。こんなバンドが好きで、ああいう感じにしようっていうのが明確にあったわけじゃなくて。

松村:だし、今も明確に"これだ!"って感じもないというか。ちょっとわかってないんですよ(笑)。

-自分たちとしても(笑)。音源を聴かせていただいて、めちゃくちゃストイックというか。かなりミニマルな感じもあって、3人でどこまでやれるか挑戦しているイメージもあったんですが。

松村:結成当初に、京都METROっていうクラブでバイトしてたんですけど、そこで永遠に働いていたんですよ。そうなると、毎日音楽を聴くわけじゃないですか。もちろんDJさんのイベントが多いんですけど、それをずっと聴いていると、バンドを聴きたくなるんですよ(笑)。でも、自分が今まで通ってこなかったクラブ・カルチャーみたいなものをがっつり経験したときに、DJだったらこういうビートでみんなノるのに、なんでバンドだとみんなシーンとして観ているんだろうって、結構疑問に思って。それをどうにかバンドに昇華したい感覚はあったんですけど、今それができているとも別に思ってないですし。でも、その経験があったから、展開とかいらないんじゃない? とかそういう話にもしかしたら繋がってきているのかもしれないですね。

-なるほど。曲はいつもどう作ってるんですか? セッション的に合わせることが多いですか?

松村:最近はそれが多いのかな。

若松:今回のアルバム(『行』)はDTM発信が多かったんじゃない?

太田:松村がネタをざっくり作って来て、バンドでちょっと揉んで......っていうのが多かったような。

-セッションで作ったものと、DTMで発展させていったものと半々ぐらいですか?

松村:でもまぁ、DTMと言ってもワンフレーズをずっとループさせている感じなので、最初の状態から明確にこんな曲ですっていう感じでもないんですよ。それに、僕が打ち込んだドラムのフレーズを、結局手動で起こしてもらっているから、あんまりDTMでやってる感覚もなくて(笑)。

-最終的には人力になる。

松村:そうです。それを譜面に起こして、若松さんとか、もうひとりのサポート・ドラムの人にやってもらうっていう感じなので。

-セッションで作っていく場合は、松村さんが持ってきたものを肉付けしていく感じですか?

松村:僕が持って行ったフレーズに対して、"こういう感じの雰囲気で"とか、セッションしていくなかで方向性みたいなものはちょっと言いますけど、それ以外はお任せな感じですね。方向性が違っていたら"なんか違うな"って言いますけど、そうじゃなかったら"それで良くね?"ぐらいの感じで。だから、みなさん"ストイック"と形容してくださるんですけど、わりと適当というか......(笑)。

若松:そうだね。ざっくりしたルールが決まっているっていう感じですかね。1小節にバスドラを何個までみたいな。

-そうやって作っていくうちに、ポストロック的な感じに自然となっていったと。

松村:僕、ポストロックを全然聴いてこなかったんですよ。そうやって形容していただいてから聴いたぐらいの感じだったので、そういう評価をいただくのが不思議な感じでしたね、個人的には。

-"自分が作っているものってポストロックっていうのか......"みたいな?

松村:みんないろんなジャンルが好きだと思うんですけど、自分が好きなものをアウトプットするとポストロックなんだ、みたいな感じでしたね。そうなんだ......わっかんねぇなぁ......って(笑)。

-ジャンルって難しいですよね。太田さんとしては、5kaiで曲を作っていくなかで考えていることはあったりします?

太田:僕としては、こういう音楽が好きだから、こんなものを出したいと思いながらベースを弾くってことがまったくなくて。その時々でなんとなく合いそうだから弾くっていうのが一番近いですね。

-"こういうニュアンスかなぁ"みたいな。

太田:ですね。なので、特に芯が通っている何かがあるわけではないんですけど、昔自分が弾いたフレーズで良かったものは覚えておいて、あんな雰囲気で弾けるといいのかなっていうぐらいしか考えていないです。自分が好きな音楽はまったく反映されていない感じがします(笑)。

-かなり個性的なベースではありますよね。ルートを弾く感じではなく、和音やハイ・ポジションのフレーズが多くて、結構独特だなと思ったんですけど。

太田:僕としては、自分が弾いているフレーズみたいなのを弾いてるベーシストは全然好きじゃなくて(笑)。

-ははははは(笑)。そうなんですね。

太田:本当はもっとおとなしいベースを弾いているベーシストが好みなんですよ。でも、5kaiの音楽に合うのがそういうベースだから、それを弾いている感じですね。

-ああいうプレイをする人って、まったくいないわけではないけど、かなり少ないですよね。

若松:ドラムを演奏するときは、ベースだと思って合わせてないですね。リード・ギターぐらいの感じでやっているので。いつも変なベースだなと思いながら聴いてます(笑)。

松村:セッションしているときにルートとかを弾いてると、"なんか違うな"みたいな雰囲気になって、その積み重ねでこうなった感じですかね(笑)。そこは使っている機材とかもあると思うんですけど、"僕は高い音のほうがアンサンブルとして成り立っている感じがするので、そっちのほうがいいんじゃない?"って話もしつつ、最近は普通のフレーズみたいなものもどうにかしてやれたら、また幅が広がるかなと考えてはいます。別に無理に広げる必要もないけど、広げておいたほうが楽しいかな、みたいなことは思っていますね。

-そこは限定せずにいたいというか。

松村:そうですね。そうすると一番つまらない感じになっていくので。

-あと、ツイン・ドラム体制のときもありますよね?

若松:最近は常にですね。

-いつ頃からそうなったんです?

松村:4年前ぐらいです。2019年の冬ぐらいに、やってみようかという話になって。ツインにしようと思った理由は、"音楽的な広がりが"とか、そういうことじゃないんです。もともとサポートは若松さんと、またもうひとり別の方にお願いしていたんですけど、僕らが関西にいたので、関西のときは関西のとき、東京のときは東京のときで、それぞれにお願いしていて。でも、僕らも東京に出てきたし、"このライヴはこの人"っていう選択が無駄な感情というか(笑)、嫌だったんですよ。"ふたりともいいドラマーなんだから、一緒にやったらいいんじゃない?"っていう、それだけです(笑)。そんなに深い理由はなかったよね?

太田:うん。ふたりいるし、やってもらいましょうっていうだけで。

-若松さんとしても、"ツイン・ドラムで"と言われて"あ、わかりましたー"ぐらいの感じだったんですか?

若松:あんまりそのときのことを覚えてないんですけど、たぶんそれぐらいの感じだったと思います。特に衝撃を受けた感じではなかったですね。

太田:衝撃じゃなかったんだ(笑)。

松村:今もそうなんですけど、3人の曲もやるし、4人の曲もやるみたいな。それぐらいの感覚だったんじゃないのかなって。

-フレキシブルというか。

松村:そうですね。ライヴ中に休憩があるんで。

若松:3人だけでやる曲はひとり何もしないとか。それが2、3曲続くこともあるんで、じゃあここはちょっと捌けとくね、みたいな(笑)。それぐらいの感じなので、そのへんはすごくラフにやってますね。

-5kaiの音楽が持っているストイックなイメージとは違って、ラフな部分がかなり多いんですね。

松村:逆にラフな部分しかないですね。修行僧みたいな感じでやっているわけではなくて、面白いからやってみようっていう。そういう感じでずっとやってきてる感覚です。そこに対してはストイックなのかもしれないですね。

-面白くするためにはどうすればいいのか考えることに対しては、ストイック。

松村:そうです。楽曲に対してのストイックさはあまりないですよ。リズムがどうだみたいなことも、そこまで厳格にあるわけじゃないし。54-71とか、そういうバンドほど......その1,000分の1ぐらいの厳格さです(笑)。

-はははは(笑)。54-71の名前が出てくることが多いんですね。

松村:それはもう。でも、その評価をいただくときに、マジでその1,000分の1なんだよなぁ......って(笑)。クリックに合わせて練習とかもしてないし。そう言ってくださった方に、なんか申し訳ない気持ちにはなりますね。蓋を開けたらもうね、全然気楽にやってますよ。

-むしろストイックなイメージがついて困るところもあったりします?

松村:そのへんはライヴでどうにかしたいなと思ってますね。できるだけ取り繕わないというか。例えば、1時間あったとしたらその間中もうずっとバチバチな感じではなくて、なるべく素の状態、僕らが普段練習しているときの感じに近い雰囲気を作るようにはしようかなと、個人的には思っていて。ライヴに来て"あぁ、こういうバンドなんだ"って思ってもらえたらいいなと考えているので、ライヴに来てほしいですね。音源だけ聴いちゃうとちょっと奇天烈な部分もたくさんあるけど、"あ、意外とそんな感じなんだ"みたいな。

若松:僕らとしても、ラフな感じを出せているほうが、自分たち的にいいライヴだったなってなることが多い気がしているので。そこで......ラフさを自然に表現するっていうのも矛盾してますけど(笑)。

-たしかに(笑)。

松村:まぁ、いつでも自然体でやれるようにっていう。

若松:うん。そういうところができれば、もっとより伝わっていくのかなって思ってはいます。