Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

INTERVIEW

Japanese

BimBamBoom

2023年03月号掲載

いいね!

Member:岡 愛子(Gt) Maryne(Ba)

Interviewer:石角 友香

パンクやオルタナのマインドを感じる、オリジナルなファンク・ミュージックを鳴らす女性インストゥルメンタル・バンド、BimBamBoom。2021年からxiangyuやUCARY & THE VALENTINE、ラッパーの椿らとのコラボ楽曲をリリースしてきたことも記憶に新しいなか、それらのバンド・リミックス版や新曲で構成された4thアルバム『PILI PILI』を1月にリリース。フェスでは国籍を問わず様々なオーディエンスを巻き込み、中国ツアーも体験した"音楽そのものでもの言う"バンドだ。今回は、ギターでMVの監督も務める岡 愛子と、メイン・ソングライターのひとりであるベースのMaryneに、アルバムに至るプロセスなどを訊いた。

-アルバムのお話の前に、6曲連続でフィーチャリング楽曲の配信EPも出されてきて、その楽曲がインストでアルバムに収録されていて。そもそもフィーチャリングをやってみようっていうのはどこから始まったんですか?

Maryne:始めたきっかけはコロナ禍で、だいたいどのミュージシャンも基本手探りでいろいろやってたと思うんですけど、その前からメンバー間でカバーとか、いろいろ動画を上げるということを行ったんです。でもそれ以外のこともどんどんやっていきたいっていうことで、新曲の話が出てきて。で、誰かとコラボをしたいということはコロナ前からずっと話に上がってて、"じゃあ今やるか"って形ですね。ライヴができないので制作に向かって、これを機に女性アーティストを招いてっていう企画が上がった。なので、きっかけはコロナですね。

-たしかにどのバンドも、ライヴができないぶん制作に向かうっていう傾向が強かったと思います。ところで女性ばかりっていうコンセプトがあったんですか?

Maryne:正直、女性じゃないとということはなかったですけど、最初に出た案で女性に絞ったね?

岡:いつの間にか女性になってましたよね。うちのリーダーと当時のマネージャーと話し合って、女性コラボできますということになってて、"はーい"って感じでした(笑)。

Maryne:うん。女性に絞らなくてもいいんじゃない? って意見も出たんですけど、まずはコラボの初めてのものとして女性縛りでした。

-最初(2021年2月リリースの『そぼろ弁当』)はxiangyu(読み:シャンユー)さんでした。その時点で面白いです。

Maryne:そうですね。前から付き合いがあって、対バンしてて、真っ先に思いついたのが彼女で。みんな"いいね"ってなったのも彼女だったので、オファーしたら受けてくれました。

-パワフルな人が多いですよね。それは選んだ人が自然とそうなった感じですか?

Maryne:BimBamBoomはヴォーカルがいないじゃないですか。歌で引っ張る人がいるわけじゃないので、歌を自分でやられてるアーティストさんって、やっぱり楽器とは違うエネルギーとか、制作力とかがあるなぁってこれを通してすごく感じました。みなさんがそのフィールドで本気でやられてるからだと思います。でも他のどんな人とやってもそう感じたとは思いますね。

-特に椿さんとかめちゃくちゃパワフルな人じゃないですか。MCバトルでみんな知ってるっていう感じで。

Maryne:そうですね。個人的な意見になるかもしれないけど、椿さんが特にこのコラボですごいっていうか、相乗効果といいますか、彼女の人間性とアーティスト性は本当に尊敬できると思いました。

-女性のエンパワーメントみたいなことではなかった?

Maryne:このコラボがですか?

-目的というかテーマみたいなのは。今、岡さんが沈んでいった感じがする(笑)。"そういうことじゃないねん"みたいな。

岡:いや、なんでしょうね。個人的には女性が女性がって言いたくないタイプなんで、でも結果的にはそうなってるから今そこらへんがちょっとすみません......(笑)。

Maryne:6人終わったあと、"来年も続ける?"って話になって"男性はどうですか"みたいな意見も出たんで、女性でやって売ってやろうぜとか、そういうのではなかった。

岡:いや、結果そうなっちゃってますよね。正直もう女性アーティストって限定してるのなんでかな? ってずっと思ってたんですよ。途中で鎮座DOPENESSとかと一緒にやりたかったから案として出したんですけど、ダメだったんです。だからそういうふうにお感じになるのも無理はない感じになってるんですよ。

-なるほど。でも決して悪いことではないと思います。椿さんやRei©hiさんみたいなタイプの人もいるし、UCARY(UCARY & THE VALENTINE)さんのヴォーカルもあるし。そもそもヴォーカル・ナンバーを作るっていう感じじゃなかったんですか?

Maryne:そうですね。もともとあった曲にヴォーカルをつけたのが大半なんで。

-じゃあ乗ってきた人がすごい?

Maryne:そうなんですよ。

-みなさん自分の個性やスタイルを乗せてきたんですね。実際にこのコラボレーションをやってみて、バンドなりプレイヤーとして還元されたものってありますか?

Maryne:BimBamBoomはそもそもワンコーラス、ワンワードしか声を発さないみたいな感じなんですけど、それすらメロディとかワードを考えるのがすごく難しかったんですよ。それにヴォーカリストとラッパーのみなさんはあれよあれよと、言葉をすごく詰めててメロディもつけてっていう。やっぱそこの衝撃は一番大きかったし、楽しかったですね。

-岡さんはどうですか? 実際に一緒にやったことで発見はありましたか? 岡さんはそのあとMVも撮影されてるし。

岡:あれ、オケを先に録音しとったよね? 結構スケジュール的にギリギリで根詰めてやったので、レコーディングに関しては演奏家としての発見は正直あまりなかったんですけど、もちろんそのあとから吹き込まれたヴォーカルの歌い方や歌詞に関して、感銘を受けることはありました。個人的に演奏家としては一緒にライヴしたときにすごい面白いなと思いましたね。インストって、インストなりの音のバランスがあるんですけど、ヴォーカルが入ることで、例えばドラムを抑えるだったり、私も"そこは歌を聴かせたいだろう"ってところは抑えたり、音色を変えたり、そういう違いが明確で面白かったです。

-ヴォーカル曲であることによって音作りの面でもレンジがすごく広がったのかなと思ってたんで意外なんですが、例えば「そぼろ弁当」はビートが新しいじゃないですか。

岡:「そぼろ弁当」だけメンバーじゃなかったです(笑)。

-そうでしたね(笑)。Gqom(ゴム/※南アフリカで生まれた新ジャンルのアフロ・ダンス・ミュージック)っていうジャンルだったので。

Maryne:xiangyuちゃん、もともとGqomを取り入れたことをやってて、シャンちゃん(xiangyu)と対バンしたり、ツーマンでシャンちゃんの曲をBimBamBoomが演奏したりとかしてたので、BimBamBoomでもGqomっぽい曲を作るっていう課題がちょっとあったんです。

岡:「そぼろ弁当」だけ後乗せよね。

Maryne:うん。「そぼろ弁当」だけ曲はシャンちゃんありきで作った。

-面白い。じゃあこの曲は歌が乗るように作ってたんですね。

Maryne:xiangyuちゃんとUCARYちゃんはあれとして、Rei©hiさんとか他の方は何曲か投げて選んでもらったよね。

-そういう感じだったんですね。で、今回この『PILI PILI』はインストなわけじゃないですか。入ってるのはみなさんのコーラスなんで、このオリジナル・アルバムとしてまとめるときにもう1回録り直したとかじゃないんですよね。

Maryne:そうですね。リミックスはしてますが、リアレンジはしてないですね。

-面白い手法ですね。BimBamBoomにとってどういう立ち位置のアルバムですか?

Maryne:私は初めてメンバー5人だけで成り立ったアルバムという気がしまして、なので、やっと卵が生まれた、ポンって感じです。

-自ら生んだと。Maryneさんは1曲目の「THE WOMAN」を書かれてますけど、"THE"がついてることの意味みたいなのってありますか?

Maryne:そうですね。そこ、嬉しいご質問で。"あなたです"っていうのが私の中ですごくあって。コロナにしろ自然災害にしろ人種差別にしろ戦争にしろ、本当にいろんなことが起きすぎてるこの数年の世界でいろんなことがあるけど、個人、"個"っていうのがこの3年ぐらいですごくキーワードになってる気がするんですよ。自分も思ったし、人が自分をもっと大事にしていくことが未来にとって大事だと感じて、それをできる世界でなきゃいけないしとか考えると、"あなたは何も間違ってない。間違ったとしてもまたもっと前に進んでいける。あなたがこの世の中にとって大事だ"っていうのがあって、"THE"ってつけたんです。

-聴いてる人に自分ごとにしてほしい?

Maryne:まぁこの曲を聴いて自分を想えとかってわけじゃないんですけど(笑)。

-でもたしかにそうですよね。"WOMAN"って言われたら、いわゆる異性が見る女性みたいな感じも若干ありますし。

Maryne:あと"WOMAN"にすると女性博愛主義っぽいっていうか、フェミニズムみたいな意味に捉えられる誤解を避けたくて。

-あなたに言ってるみたいな感じはたしかにあるかもしれないですね。しかも曲調もなかなか強いじゃないですか。岡さんはギタリストとしてはどんな解釈がありましたか?

岡:デモの時点でもうほぼ完成されてて、やりたいことはそのデモの段階で結構来たんで、それを私のフィルターを通してより増幅できればいいなと思って演奏しました。

-これ単純に私の印象ですけど、RAGE AGAINST THE MACHINEみたいなギターだなと。

岡:あぁ! レイジ(RAGE AGAINST THE MACHINE)大好きです。レイジなんですね、自分の中でわかりませんでした(笑)。

-かと思えば「BEER DE GO」では渋いギターを弾くという。

岡:渋いですか(笑)?

-渋いと思います。パワフルなだけじゃなくてジャンルとしてすごく広いし。

岡:それはこのバンドのおかげです。

-岡さんが自分なりに面白かったなって曲はありますか?

岡:「そぼろ弁当」のギター・ソロはちょっと祭りっぽいんですけど、"ウケる~"って思ってます(笑)。そのソロをライヴでもだいたいそのまま弾いてるんですけど、"ウケる、このソロ"って思いながらやってますね(笑)。

-「そぼろ弁当」はソロ回しがめちゃくちゃ盛り上がりそうですよね。

岡:そうですね。ドラムとサックスのセクションふたりだけのセクションとか、演奏しても一緒にいても"おー"と思います。