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INTERVIEW

Japanese

FUNKIST

2022年05月号掲載

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Member:染谷 西郷(Vo) 宮田 泰治(Gt) ヨシロウ(Gt)

Interviewer:秦 理絵

持ち時間は60分ずつ。アンコールはなし。主催者のアドヴァンテージすら使わず、盟友たちとガチンコの勝負をすることをコンセプトに掲げた、FUNKISTの全国対バン・ツアー"FUNKIST presents 【60minutes tour 2022~Reload~】"が、5月8日に八王子Match Voxからスタートする。出演はフラチナリズム、BUZZ THE BEARS、IRabBits、NUBO、EGG BRAIN、Metis、GRAND COLOR STONE、ケミカル⇄リアクション、セックスマシーン!!、二人目のジャイアン、三浦隆一(空想委員会)の全11組で、バンドはもちろんシンガー・ソングライターやダンス&ヴォーカル・ユニットまで、FUNKISTの歴史を語るうえでハズせない面々が名を連ねた。2020年に予定されていたツアーのリロードというかたちで実現するものだ。以下のインタビューでは、バンドマンの矜持をかけて今ツアーにのぞむFUNKISTの3人に、ライヴへの意気込みをはじめコロナ以降のバンド活動、会場で発売される最新作『Bright』についてもたっぷり語ってもらった。

-今回のツアーは、2020年に20周年のときにやりたかったツアーなんですよね。

染谷:そうですね。いよいよ20周年イヤーが始まるっていうところで組んだツアーでした。"60minutes tour"というツアー・タイトルを掲げて、60分ずつの持ち時間で"どっちがヤバい60分を作るんだ?"ってツアーをやろうと。そのファイナルをバンドの結成日にあたる5月31日に(恵比寿)LIQUIDROOMで企画してたんですけど。1回目の緊急事態宣言にぶつかって全部中止にしたんです。そこから2年を経て、やっとガイドラインができてきたなかで、もう1回やるかっていうことですね。

-ヨシロウさん、宮田さんは今回のツアー開催に向けて、どんな想いがありますか?

ヨシロウ:どんなことがあっても、最後にライヴだけは残ると思ってたんですよ。それなのに、"あ、ライヴもできないんだ"ってなって。3人でずっと試行錯誤していたので、もっと場所を増やしていきたいぐらいです。

染谷:47都道府県とかね。

ヨシロウ:それぐらい行きたいよね。

染谷:FUNKISTを結成したころって着うた®が流行りはじめたときだったんですよ。オリコンで1位になればCDが100万枚を超える時代。ただ、そこから徐々に配信に移行して、今後はCDセールスで食っていくのは難しくなるだろうなっていうのはなんとなく感じてて。どうすれば音楽で生きていけるんだ? って考えたときにライヴだったんです。いつの時代もライヴが強いやつは死なない。もちろん俺たちはライヴが好きっていうのもあったけど。そういう意味で、ヨシロウが言ったように、そのライヴが消えるっていうのは予想もしてなかったし、自分たちの軸足を奪われたような感覚だったんですよね。

宮田:"何があっても、とりあえずライヴハウスに来てくれさえすれば、俺らがなんとかするから、会いに来てくれ!"ってやってたのに。メンバーとも会えなくなっちゃって。

染谷:Zoomなんてものを使ってね。"元気?"ってやるみたいな(笑)。

-今は笑い話みたいに話してくれてますけど、当時は相当キツかったでしょう?

ヨシロウ:いつまでこれが続くんだろう? って思ってましたからね。

宮田:SNSとかを見ても、仲間のライヴがどんどん中止、延期になるし。もうちょっと経つと、解散、閉店。そういうニュースばっかりになって。

染谷:それこそ笑い話ですけど、コロナ禍にクラウドファンディングをやって立て直しを図るバンドもいたじゃないですか。俺らはクラウドファンディングっていうものが浸透してないときからやってたんですよ。15年ぐらい前かな。実際にそれでバンド車を買わせてもらって。で、コロナに入る前に新しいバンド車を"NEW FUNKIST号"としてフルラッピングしたいっていうクラウドファンディングをやったんです。みんなが協力してくれて、かっこいい車ができて、さぁツアーに行くぞっていうときにコロナに入ったので。ただ使わないラッピングカーを作っただけの人みたいになったんです(笑)。

ヨシロウ:趣味のね(笑)。

染谷:ほとんど所ジョージなんです。

一同:あはははは!

染谷:またクラウドファンディングをやるっていうわけにもいかないじゃないですか。みんなに力を借りたばっかだし。タイミングは最悪でしたけど、それも今では笑い話です。

-今回のツアーでやっとその車を使えるわけですね。

ヨシロウ:やっとですね。

染谷:去年初めてケミカル⇄リアクションっていうダンス&ヴォーカル・ユニットと全国15ヶ所をまわった有観客ツアー("ケミカルリアクション×FUNKIST presents【HOME & AWAY】")があったので。そこから動き出してはいたんですけどね。その頃はライヴ写真を撮っても公開できなかったんですよ。それをアップすることで、ライヴハウスがルールを守ってないように見えるんじゃないかなって悩んでたので。

-そういうバンドは多かったですよね。

染谷:そう、でもライヴハウスって最初にクラスターが起きたぶん、すごく徹底してる場所だと俺は思ってて。だとしたら、今はガイドラインもあるわけだし、胸を張って写真も出そうぜって、そのツアーの途中から公開するようになったんです。"ライヴハウス大丈夫なの?"って言われても"いや、みんなちゃんとやってくれてるぜ"って言えたほうが、ライヴハウスっていう自分たちを育ててくれた場所に何かを還元できるなと思って。

ヨシロウ:自分たちの中でも、どうやってコロナ禍と戦って、ライヴハウスっていう場所で生きていくかが明確になってきたんですよね。それがあったから、今回のツアーを自分たち冠でやるっていうところに踏み切れたのはある気がします。

-じゃあ、去年ケミカル⇄リアクションと一緒にやれたのはかなり大きい出来事だった。

染谷:大きかったですね。僕らは2021年の下半期にツアーをするつもりじゃなかったし。ケミカリ(ケミカル⇄リアクション)がライヴハウスを30ヶ所ぐらい押さえてて。"どこか1ヶ所でもいいから一緒にやりませんか?"って投げてくれたんです。そのスケジュールを見たときに半分は行ったことがなくて、半分は俺らがホームにしてるハコだったんですね。"だったら「HOME & AWAY」っていう名前で、ケミカリのホームと俺らのホームで戦うみたいなことでやれたら面白いんじゃない?"って返したら、"それをやりたい"って言ってくれて。あのタイミングでツアーができたのはめちゃくちゃ感謝ですね。

ヨシロウ:これは余談になるんですけど、ケミカリはダンス&ヴォーカル・ユニットなので踊りとかあるじゃないですか。だったら、コラボするしかない! ってなって、ギターふたりでガチで踊ろうって、ずーっとダンスの練習してたんですよ。

染谷:百何十時間も練習してたよね(笑)。

ヨシロウ:振付動画送ってもらってね。それを1日目のアンコールでやることになってたんですけど。時短営業だからって......。

染谷:アンコールはカット(笑)! 踊る気満々で楽屋で練習してたのに!

-(笑)今回のツアーにもケミカリは出ますし、ダンスのリベンジもできるんですか?

ヨシロウ:いや、それは初日だけで、そのあとのツアーではやれたんですよ。ケミカリはバンドもやるので、ケミカリがトリの日はFUNKISTの曲もカバーしてもらって。

染谷:楽しんでもらうためならなんでもやるって感じだったよね。

-FUNKISTってバンドの歴史を振り返ると、本当にいろいろなことがあったじゃないですか。メンバー・チェンジも多かったですし、亡くなってしまったメンバーもいる。東日本大震災も乗り越えてきたけれど、それでもコロナ禍というのは、今までに経験したことないような出来事でしたか?

染谷:自分が南アフリカと日本のハーフなんですけど、南アフリカって今も貧富の差が大きいですし、生活に困窮してるエリアもあるんですね。そこに何回もツアーで行っていて、スラムでストリート・ライヴをやるんですよ。そうすると、ボロボロのギターを持った男の子たちが来て、"一緒にやろうぜ"って言ってきて、(Bob Marleyの)「No Woman, No Cry」をコラボしたりする。そこに街の人たちも集まってくるんです。

-素敵な光景ですね。

染谷:うん。どうしても震災があるとか窮地に陥ったときって、音楽とか芸能はあと回しになるじゃないですか。それはそうだなと思う。人命のほうが大事だし、食えることが大事だし。でも、かたや南アフリカは人種間の紛争も多いし、普通に生きるのも難しいっていうなかで、音楽だけが灯みたいに人を照らしてるのもいっぱい見てきたから。震災だろうと、音楽にしかできないことがやっぱりあるっていうのはあんまりブレなかった。

-そこはFUNKISTの強みでしょうね。

染谷:ただ、コロナだけはめちゃくちゃ悩みました。僕らが海外のスラムでライヴすることに対して、危険だっていう声もあるんですね。それに関しては、僕らは自己責任でライヴをするし、もしファンの人がそれを観たいと思って自己責任で来たとしても、それは個々の人生の話だと思ってるんです。だけど、コロナに関しては、その自己責任でライヴハウスに来た人が感染した場合、責任を負う必要のないおじいちゃん、おばあちゃんが亡くなったりする。だから強行はできないなと思ってましたね。特に宮田はそこを守らないんだったら、FUNKISTじゃないっていう意思が固くて。

宮田:FUNKISTってお客さんのことをファミリーって呼んでて、家族みたいに思い合ってるんです。みんな優しいから、きっと僕らがやるって言ったら、受け入れてくれると思うんですよ。その家族を守るっていう話なのかなって。何が正解なのかがわからないから、この場合はあと出しジャンケンでもいいから、様子を見たいって言いましたね。

-なるほど。FUNKISTは2020年に自主レーベル、株式会社LION SHOUTを設立するという動きもありました。これはコロナ禍前から準備をしていたことだったんですよね。

染谷:そうですね。ライヴが強くなきゃいけないってなると、事務所運営に関しても、自分たちでハンドリングできたほうが絶対にいいっていうのはあって。2008年にメジャー・デビューをしてるんですけど、実は事務所経営に関してはずっと自分たちでやってたんです。とはいえ、登記してなかったので、20周年のタイミングで会社化しましょうっていうことだったんです。それは節目としてすごく良かった気がします。

ヨシロウ:"こんな時期に"とか言われたけどね(笑)。

染谷:それもね、一昨年の5月31日にリキッド(LIQUIDROOM)のファイナルで、"明日自主レーベルが立ち上がることになりました"、"ワーッ!"てなるのを思い浮かべてたんですけど、全部飛んだので。ただ6月1日に法務局に行っただけっていう感じでしたね(笑)。