Japanese
私立恵比寿中学
これからの明るい未来を引っ張っていく、先陣を切っていけるアイドルでいたい
-さて、その他の曲が完全新曲ということになりますが、曲によっては絶賛レコーディングのようですね(※取材は2月上旬)。本作もバラエティ豊かで豪華な作家陣が参加していますけど、「ハッピーエンドとそれから」、「さよなら秘密基地」のように、大人が過去を振り返るような曲は、メジャー・デビューしたころのエビ中では歌えなかったのではないかと思います。
真山:2曲ともすごく好きで、染みました。「ハッピーエンドとそれから」と「さよなら秘密基地」の2曲だけは、過去に想いを馳せるというか、このアルバムの中で過去を歌っている楽曲になっているのかな。「ハッピーエンドとそれから」に関しては、私の年齢にドンピシャで、20歳以上だったら経験する、かつての誰か、かつての場所を想うような曲です。街って変化していて、自分自身もエビ中として活動していくなかで、レッスン場が変わったりとか、"あのレッスン場は使えなくなったなぁ"とか思ったりしながら恵比寿を歩いていて。いろんなことに思いを馳せられる年齢になったのもあって、すごく響きました。
-はい。
真山:だから「ハッピーエンドとそれから」を、この9人で歌おうと思ってくれた大人たちと、歌わせたいと思ってくれた石原(慎也/Saucy Dog/Vo/Gt)さんにはすごく感謝していて。私が歌う「ハッピーエンドとそれから」と、和香が歌う「ハッピーエンドとそれから」は、全然違うニュアンスだし、全然違う曲になっていると思うんですけど、それがこのエビ中としての良さで、ファンのみなさんにはそこを"これぞエビ中だな"と味わってほしいです。素晴らしい歌詞とかメロディとか、楽曲としての魅力ももちろんあるので、みなさんもそれぞれの"ふたり"の懐かしい記憶を思い浮かべてもらえたらと思いますね。
中山:アルバムのレコーディングを1、2曲くらいしているときに、お話し会があって、そのときにファミリーから"次のアルバムはどんな感じになってるの?"と聞かれたんです。『MUSiC』(2019年3月リリースの5thフル・アルバム)とか『playlist』はアーティスト寄りの感じだったけど、"今回は、ちょっと前のエビ中に戻った感じ"と話していて。この楽曲で、それまで6人でやってきたものを忘れずに、今の9人のエビ中でできていることが本当に嬉しかったですね。
-けんたあろはさん提供の「さよなら秘密基地」も過去を歌う楽曲で、こちらはノスタルジックで懐かしい気持ちになりつつも、メロディの動きは速くて激しくて、懐かしさと新しさが混ざり合った楽曲です。ストリングスと管楽器も入っているので、サウンドはとてもゴージャスで。
安本:メロディが無機質というか機械的な動きで、でも歌詞には離れ離れになってしまった幼馴染との話が入っていたりして、感情が込められているんです。歌声としては無機質でも面白いのかもって、どっちをどのぐらい取ろうか一番悩みました。エビ中は、魂というか、シンプルな考え方で歌う、とにかく気持ちを入れて盛り上げるとかそういうのはすごく得意だけど、計算し尽して歌っていくのは今までにない挑戦でしたね。今後もさらなる挑戦をしていきたいなと思いました。
-こういうボカロっぽいメロディの曲だと、エビ中では過去に「脳漿炸裂ガール」をカバー(2015年リリースのアルバム『夏だぜジョニー コンプリートパック』収録曲)していましたよね。
真山:あー! 懐かしいね!
柏木:私が出演した映画"脳漿炸裂ガール"でカバーさせていただきました。この曲で、ちょっと思い出しましたね。
-あの曲もボカロ曲らしい難しいメロディでしたけど、このアルバムでも「さよなら秘密基地」が歌唱の技術面で一番難しかったんじゃないですか?
星名:そうですね。リズムも難しいですし、音程の上下も難しくて。なんかメリーゴーランドに乗っている気分になるんです。世界感がすごくあって、プロローグとかエピローグとか、本の世界に入っているようなところもすごく斬新だなと思います。
柏木:歌詞を見ながら1冊の本として聴いてもらうのもいいと思います。
-過去を歌うノスタルジックな曲がある一方で、今の10~20代女性の気持ちを歌ったのが例えば「トキメキ的週末論」あたりかなと。
小林:実はレコーディングの時期に、お母さんと"トキメキ"についてしゃべったことがあって。
一同:(笑)
真山:めちゃくちゃ気になる、その話(笑)。
小林:"女は何歳になっても、いつまでもトキメキを忘れちゃいけないよ"という話をお母さんがしていたんですよ。トキメキって大事なんだと思わせてくれたというか。そりゃあ"くれー!"って巻き舌にもなるよなって(笑)。女で生きていく、強い女みたいな解釈をしたんです。お母さんは"トキメキは一番の美容液"と言っていました。
一同:(※拍手)
小林:それを感じてもらいたいという、個人的な想いがあります(笑)。曲の説明にはならなかったですね(笑)。児玉(雨子)さんの面白いワードが好きなので、ライヴで歌うのが楽しみです。
-児玉さんの歌詞とエビ中は、相性がいいと思うんですよね。言葉の使い方、心情の切り取り方が10~20代女性らしいというか、こういうふうに思っているんだろうなと感じます。
真山:嬉しいですね。同じアルバムで2曲同じ方に作詞していただくのって珍しいよね? 一昨年の「オメカシ・フィーバー」(『playlist』収録曲)で初めて書いていただいたんですけど、"エビ中と言えば前山田健一さん"、"エビ中と言えばたむらぱんさん"みたいな感じで、新しく"エビ中といえば児玉雨子さん"みたいな繋がりができたのもすごく嬉しいです。
-ダンス・トラック寄りの「きゅるん」では、元チャットモンチーの高橋久美子さんが作詞しています。
桜木:この曲がアルバムの中で一番好きです。大人の恋愛とか全然わからないし、歌詞の意味も難しかったんですけど、レコーディングしているときは"好き"という気持ちで歌いました。ライヴではどうやって自分のパートを表現しようとか、ダンスがどうなるんだろうとか、すごく楽しみです。
-これもライヴで盛り上がりそうですよね。
真山:K-POP的な楽曲ってあんまりなかったので、すごく新しい。私たちとしても挑戦的な楽曲でしたね。
-その他の曲もどんな多様性があるのか楽しみです。まだレコーディング前の曲もあるそうなので、アルバムの全容が見えていない部分もあるかとは思いますが、なぜこのタイミングの、このアルバムがセルフ・タイトル"私立恵比寿中学"になったんですか?
真山:原点回帰という意味を含んでいて、"エビ中とはなんぞや"というか、私立恵比寿中学=多様な楽曲というのが一番にあると思います。これは個人的な意見なんですけど、エビ中は6人のままでも続いていたと思うんですね、そこをあえて1回ぶち壊して9人になった今の状況と、この楽曲たちがリンクしていると自分的には感じていて。エビ中って"無"というか"概念"というか、今回はジャケットと衣装が白いんですけど、何色にも染めることができるし、染めてもらうこともできると思っているんです。『私立恵比寿中学』をみなさんにお届けしたときに、どれがどう響いてもいいじゃんということも含めての多様性なので、私立恵比寿中学を愛してくださったみなさまに送るアルバムでもあるし、まだ知らないみなさまが、私立恵比寿中学を愛するためのアルバムになったと感じています。まだ完成はしていないですが、自信作になったと思うので、みなさんに手に取ってもらって、"エビ中いいね"って何かで思っていただけたら一番嬉しいです。
-10年前の自分が、"これが10年後に出る私立恵比寿中学のアルバムだよ"とCDを渡されたら、どうリアクションすると思いますか?
真山:"嘘だー!"って言うと思います(笑)。
星名:"こんなに歌えないよ!"って(笑)。
真山:歌を歌えるグループと言われるのはすごく嬉しいんですけど、歌える子がいてもいいと思うし、たどたどしい子がいてもいいと思うんです。それがエビ中だなって最近改めて気づいたというか、このアルバムを通してもう一度気づかされた部分が大きくて。子供のときはよくわからないままやっていたことも、今は意味を持って、自分たちで考えてできていることは嬉しいですね。
-アルバムのリリース後には、春ツアーも控えていますね。
風見:"大学芸会"ではいろんな方に褒めてもらえたんですけど、春ツアーは"大学芸会"を超えられるものにしたくて。春ツアーの中でも"最初から最高だったけど、最後は最初の最高を超えたよね"って、最高をどんどん更新していけるように頑張っていきたいです。
-今回はメジャー・デビュー10周年ですが、エビ中はそこからさらに10年、20年先を目指していくグループですよね。
安本:すごく大きいことを言うかもしれないけど、私はこれからの明るい未来を引っ張っていく、先陣を切っていけるアイドルでいたいんです。エビ中を観るとこの先がすごくワクワクするとか、エビ中を観ている瞬間はどんな不安なことがあっても明日が楽しみになると思ってもらえるグループでいたい。そういうことを、このアルバムとライヴ・ツアーを通して、9人で伝えていけたらいいなと思います。
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