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INTERVIEW

Japanese

AYUKA

2022年04月号掲載

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-最新アルバム『SeaSon』(2021年12月リリース)に収録されている「サナトリウム」はそうですよね。歌い出しのメロディ・ラインは低めなんだけど、サビで突き抜けていくっていう。

鈴木:僕、「サナトリウム」は好きなんですよ。この曲はAYUKAの声を生かした曲を作りたいっていうディスカッションして、最初に書いた曲だったんです。このアルバムに通底している死生観に深く触れるような歌でもあるので、僕の中では、AYUKAの出したいところを出せたなと思ってます。

-AYUKAさんはご自分の歌声に関してはどう捉えていますか?

AYUKA:歌唱力がズバ抜けてるわけじゃないのは自覚してるんです。そんななかで、自分が優ってるところは何? って考えたときに、低音が出るところっていうのは、昔からずっと思ってましたね。ただ、応援してくれる方は女の子らしい高音が好きって言ってくれることもあるので、迷ってはいて。『SeaSon』っていうアルバムを、完全に啓さんプロデュースで作るぞっていう話が出たときに、低い声を生かすことにしたんです。

-その歌声を支えるバンド・サウンドがオルタナティヴで尖っているのも、AYUKAさんの楽曲の特徴ですよね。いわゆるシンガー・ソングライターっぽい正統派な感じではない。

AYUKA:そういうのが好みなんですよね。

鈴木:声のキャラクター的に、いわゆるシンガー・ソングライターっぽいポップス、きれいで華やかな音像よりも、尖ったものの上に歌が乗っかってるほうがいいかなって思ってますね。AYUKAによく言うんですけど、the brilliant greenみたいなイメージがいいなって。そういうUKインディーみたいな音に声が乗っかってるほうが映える。わざわざ普通に寄せていくよりは、そっちのほうがかっこいいんじゃないかなと思ってるんです。

-鈴木さんはAYUKAさんの良き理解者なんですね。おふたりで作り上げた最近アルバム『SeaSon』は、どんな作品になったと思いましたか?

AYUKA:歌詞を貰ったときに、なんで私が考えてることがわかるんだ!? って思いました(笑)。自分で書いたのか? って思うぐらいなんですよ。私のキャラクター的にあんまり明るいタイプではなくて、ネガティヴなところがあるというか、ハッピーなものじゃないほうがいいなって......なんて言うのかな。

-物事の終わりとか、生きる意味を深く追求するような内省的なテーマが良かった?

AYUKA:あ、そうです。そういう曲を歌いたいなって。

鈴木:最初にどういうアルバムにしたいかっていうときに、AYUKAと結構密に話したんですよ。それで、あ、俺と感覚が近いんだろうなっていうのを感じたんですよね。だから曲を作るうえで、もちろんAYUKAが歌って違和感がないように多少は考えるんですけど、ほとんど自分の歌を書くような姿勢で進めていってて。それでも違和感がないだろうなっていうぐらい根っこの部分で近いものがありましたね。

-根っこの近い部分というのを具体的に言うと?

鈴木:そもそも暗いっていうのもあるし、物事を深く考えてしまうこととか、そこから抜け出せなくなるような部分とかですかね。でも、結局、出口には希望を持っていたいんです。背中をガンガン押してくれるっていうよりは、ちゃんとそういう人たちの側に寄り添えるような存在なんだろうなって。絶望をしちゃうときもあるけど、その先を見られるような人でもあるんですよ。それがあるから、きっと音楽をやってるんだろうし。そういうところが似てるなって思いましたね。

-AYUKAさんにとって、特に"これは自分そのものだな"と思う曲はありますか?

AYUKA:「うたうたいの少女」とか「My Reason」、「花筏」ですかね。1曲を選ぶのは難しいんですけど......特に「うたうたいの少女」は、前日、練習してるときに泣いちゃったんです。歌詞を噛み砕いて理解しようと思うと、泣いてしまうんですよ。

-それはなんの涙ですか? テーマが歌を歌う人そのものだから、自分の気持ちを代弁してくれてるようで嬉しかったのか。

AYUKA:それがわからないんです。さらーって涙が出てくる。だから集中して歌うのが難しいんですよね。ちょっと困った曲でした(笑)。

-鈴木さんは、どういう意図でこれを作ったんですか?

鈴木:この曲は、いつか自分が歌いたいなと思ってたテーマだったんですよね。窓辺で外を見ながら、曲を書いてる子みたいなイメージがあって。途中まで書いてやめてたんです。で、アルバムを作るっていう話をしたときに、たぶんAYUKAが歌ったほうがハマるだろうと思って、一気に最後まで書き進めていきました。

-ちなみにアルバムのタイトル"SeaSon"にはどんな想いが込められているんですか?

鈴木:Seasonは季節っていう意味ですけど、その語源をたどると、種まきっていうのがあって。このアルバムという種をいろいろなところにまいていって、芽が出て、いろいろなところに広がっていけばいいなってところでしたね。だよね?

AYUKA:はい。時間がかかっても、いろいろなところで芽が出たらいいなと思うので。たくさんの人に聴いてもらいたい曲たちだなと考えてます。

-ちょっと駆け足で、去年の12月にリリースした最新アルバム『SeaSon』の話をさせてもらったんですけど、それ以外にもYouTubeにたくさん楽曲を公開していますね。

AYUKA:そうですね。去年から12ヶ月連続リリースを(YouTubeで)やっていて、その途中でアルバムを出しましたからね。ファンの方もびっくりしてました(笑)。コロナ禍で活動が思うようにできないですけど、私はしっかり活動をしていきたいなと思ってるんです。せっかく東京に出てきたし、やれることを頑張りたいなって。

-YouTubeで公開している楽曲のほうは、イラストレーターさんを起用した歌い手っぽい見せ方をしていますけど、あえてネット・カルチャーを意識しているんですか?

AYUKA:そういうところもありますね。いろいろなところに手をつけすぎているように見えるかもしれないんですけど、どこで注目してもらえるか、チャンスがあるかはわからないので。YouTubeでは歌い手さんっぽい曲の雰囲気にもしてもらってるんです。

-「臨終、故に」(2021年12月YouTubeに公開)みたいな、言葉数を詰め込んだ疾走感のあるロックは、まさにネット・カルチャーとの親和性が高そうな曲です。

AYUKA:聴いている人にも好みがあると思うんですよ。すごくロック系の曲が好きな人もいれば、「境界線」(2021年7月YouTubeに公開)とか「Re:life」(2021年10月リリースの1stミニ・アルバム『ERASE+1』収録)みたいなポップな曲が好きな人もいるし。そういう人たちにどれか1曲でも引っ掛かってもらえるといいなと思うし、応援してくれてる人たちに、"次、どんなのが来るんだろう"ってワクワクしてもらいたいんですよね。

-今後ライヴが増えていったときに、ライヴハウス・シーンにも、ネット・カルチャーにも波及していけることは、AYUKAさんの強みになっていきそうですね。

鈴木:AYUKAが普通のアーティストと違うのは、社会人を経験してアーティストになってるところなんですよ。実は戦略家なんですよね。

AYUKA:そうかもしれない(笑)。

鈴木:それは、たしかに強みなのかなと思ってます。オーディションや、コンテストに向かっていく際のファンとのやりとりの仕方とかもちゃんと考えてますからね。配信をメインでやってるアーティストってリスナーとの距離感が近いんですよ。それのいいところ、悪いところがあると思うんですけど、それを自分なりに使って......って言うと、言い方が悪いかもしれないですけど。ちゃんとわかって活動ができてるんです。

-では、最後に今後の目標を聞かせてください。プロフィールには"植田真梨恵さんとの共演"と書いていて。本当に大好きなんですね。

AYUKA:はい(笑)。先日ライヴも観に行ったんです。キリスト品川教会でライヴをしていて。生で観ると、雲の上の人だなって1回ズドーンって落とされますね(笑)。こういう大会で1位がとれたぞ、植田真梨恵ちゃんに近づけたんじゃない? って言ってもらえて、自分でもそうかな? って思ってたけど、本人を観たら、すみませんでした......って。

-(笑)自分が伸びることでわかる実力者の本当のすごさってありますよね。

AYUKA:そうなんです。ライヴの見方は変わってきましたね。ただのファン目線じゃなくて、ステージの上での動きとかを勉強させてもらってます。

-じゃあ植田真梨恵さんと共演する以外で、こんな活動をしていきたい、こんなアーティストになりたいという展望はありますか?

AYUKA:自分の音楽を好きになったきっかけはライヴハウスとかフェスなので、ライヴハウスでいっぱいライヴをやるアーティストでありたいです。いつかは自分がよく行ってたようなフェスに出られるようになりたいですね。それと同時に、自分の活動が広まるきっかけになったのはネットなので、そこも大事にしていきたいと思っています。自分は現場の良さをお客さんとして知ってるから、コロナ禍が落ち着いてきたら、今ネットで私を見てくれてる人たちみんなを現場に引っ張り出したいです。