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INTERVIEW

Japanese

Half time Old

2021年11月号掲載

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Member:鬼頭 大晴(Vo/Gt) 小鹿 雄一朗(Gt) 内田 匡俊(Ba) 阪西 暢(Dr)

Interviewer:秦 理絵

Half time Oldの音楽が、日々を懸命に生きようとする人たちの心に刺さるのは、ヴォーカル 鬼頭大晴が、誰よりもまず自分自身に向かって歌を届けているからだ。メジャー進出を果たし、ユニバーサル ミュージックからの第1弾フィジカル作品となる、通算6枚目のミニ・アルバム『ステレオアーモンド』でも、そんなバンドの本質は変わっていない。"au三太郎シリーズ"のCMソング「みんな自由だ」、"カンロ ボイスケアのど飴"のタイアップ・ソング「エール」といった話題曲を含む今作は、そんな彼らの"歌"の魅力と、ライヴ・バンドとして培ってきた骨太なバンド・サウンドが、これまで以上に際立つ1枚になった。結成から10周年。今だからこその"希望"を詰め込んだ最新作について、メンバー4人に話を訊いた。

-今年の春に開催した"半分古"ツアー("Spring Tour 2021「半分古」")の東京公演、良かったです。

阪西:ありがとうございます。今回、初めてリリースが絡まないツアーだったんですよね。リリースがあるツアーだと、最新の音源をメインにセットリストを組もうとか考えていたんですけど。どの曲をやってもいい。持ち曲からセットリストをフラットに考えられるので、久しぶりの曲もやれて。東名阪だけだったんですけど、シンプルに楽しかったです。

-コロナ禍になって、過去のアルバムにフォーカスをあてた、コンセプチュアルな配信ライヴもやってたじゃないですか。その経験も繋がっているなと思いました。

阪西:たしかに。その総集編みたいな印象はあったかもしれない。

小鹿:配信ライヴを経て、久しぶりに自分らのツアーをまわったんですよ。最初はかなり試行錯誤してて。何がいいのか悪いのか、わからなかった。でも、東京で最終的にいいかたちになったかなと思いましたね。

内田:メンバー内でも、"何が正解だろう?"っていう話をしてたんです。中には厳しい意見を言ってくれる人もいて。回を重ねるごとに、これが正解なんじゃないかっていうかたちが見えてきたんですよね。ようやく6月のVeats(Veats Shibuya)で、このご時世にフィットしたライヴの兆しが見えたんじゃないかなと思いましたね。

-「マッシュルームソング」(2019年リリースのミニ・アルバム『宅配便で現実を送りつけて』収録曲)とか「エール」で、フロアのお客さんを半分にわけてレスポンスをする遊び心は面白かったです。制限があるからこそ編み出されたことですよね。

内田:あぁ、あれはあのときに初めてやったんですよ。

鬼頭:思った以上にうまくいきましたね(笑)。

-あれはわかりやすい変化だったと思いますけど。それ以外でこういう状況だからこそ辿り着いた正解っていうのを言葉にできますか?

内田:僕個人のことかもしれないんですけど、今までは聴いてくれるみなさんの反応ありきでライヴをやってた節があったんです。でも、"もうちょっと自発的に頑張ったほうがいいんじゃないか"っていう話を、小鹿さんがしてくれて。たしかにそうだなと。毎回の録画を観て、反省して。それが生かされたのがあの日でしたね。

-小鹿さんはどんなアドバイスをしたんですか?

小鹿:細かいことですけど、"お客さんと目を合わせる"とか。そういう機会が減ってしまったからこそ、お客さんがどういう顔で聴いてくれてるかをちゃんと見ることが大事なんじゃないかなって思ったんです。ま、マスクで見えないかもしれないですけど。どう楽しんでくれてるのか。できるだけお客さんを見る心掛けはしてましたね。

鬼頭:ツアーをまわっていく段階では、ステージだけで完結するライヴとかも考えたんです。そうなると僕らの良さがなくなっちゃうなと思って。この状況でもお客さんとコミュニケーションをとるにはどうすればいいかを、常に考えたツアーだったかなと感じます。

-MCでは、鬼頭さんができるだけ前向きな言葉を選んでいたように感じたんですね。"この状況もポジティヴに受け止めたい"とか。それは意識していたんですか?

鬼頭:あ、それはありますね。僕自身がポジティヴであろうと考えてたので。今ってライヴを観に行くと、みんなコロナについて話すと思うんです。でも正直、もういいなって感じたというか。それを聞きたいわけではない。こういうご時世でライヴに遊びに来る人たちの覚悟みたいなものを、もっと汲み取ってあげなきゃいけないなと思ってて。とにかく楽しいときは楽しんだほうがいいっていうのはコンセプトに置いてましたね。

-もともと鬼頭さんは、できるだけネガティヴなことをポジティヴに変えたいって考えるタイプだと思うんだけど、より外向きにそれを発信するようになった気がします。

鬼頭:あぁ、そうかもしれない。嫌なこととか苦しいことって、状況が変わらなくても、結局、自分が見る方向を変えることで変わったりするんですよね。なるべくいい方向で見ようっていうのは普段から意識するようにしてます。

-そういうバンドのモードが如実に作品に表れているのが、今作『ステレオアーモンド』だなと思います。まず自分たちではどんな作品になったと感じますか?

鬼頭:今回はもともと音源だけで完結するようなアルバムにしようっていう話をして、作り始めたんです。ライヴがなかなかできないので。でも、できあがってみて、いざライヴに向けてスタジオで練習してみると、たぶんライヴに映えるだろうな、みたいな曲がたくさん入ったアルバムになってたことにあとから気づいたんですよ。

-特に「アセスメント」とか「SHALALA」とかは、ライヴでやらなくてどうするの? っていう曲ですもんね。

内田:そうなんです(笑)。

小鹿:そういう曲もあるんですけど、今回はより大晴の歌と歌詞が響きやすいものにしたかったんです。今までと比べて歌が強く入ってくるんじゃないかと思いますね。

阪西:メロディと歌詞が生きるようにっていうのは、今までもそうだったんですけど。より楽器隊がシンプル且つインパクトがあるようなアレンジっていうか。いらないものが淘汰されて、必要な部分はちゃんと伸ばせたと思うんです。

-"ここは歌を聴かせたい"、"ここは演奏を聴かせたい"っていうところのアレンジにメリハリがついたんだと思います。

内田:そこらへんは、わりと制作段階からしっかり作り込んだんです。だいぶ細かなやりとりがあって。例えば、メロに合わせたキメを入れるとか。ライヴを見据えてるつもりはなかったけど、どっかで見据えてたんでしょうね。コーラスもすごくライヴ映えするようなかたちに落ち着いたので。あ、やっぱりライヴしたいなってなりました。

-新しい曲の中では、「なにもの」が良かったです。ストリングスが効いたアレンジでじわじわと熱量が高まって、メロディと歌詞がしっかり沁みる曲で。

鬼頭:デモの時点からストリングスを入れたいなとか、サビは壮大にしたいなって考えてた曲ですね。最初は弾き語りだったんですけど。作っていく過程でループみたいなビートになって。面白味がある感じのサウンドになっていきました。

小鹿:最初は何パターンかアイディアがあったんです。王道のロック・バラードみたいなものにもできるし、どういう方向にもいけるよねって。

内田:最終的に、ビート感のあるグルーヴに、大晴さんのカントリーな感じのメロディがあって、そこにストリングスが交ざるっていう不思議な組み合わせが、うまく調和していったなと思います。しかも、今回ストリングスをバンドとして初めて生で入れさせてもらった箇所がいくつかあるんですよ。アレンジャーのYuzuru Kusugoさんのお知り合いの、斎藤ネコさんがヴァイオリンを弾いてくださって。

-え、すごいじゃないですか。椎名林檎さんの楽曲に参加している方ですね。

鬼頭:たまたま用事があった帰りに寄っていただいたみたいで。

内田:"いい曲じゃん"って言ってくださって。恐れ多いですよね(笑)。

-この曲、不思議な機械音が鳴ってますけど、これは何か意図があるんですか?

鬼頭:僕の中では時計の音を認識してて。時間が経過してる表現ができたと思ってます。

-歌詞は、ちょっと情けない自分の日常を振り返りながら、自分は何者かを自問自答するような内容ですね。

鬼頭:こういうことを考えることが多かったですね。だいたい、実体験です。やっぱりコロナ禍っていうのが大きかったのかなと思います。ライヴはできないけど、家にいて、曲だけは作り続けてる。自分がバンドマンをやれてるか? って聞かれたときにちょっと曖昧な部分があったというか。そういうところですかね。