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INTERVIEW

Japanese

FIVE NEW OLD

 

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Member:HIROSHI(Vo/Gt) WATARU(Gt/Key/Cho) SHUN(Ba/Cho) HAYATO(Dr/Cho)

Interviewer:山口 智男

FIVE NEW OLD(以下:FiNO)が極めてユニークな存在であることを、改めて印象づける2ndアルバム『Emulsification』が完成した。自分たちの表現が様々な矛盾を孕んでいることを認め、それを"Emulsification=乳化"という新たなコンセプトとして打ち出したのは、その矛盾こそがFiNO最大の魅力だと今一度自覚したうえで、それならその魅力をとことん追求していこうと今回メンバーたちが考えたからだ。その思惑通り新作では、様々な"乳化"が試みられ、大きな聴きどころになっている。止まらずに、ここから進んでいくぞという新たな決意とともにFiNOが実現させた"乳化"について、メンバー4人に語ってもらった。

-"Emulsification"という1回聞いただけでは覚えられないタイトルを付けたところに、自信が感じられるのですが、反対意見は出なかったんですか?

HIROSHI:まったく出なかったです。直訳すると、"乳化"なんですけど、ペペロンチーノを作るときに起きているやつなんです。だから、作用としては誰でも馴染みがあるものなんですよ。もともとアルバムを作るにあたって、今までの自分たちの集大成になるようなものにしたくて。それで、もう一度自分たちを振り返ってみようってなったとき、最初に出てきたのが"FiNOっていろいろ相反するものを掛け合わせているよね。でも、それって矛盾じゃない?"ってところから始まったんですけど、僕らがこれまでやってきたことを表現するにはぴったりの言葉だし、これからもそういうことをやっていくぞって意思表示にもなるしってところから、"Emulsification"ってタイトルを考えてから制作に入ったんですよ。

-"Emul......"あれ、難しいな(笑)。みなさん、噛まずに言えます?

HAYATO:言えないですよ。いや、ウソですウソです。ちゃんと言えますよ。"Emulsification"。今のギリでしたね(笑)。

-おっしゃるようにFiNOがとてもユニークなバンドであることを、改めて印象づける作品になったと思うのですが、アルバムを完成させて、今どんな手応えがありますか?

HIROSHI:狙い通り集大成と言える、ほんとに彩り豊かな作品になったと思います。このご時世に13曲入りのアルバムをリリースさせてもらえることにも感謝していますし、世の中的にはリード・シングルさえあればといいというか、アルバムを聴く人が少なくなってきていると言われるなかで、作品から何か自分だけの宝物を見いだしてほしいという思いを持ってアルバムを作れたのは、嬉しかったですね。これからFiNOに出会う人には、まずこのアルバムから聴いてもらいたいです。

SHUN:今まではちょっと避けていたようなこともすんなり飲み込めて、"次はこういうことをしたらもっと面白いんじゃないか"とか、"今までこういうことをやってきたバンドだから、ここに行ってもいいんじゃないか"とかってことも見えてきたんですよ。HIROSHI君が言った通り集大成ではあるんですけど、同時に通過点というか、次を目指すような気持ちにみんながなっている。もちろん、ツアーを通してアルバムの曲はまだまだ変わっていくと思うんですけど、"止まらずにこのまま行くぞ!"って気持ちになれる1枚ができたんじゃないかな。

-バンドが初期に持っていた熱量を取り戻して、よりロック・バンドらしいサウンドに回帰した『WHAT'S GONNA BE?』(2019年3月リリースのシングル)の延長上で、今回はアルバムということで、さらに多彩なサウンドにアプローチしていますが、その中で核になるのは、新たなサウンド・アプローチという意味でも、ファンに向けたメッセージという意味でも、やっぱり「Keep On Marching」ですよね。この曲は、どのタイミングでできたんでしょうか?

HAYATO:最後だったんじゃない?

WATARU:そうだね。ただ、この形になったのは最後でしたけど、こういうことがやりたいというアイディアは、どの曲よりも早くからあったと思います。そこから、こねくり回す時間が結構長かったんですよ。そういう意味では、アルバムをどういうものにしようか考えながら、同時進行で作ったみたいなところもあるので、いろいろな思いが入っているのかな。

SHUN:マーチングのリズムを取り入れたいってところから始まったんだよね。

HIROSHI:そうだね。

SHUN:俺らはこのまま進んでいくっていうのをマーチングのリズムで表現したところに、"uh la la la"ってコーラスが加わったんですけど、それがアフリカっぽいよねって。

HAYATO:大地を感じるよねって。

SHUN:今までやってきたゴスペルの根本の根本ってアフリカなんじゃないかってところで、意図していたわけじゃないけど、"ルーツは繋がっていて、そこに戻っていくんだね"って言いながら、さらに、どういう楽曲にしていこうかってどんどん変わっていって。

HAYATO:派手な曲にしたかったんですよ。大人数でやっているみたいな。マーチングのリズムが鳴っていたり、ストンプも自分たちでレコーディングしてみたりして、アフリカンというか、大地をイメージさせるものも再現してみたんです。

HIROSHI:お客さんと一緒に一体感を作っていける曲になったんじゃないかな。

-あぁ、なるほど。曲ができてから歌詞のテーマが決まったというよりは、最初からマーチングってところと結びついて、どんなことを歌いたいかなんとなく見えていて、そのメッセージも曲とともにはっきりと形になっていった、と?

HIROSHI:そうですね。曲作りってだいたい落ち込むんですよ(笑)。答えが出なかったり、目指しているところにどうやったら届くんだろうって悩んだりすると、やっぱりひとりで抱え込んでいるぶん、落ち込んでしまう瞬間があって。だから、そういう自分に対して鼓舞している部分もあるし、そこを乗り越えて、この言葉を伝えられたら、たぶん、同じような気持ちになっている人のことも、ビートと一緒に後押しできるんじゃないか。そういう想いはすごくあって、このアルバムを作っている自分に対しても、"頑張れ!"って思いながら書いているところはすごくありました。

-そういうふうに自分を鼓舞しながら、一方ではその落ち込んでいる状態を、そのまま生々しい形で吐き出した「Set Me Free」のような曲もあって。

HIROSHI:あぁ、やっぱりわかりますか(笑)。

-今のお話を聞いて、結びつきました。

HIROSHI:おっしゃる通りです(笑)。別にアルバムに入れるつもりはなかったんです。ある意味ガス抜きというか、"もう無理だ! あー!!"ってなっているのを、議事録的な感じで、ぽーんって作ったんですよ。そしたら、言いたいことが詰まっているせいか自然にできあがったので、全然使われなくてもいいと思いながら、デモ出しのとき、弾のひとつとして入れとけと思ったら、"何これ!?"って、みんなが拾ってくれたんです。自分の気持ちに正直に赤裸々なものを作りあげると、人に刺さるんだなという成功体験にもなって。FiNOのアレンジとしても、今までになかった物悲しさがあって、アルバムにいい色合いを加えてくれていると思います。

-ここまで落ち込んだ気持ちを曝け出したものって、これまでなかったですよね?

HAYATO:『LISLE'S NEON』(2015年リリースの1stフル・アルバム)のときは結構あったんじゃない?

HIROSHI:でも、当時は第三者的な視点で自分の気持ちを吐き出しているみたいなところがあったから、ここまで主観的なものはなかったですね。純粋に"ほっといてくれ!"って言いたいっていうのは(笑)。

-今はそこまでストレートに歌える気持ちになったというところもあるんですか?

HIROSHI:自分の気持ちは吐き出してしまいたいという気持ちが、どんどん強くなってきましたね。それはアルバムを作るうえでもテーマとして1個あったんです。今自分が抱えている気持ちを吐き出さないまま、次の新しい気持ちを言葉にしていくことは無理だなって。だから、ガス抜きと思いながら作りましたけど、アルバムの制作をするうえで必要なプロセスではあったのかな。