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INTERVIEW

Japanese

太田家

2019年07月号掲載

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Member:太田 彩華(Vo/Ba)

Interviewer:高橋 美穂

声優や作詞家として活動している太田彩華が、"声優が詠う文学的青春パンク・バンド"を始動。その名も、自らの苗字を掲げた"太田家"! 他のメンバーも、太田ERIKA様、太田ひさおくん、太田たけちゃんと、全員が太田姓を名乗る徹底ぶり(ちなみに"様"、"くん"、"ちゃん"も名前の一部)。そこには、どんな意図があるのだろうか? そして、彼女たちが表現する"文学的青春パンク"とは、どんなものなのだろうか? 7月から3ヶ月連続で配信リリースが始まるタイミングで、太田彩華にすべての疑問をぶつけてみた。青春真っ只中のキッズはもちろん、かつて青春パンクを聴いていた大人たちも照らしてくれる煌きを放つバンド。乞うご期待!

-実際にお会いしてみて改めて思いますけど、彩華さんは、本当に聞いていて安らぐ声質をされていますね。

ありがとうございます(笑)。

-そこでますます不思議になるのが、"青春パンク"というジャンルを選んだ理由です。清涼感のある声質とアグレッシヴな青春パンクは、一見相反するところがありますよね。

それは、私がずっと前から青春パンクが好きだったからです。昔からライヴも行っていて、"バンドをやるならパンク・バンドがいい!"って思っていて。これまで、ソロでライヴはやってきたんですけど、そこでも銀杏BOYZやガガガSPの楽曲をカバーしてきたんです。

-そういったバンドの、どういうところが魅力だと思いますか?

パンクだし、うわーって叫ぶような曲も多いんですけど、その中にあるロマンチックさに惹かれますね。グッときます。

-じゃあ声優やソロ活動をしながらも、バンドをやりたい思いはずっとあったんですね。

そうですね。

-ヴォーカルだけではなく、ベースを弾いていらっしゃる理由も気になります。

この前に趣味でガールズ・バンドをやっていたんです。そのときもベースだったんですけど、低い音が好きなんですよね。自分の声が高いからかな? 青春パンクが好きっていうところとも繋がりますけど、ないものねだりなんですかね(笑)。

-このメンバーが集結してバンドが始動した経緯を教えていただけますか?

ソロでワンマン・ライヴをやったときに、このメンバーにサポートで入ってもらって、そのときにビビっときたんですね。ギターのERIKA様はたまたま自分が観に行ったライヴで弾いていたり、たけちゃんももともと好きなバンドのドラムを叩いていたりして、それまで、それぞれの演奏を何度も観させてもらっていたんですけど。キーボードのひさおくんは、ソロでもずっと弾いてくださっていて尊敬していますし。

-そこに"太田家"というご自身の名前を掲げたバンド名を付けて、全員が"太田さん"になって。

バンド名は絶対に"太田家"だとずっと思っていたんです。マネジャーさんにも"何個か候補を出してください"って言われたんですけど、これしか思いつかなかった。"ダサい"とはすごく言われたんですけどね(笑)。名前もみんな"太田"でいこう! と。

-なんで絶対に"太田家"が良かったんでしょう?

そうですね、なんででしょう......言いやすいからですかね(笑)?

-ファンの方のことも"親戚"と呼ばれているんですよね。だから、アットホームな雰囲気を出したいのかなとも思ったんですけど。

それもありますね。ステージに立っている人だけじゃなくって、みんながいてひとつのライヴが成り立っているし、"ファンの方もみんなゲスト・ヴォーカルだ!"って思っているんです。だから、みんな太田家のメンバーで、ギターの太田さん、ドラムの太田さん、キーボードの太田さん、ベース&ヴォーカルの太田さん、ゲスト・ヴォーカルの太田さん、みたいな気持ちなんですよ。

-自分の歌に没頭したいというよりは、どんどんみんなに歌ってほしいという?

あぁ、もう歌ってもらったほうが嬉しいですね。その場を作れるのはそのときしかないので。じっくり聴くのはCDでいいと思うし、ライヴではそれぞれ好きなように楽しんでもらいたいです。

-だからこそ、コーラスやシンガロングのフレーズが盛り込まれた楽曲が揃っているんですね。

そうですね。収録現場でも、みんなにコーラスしてもらって"やり直し!"って(笑)、私がディレクションしました。

-ディレクションのポイントって、どういうところなんですか?

ひっくり返りそうなくらいの勢いで歌ってほしくって。

-あぁ、それは見事にパッケージされていますね。また、太田家の特徴としては"文学的青春パンク"を標榜しているじゃないですか。その意図を教えていただけますか?

青春パンクも好きだったんですけど、文学作品もずっと読んできて。私、声優よりも歌よりも、作詞家としてのデビューが早かったんです。自分が好きなことをやるなら、文学的な表現の歌を歌っていきたいなぁと思って、"文学的青春パンク・バンド"っていうふうにしたんですよ。あとは和なものも好きで、このバンドでもみんなに羽織の衣装を着てもらうとかもしているんです。歌うも和歌とかを詠むときに使う"詠う"にしていて......。だから、書いて、詠んで、伝えていきたいなっていう。

-それぐらい歌詞にも情熱を注いでいるということですよね。作家の中では太宰 治が好きだそうで。

はい。女々しいんですけど(笑)、細かい描写に"わかる!"って思えるような、人間味があるところが好きなんですよね。あとは、夢野久作も好きなんです。"ドグラ・マグラ"もすべて集めました。明治、大正時代の、日本の文化と海外の文化が混ざった独特の世界観が好きなんですよね。ちょっと怪しい感じもあるんですが......太田家は怪しい感じはないんですけど、それに惹かれています。

-今の太田家はストレートなところが出ていますもんね。7月1日に配信スタートの「名もなき少年の 名もなき青春」。これは作曲が太田ひさおくんで、作詞が太田彩華さんですね。なぜこの曲がリリース第1弾になったんでしょうか。

文学的青春パンクとはこれだ! って、みんなでいろいろと話し合ってできた曲です。歌詞もかなり気合を入れて書きました。

-特に印象的だったのは、"僕が詠わずして 一体誰が詠うというのだ"というフレーズを叫んでいらっしゃるところです。スクリームとセリフが混ざったような感じになっていて、声優さんならではの表現力だと思いました。

ありがとうございます。重要なところではあるんですが、結構パッと"こうしよう!"って思いましたね。曲が先だったんですけど、メロディを聴いたときに、"ここは叫ぶと絶対にカッコいいぞ!"って。そこから、こういう言葉を入れたいと思いました。

-決意が表れていますよね。こういう歌は自分がやらなきゃ、太田家がやらなきゃっていう。

そうですね。"少年"になっていますけど、自分にも照らし合わせながら書いていったんです。私も兵庫から上京してきたんですけど、この少年も故郷を離れるシチュエーションが歌詞の中にあって。昔のことを思い出しながら、これからのことも考えて歌詞にしていきましたね。

-振り返っているからこそ書けるような言葉にもなっていますよね。

そうですね。一生青春だとは思っているんですけど(笑)、"今だから書けることってなんだろうな?"って振り返ってみました。

-歌詞の最後は"いつかはこの春に/名前を付けよう"と締めくくられていて、きちんと物語になっている。そこも文学的ポイントだと思いました。何かこだわりはあったんですか?

なんでもないひとりの子が、言ったら名前もない、タイトルもない人生を送るわけなんですけど、それはその子にしか歩けない道だったりするので、いつか振り返ったときに名前を付けられたらいいなって書いたんです。

-配信リリースは8月、9月と続きますが、また違ったタイプの楽曲になっていますよね。8月リリースの「星明かりのメロディ」は、THE BOOGIE JACKのヒライシュンタ(Vo)さんが作詞作曲です。これは、どういうご縁でお願いしたんですか?

ひさおくんとたけちゃんが知り合いだったんです。太田家の楽曲は、THE BOOGIE JACKのシュンタさんに書いてもらうとピッタリなんじゃないかっていう推薦があって、書いていただいたんですが、いただいたデモがギターの弾き語りだったんですね。それが、めちゃくちゃカッコ良くて、うわー! ってなって。いい声ですしね。それをひさおくんがアレンジしてできあがりました。

-ひさおくんは、「星明かりのメロディ」について、"様々あるパンク・サウンドの中でもメロコア寄りの8ビートの疾走感を意識しました。サビでオーケストラを入れたことで疾走感に加えて、星が輝く夜空のパノラマを感じさせる広がりのあるサウンドになっています"というコメントを寄せてくださっています。でも、それだけデモが良かったら、プレッシャーだったかもしれませんね(笑)。

そうですね(笑)。私も、いつかアコースティックで歌ってみたいと思っています。