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INTERVIEW

Japanese

tacica

2019年05月号掲載

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Member:猪狩 翔一(Vo/Gt) 小西 悠太(Ba)

Interviewer:山口 智男

-歌詞はいろいろなことを歌っているけど、全体の印象としては、そのバンド感に気持ちが鼓舞される。そこがいいと思いました。

猪狩:最近、プリプロにも時間がかからなくなってきたんですよ。このアルバムのセッションのとき、その場でさらっと弾いた新曲をばっとアレンジしてデモを作ったんです。そういうことができちゃう。しかも、それがすごくかっこいい(笑)。だから、2年かけてすごくバンドっぽくなってきてるんだなって思いましたね。その曲はアルバムには入らなかったんですけど。

小西:最短距離が最初から見えるんですよね。これまでは各々に試したいことを時間をかけて試して、それで"やっぱり、これがいいよね"ってなってたんですけど、今はいろいろ出たアイディアの中から、"これ試してみよう"ってやって、それがかっこ良ければ、それで決まりなんです。

猪狩:もちろん録っている最中にフレーズを作り直したりっていうのはあるんですけど。

-録っている最中にフレーズを直すっていうのもバンドっぽくないですか?

猪狩:バンドっぽいと思います。だから、本チャンのレコーディングも早いです。

小西:今回、これまでで一番早かったんじゃない(笑)?

猪狩:痺れるぐらい早かった(笑)。パンク・バンドとかは別かもしれないけど、こういうタイプの曲をやるバンドとしては、結構いい線いってるんじゃないかな(笑)。

-歌詞についても聞かせてください。「ordinary day」と「煌々」の2曲でわりとわかりやすくなったので、今回もその延長になるのかなと思ったら、そうはならずに1曲の中で相反することを歌いながら、シニカルなのか、ニヒルなのかわからないですけど、聴き手を翻弄するというか、考えさせるようなものが多いという印象でした。前回のインタビュー(※2018年9月号掲載)で、"歌詞は日記のようなもの"とおっしゃっていましたが、今回もそういうふうに書いているんですか?

猪狩:曲ができた時期がかなりバラバラで。だから書いた時期によっても違うと思うんですけど。

-そんなふうにいろいろな時期に書いたものを、アルバムというひとつの作品にまとめてみて、全体通してどんなことを歌おうとしていると改めて思いますか?

猪狩:アルバム・タイトルの"panta rhei"は、"すべてのものは変り続ける"って意味なんです。まさにその通りで、僕というフィルターをひとつ通して、そこに信念みたいなものがあったとしても、それを取り巻く環境や光の当たり方によって、見え方って変わってくるなと。あくまでもひとりの人間が書いているものではあるけれど、すべてのものが変わり続けていくというところで統一感を持たせたいなと思って、このタイトルにしたんです。たださっきも言ったように、歌詞って意味ではほんとバラバラで。その時々で考えていたことも全然違いますしね。

-"信念みたいなものがあったとして"とおっしゃいましたけど、変わり続けるものの根底には変わらない信念がある、と?

猪狩:"生きていくこと"がテーマっていうのは、僕の中では変わらないですね。あと、きれいごとは言わない。もしかしたら、人によってはきれいごとに聞こえるフレーズがあったとしても、それは僕の中ではきれいごとではないんです。極論を言えば、この12曲の中で、聴いている人がどれか1曲でも"私のことを歌っているみたい"と思ってくれたら、それが今回やりたかったことなのかなという気がします。最近すごく思うのが、これだけいろいろな人がいるわけだから、全員が"自分のことを歌っているみたい"と思える歌詞を書くのは、まず不可能だろうって。だから、12曲の中で1曲でもその人の歌になったらいいのかなって思っていた気がします。

-だからって、共感してもらえそうな言葉を選んでいるわけではないんですよね?

猪狩:最近はより身近な言葉を選ぶようになった気がします。

-自分のことを歌っているみたいというのとはちょっと違うんですけど、「latersong」の"無い知恵 振り絞って行け"っていうフレーズは、これから生きていくうえで、ことあるごとに思い出したいと思いました。

猪狩:あれ、いいですよね(笑)。僕、ヒップホップの精神性が好きなんですけど、ヒップホップの曲って、必ずリリックにパンチラインがあるじゃないですか。それって別にヒップホップに限ったものではないと思うんですけど、最近はそういうパンチラインみたいなものは意識しているのかな。まさに「latersong」の"無い知恵 振り絞って行け"とか、"最後まで強がってくれ"とかは、そうなのかなと思います。

-なるほど。パンチラインが1行あればOKだと。

猪狩:誰かが言ってたんですよ。1曲の中で自分の好きな箇所が1個でもあれば、それは自分の中で特別な曲になるって。それが僕にとっては、歌詞なのかな。

-小西さんのベースも印象に残るフレーズがいっぱいありました。

小西:猪狩のデモを聴いて、メロに合わせることを大前提にギター、そしてリズム隊とのバランスを考えながらつけていったんですけど、前に出るところは出て、歌を聴かせたいときは――例えば、「中央線」だったら打ち込みのドラムに合わせてシンプルにっていう。以前はやりすぎていたんですけど、今回はうまい具合にバランスが取れたと思います。

-いろいろ聞かせていただきましたが、どんなアルバムになったという手応えがありますか?

猪狩:今の僕らのいる場所の記録ですね。最近レコーディングしていると、"今日、もっと言えば今日のこの時間に録ったからこれなんだろう。明日だったらまた違うんだろうな"って思うんですよ。"じゃあ、なんで今日録ったんだろう?"と思うと、それはスタジオの予約が今日だったからなんです。

-ですよね(笑)。

猪狩:そう、それを言い出したらきりがなくて(笑)。もちろん、その日に向かって僕らは準備をして、その日最高の状態で臨むんですけど、もしかしたら昨日の方が良かったのか、次の日の方が良かったのか、それはわからない。人生ってそんなものだよなって(笑)。とにかくわからないことが多い。予告もなければ、後書きもないから。だから、今の僕たちが精一杯やってきて、4人で演奏した記録なんだと思います。もちろん、自信を持っての記録ですけど、ツアーを回りながらも、制作という意味ではもう次の場所にいて、今回のアルバムよりもいいものを作ろうとしている。だから、最高傑作だと思っているものを、すでに頭の中では塗り替えているんですよ。

小西:普通リリースしてからツアーするから、その中で曲が成長すると思うんですけど、今回はリリース前にツアーを回っちゃって、そこで早い段階のうちに曲が進化していっていますからね。

-じゃあ、現在やっているツアー[TIMELINE for "sheeptown ALASCA"]に間に合う方は、ぜひ足を運んだ方がいいですね。僕も4月21日の新木場STUDIO COAST公演は、心して観に行きたいと思います。

猪狩:ぜひ(笑)。