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INTERVIEW

Japanese

tacica

2017年09月号掲載

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Member:猪狩 翔一(Vo/Gt) 小西 悠太(Ba)

Interviewer:岡本 貴之

前作『HEAD ROOMS』より1年5ヶ月ぶりとなる3rdミニ・アルバム『新しい森』をリリースするtacica。2017年3月から4月にかけて実施され全公演ソールド・アウトとなった、2ndアルバム『jacaranda』再現東名阪ツアー[TIMELINE for "jacaranda"]を経て、ツアー・メンバーである野村陽一郎(Gt)を共同プロデュースに迎え、同じくツアーに参加したドラマー・中畑大樹(syrup16g)と共に作り上げた今作。4人編成のバンドとして分厚いサウンドを完成させた彼らは、今どんな心境で音楽と向き合っているのだろうか。猪狩翔一、小西悠太に話を訊いた。

-ミニ・アルバム『新しい森』は"TIMELINE"ツアーに参加した野村陽一郎さんがプロデュースを担当、同じくツアーに参加した中畑大樹さん(syrup16g)をドラマーに迎えての制作となったそうですが、ツアーで得たサウンドの手応えをアルバムに反映させようという狙いがあったのでしょうか?

猪狩:ミニ・アルバムを作るにあたって野村さんに共同プロデュースをお願いしようという話が最初にあったんですよ。その話があったなかで"TIMELINE"ツアーという、過去のアルバム『jacaranda』(2009年リリースの2ndアルバム)を曲順どおりに再現するライヴをやることになって。ただ、『jacaranda』リリース当時もツアーはやっているので、そのときに鳴らせなかった音も含めて4人でできないかなと思って、ミニ・アルバムはいったん置いておいて、ギタリストでもある野村さんと一緒にやることになったんです。それでツアー・リハに入って4人で音を鳴らしてみて、"これはいいな"と思ったので、『jacaranda』の曲を何曲かリテイクして会場限定のシングルを作ることになって。基本的に僕らは"せーの"で録るんですけど、その音がスピーカーから出たときに、鳴ってる音が全部一緒に出ているというか、普段は"せーの"で録った上に僕が違う音で弾き足すオーバー・ダビングの音がもうすでに入って出てくる感じが新鮮で。それでリテイクのレコーディングもギタリストとして野村さんに入ってもらって、その流れで今回のミニ・アルバムも録りたい、ということで共同プロデュースに入ってもらいました。

-なるほど、最初は制作の話からだったんですね。というのも、以前、藍坊主との対談(※2015年8月号掲載)で"ライヴと音源は結構引き離して考えてるとこがある"という発言があったので、ライヴを経て音源制作に繋がったというのは意外な気がしたんです。

猪狩:あぁ、言ってましたね。じゃあ今も線引きはしていないかというと、おそらくしているし、ライヴで同じことを弾かなくてもいいと思っているし、究極は歌詞が変わってしまってもいいと思っているんですよ。そういう意味では、実はライヴと同じものをパッケージしようという感じでもないんです。でも、単純に"結局音"なんで。自分たちが演奏してパッと聴いて良いと思ったものを、観てもらったり聴いてもらったりするというのが、一番良いのかなって。今自分たちがいる立ち位置での結論がそれで。じゃあ1年後に同じ気持ちかどうかはまたわからないんですけど(笑)。

-野村さんが参加したツアーは、初めてリード・ギタリストを加えての4人編成でのライヴとなったそうですが、それはおふたりにどんな影響を与えましたか?

小西:ライヴだったら、猪狩と自分の立ち位置って下手上手で真逆なんですけど、野村さんが入ると隣にギター・アンプがあるっていうのが、最初は戸惑うくらい斬新でしたね。真隣からギターの音が鳴ってくるというのが(笑)。あと、中音も今まで許されていたベースの音の面積というのが、やっぱりギターが入ることによってシビアになったり、というのは勉強にもなったし面白かったですね。やってこなかったことがこの歳になっていろいろやれて良かったなって。

-猪狩さんは野村さんのギターとのバランスをどのように考えていたのでしょう。

猪狩:基本的には、野村さんが3人で成立するうえでのプラス・アルファのギターを入れようとしてくれているのがあるんですけど、ギターがもうひとりいることでの音の棲み分けというか。例えば僕のギターの音が太すぎて面積を埋めすぎると、入る余地がなくなったりとか、基本的にバッキングとリードというのは、既存の曲に関しては僕が今まで弾いてた部分じゃないところを弾いてくれるという感じでやってます。ただ、今回の『新しい森』に関しては、野村さんにお願いするリードの部分が多かったです。それも含めて空気の読み合いというか、"ここどうしよう"っていう話し合いよりも、"ここは俺が弾いた方がいいんだろうな"っていう部分が多かった気がしますね。

-そこはギタリストとしてのフィーリングが合う感じなんですか?

猪狩:そうだと思います。今まで3人でやってきた感じって、上手なギタリストはたくさんいるんだけど、一緒にできそうなギタリストがなかなかいなくて。そういう意味では、すんなりギターをお願いしようかなって思えた人は野村さんが初めてなんです。育った場所とか聴いてきた音楽とか好きな服とか、全然違うはずなのに、"これいいよね"って言えるポイントが同じというか。それは、小西はもちろん、中畑さんにもそういうところがあって。言わずもがなっていう部分が多い方がいいとは一概に思ってはいないんだけど、"せーの"で鳴らしたときに音楽以外の余計なストレスがない4人っていう気がしています。

-アルバム発売、ツアー開始にあたって"初心に戻って"という言葉もありましたが、"音楽以外の余計なストレスがない"っていうのは、バンドを始めたころの無邪気な感じがある、ということ?

猪狩:初心に戻るって、自分に言い聞かせる部分であって、きっと傍から見たら初心には戻れないというか......"クロノ・トリガー"ってゲーム知ってます?

-はい、知ってます。

猪狩:"強くてニューゲーム"っていうシステムで、全部クリアしたあとに、自分の経験値そのままに、強いまま初めからゲームをやるっていうことなんですけど。それと同じで、基本的に、経験してきたことの記憶まで消せるということはありえないから、完全に初心に戻ることはできないんだけど、今の知識や経験を持ったうえでもう1回純粋に音楽を楽しもうっていうことを"初心に戻る"っていう言葉にしていると思います。

-"PLEASURE FOREST"ツアー終了までの期間限定で4人によるアー写が公開されていますが、初めて見た人はtacicaを4人組バンドだと思う人もいるかもしれないですね。これは確固たるバンド感があるからこそだと思うのですが。

猪狩:そうありたいですね。"サポート・メンバーを加えて"っていうのは、説明上、言っているだけというか。だけど基本的にはただの4人のバンドっていう気持ちだし、鳴っている音もそうなるようにやってます。