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INTERVIEW

Japanese

阿部真央

2019年01月号掲載

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-時代的なことを言うと、阿部さんがデビューしたころはバンドよりソロ・アーティストの方が多くて。デビュー当時を思い出す感じはありますか?

10年前? ギリギリまだ音楽が売れてましたよね(笑)。で、サブスクとかなかったなみたいな。iTunesとかもあったけど、ここまで主流じゃなかったっていうか、ほんとに移行してる時期だったんだなって、今思いますね。

-音楽の聴き方がドラスティックに変わった10年でしたね。

変わりましたね。面白かったけど、ハナから良くも悪くも自分の音楽が売れるとか音楽業界のあり方とか、全然興味がなかっただけに、そんなにショックは受けずにやってこれてます。でもだからこそ配信が主流になってCDが売れなくなってきた5年前とかは"これからはライヴの時代だよ"とか言ってたけど、実はそうでもないっていうか、思ったよりライヴの時代になってないなと思うんですよ。

-それはどんなときに感じますか?

単純にライヴ行ってる人は多いけど、ほんとにライヴがいい人のところに集まってるかと言われるとそうじゃないっていうか。だからまだ"ライヴ・アーティスト"と呼ばれる人たちが、真価を見てもらえてる時代ではないって個人的には思いますね。もちろん売れててライヴがいい人もすごいいるけど、まだセールスに引っ張られてのライヴがあって、集客があってっていう構造はあるんだなって、そういうのが覆ったわけではなかったんだなと。結局、ライヴに来てもらうにも宣伝が必要で、逆に言うとその宣伝の仕方が変化したんだなみたいな。だから"これからはライヴの時代だよ"って言葉を私が履き違えてたんだなとは思いましたね。その変化はあるかな。

-そんななかでも阿部さんの音楽は軸が変わってなくて。

ありがとうございます。みんなに言われます。

-10代の強気な感じから徐々に変化してくる感じとか。「デッドライン」とか凄まじい。

聴くに耐えない感じですよね(笑)。マスタリングで全部聴けなかった、恥ずかしくて。曲は好きだしライヴでやるのも好きだけど、初期の曲に関してはそう思いますね。

-自分では聴きたくない音源、そんなにあるんですか?

ありますよ。初期のアルバム3枚ぐらいは。曲はいいんですよ。全然今も自信持ってできるんですけど、ピッチが悪くて。

-(笑)いや、それを凌駕する迫力があると思います。バンドで過去のアルバム1枚丸々再録、それこそアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の『ソルファ』とか。その気持ちはわかりますか?

いや、それはわかんないです。オリジナル音源が一番なのはもう間違いないというか。実際、アジカンさんの『ソルファ』は大好きなので再録も買いましたけど、オリジナルの方に込められてる熱っていうのは、それはアジカンさんだからとかじゃなくて、誰でももう表現ができない。その熱量を聴いて育った自分たちとしては、やっぱりオリジナルに戻るというか。自分の場合そういうことをする度胸もないというか、そこまでの強いこだわりはないんですよね。そこがあんまり自分がミュージシャンっぽくないところかもしれないですね。

-たしかに、バンドならアンサンブルが変わったとか、今の演奏力で録りたいとか、アレンジを変えたいとか。

音を変えたいとかあると思うけど、私の場合、別にそれはライヴでやればいいかな。

-阿部さんのファンは、10代、20代ぐらいで聴き始めて、彼らにとってのオリジナルがあるわけですもんね。

そうですね。そっちが大事かなと思います。2枚目ぐらいまでの楽曲自体が10代のときに書いた曲っていうのもあるけど、私のアルバムで言うと2枚目(2010年リリースの『ポっぷ』)ぐらいまでのフレッシュさというか、多感さみたいなものを、ほんとにこういう公のメディアを使って残せるっていうのは貴重っていうか、ありがたいことですね。

-年齢を冠した曲があり、「17歳の唄」から今回の「28歳の唄」まであって、「28歳の唄」はさらっとした内容でわりと笑える感じにしたのはなぜなんだろう? と思って。

"何々歳の唄"っていうのは、20歳になるまでの3年でやめようってなんとなく思ってたから、最初に「17歳の唄」(2009年リリースの1stアルバム『ふりぃ』収録曲)を書いて、次『19歳の唄』(2010年リリースのシングル表題曲)を書いて17、18、19。で、もう終わったんですよ。でも2018年に「17歳の唄」を"虹色デイズ"っていう映画の挿入歌に使ってもらって、わりと新たに反応してくれる人もいて。"もう「何々歳の唄」は書かないんですか?"ってたまに言われてて。ちょうどリリースが私の誕生日の前の日なんで、"じゃあ「28歳の唄」を書けばいい"と思ったんです。で、"28歳の唄"を書こうっていうアイディアと、"私は早口を直したい"って歌詞は別々のところにあって、じゃあそれを28歳の私で切り取ろうと。

-"自分をどうしたい"みたいな(笑)。

そう。自分をどうしたいか。大人になっても全然ダメなところがいっぱいあるから、まだまだこれから私は変わっていくぞ、成長するぞってことにしようと思ってまとめました。

-それぐらいさらっとしてて、大笑いできて終わって良かった(笑)。

あぁ、良かった。なんかベスト・アルバムに新曲入れますって、すごい本気のやつ入れるの似合わないと思って、今の私にはね。

-その前にシングル『変わりたい唄』(2018年10月リリース)が出てますからね。

そうなんですよ。大本気のシングルが入ってて。で、音源初の「クソメンクソガールの唄」って、タイトルはふざけてますけど、中身はいい感じの歌だから、もうこの世界を壊したくないし、成立しちゃってるので。

-軽快に"何々歳の唄"を作れる今の阿部真央って人を感じ取れるなと思いました。

そこのスタイルからも28歳の現状を切り取ってると。