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LIVE REPORT

Japanese

阿部真央

Skream! マガジン 2023年12月号掲載

2023.10.27 @Spotify O-EAST

Writer : 石角 友香 Photographer:森好弘, 百恵

セルフカバー・アルバム『Acoustic -Self Cover Album-』リリース記念の全国ツアーではあるけれど、このツアーにはオリジナル新作で前作にあたる『Not Unusual』で開けたヴォーカリストとしての表現も、独立し、レーベル"KAGAYAKI RECORDS"を設立したあとのアーティストのスタンスもすべてが凝縮されているのだと、終演後に感じた。ツアー6本目の東京公演をレポートする。

明るく照らされたステージに阿部真央とミトカツユキ(Key)、和田建一郎(Gt)が登場。阿部は白のカットソーと黒のパンツ、スニーカーというカジュアルな出立ちで、満場の拍手に挨拶を返す。ショーとは違うニュートラルなムードでステージが進行しそうな予感のなか、歌い出しに"おぉ〜"とフロアからのヴィヴィッドな反応が起きた「じゃあ、何故」からスタート。男性目線の胸苦しいこの曲と対比になるように2曲目には切実なまでの女性からの告白を歌う「貴方の恋人になりたいのです」へ続く流れに感情が自ずと没入してしまう。ミトの温かなエレピとか細く歌う阿部の表現が聴き手をひとりの世界に誘う。一転、元気な曲をとアコギのリフが鼓舞する「どうしますか、あなたなら」では自然とクラップが起きる。アコースティック・アレンジになることで、より明快に届く歌詞の中でも"完璧な自分を諦める勇気を"とか"道はすでに開いてる"とかは彼女自身も励まされるフレーズなんじゃないかと思いながら聴いた。オリジナルのポップ・ロックからの変化の幅が大きい「Believe in yourself」の自分を鼓舞する内容も今の彼女自身の想いから発されているようで、受け取るこちらも深く頷いてしまう。

最初のブロックが終わるとフロアのそこここから阿部を呼ぶ声が上がり、ライヴでの再会を互いに感謝し合う。現在のボブヘアがきれいに収まるとジブリ映画"千と千尋の神隠し"のハク感を感じないか? とファンに問い掛け、笑いを誘っていた。

グッとパーソナルなムードが色濃くなる「boyfriend」での健気な呟きのようなヴォーカル、スタンドマイクでエレピの柔らかな音を背景に愛の奇跡を歌う「15の言葉」もどこか儚い。歌の主人公のフィロソフィーが声によって表現されていることがより理解できたのは一転して男声に近いアルト・ヴォイスで歌う「未だ」。続く「コトバ」は女性視点で、言葉にしなくても想いは伝わるという男性と、ここで言葉にしなければきっと後悔するという女性の内面のストーリーがシンプルなアレンジで立体化する。声で人物を表現するこのブロックは「嘘つき」で閉じるのだが、感情を漂白し、美しさだけ抽出したような声で淡々と重ね、"貴方はいつも居なかった"という核心部分で高音に突き抜ける。短くも濃い映画を観たような感覚に陥った。

迫真の声の表現を経て、リラックス・ムードでの「いつの日も」、レゲエ・アレンジがいいと思っていたところ、結果バラードになったという「Don't leave me」を歌う。デビュー前のこんなエピソードが聞けるのもセルフカバーがテーマの今回のツアーならではだろう。そこから直近の大人の凛とした歌唱が冴える「Sailing」への跳躍も、今のベスト選曲だから可能なことだ。ハイトーンのロング・トーンも感情爆発系ではなく、まっすぐな気持ちが遠くまで届く。

いったん呼吸を整えて、この日一番長いMCをした彼女はそこで、独立を決めてからの不安を振り返り、それでも歌い続けたいという想いはブレなかったということを話し、助けてくれたスタッフ、ミュージシャンに感謝の意を伝えた。そのうえでの新曲「I've Got the Power」の説得力たるや。新しい場所に立ち、再び歩き始めた彼女の約1年の心がそのまま曲に落とし込まれた、何より今の阿部真央を表す1曲だった。続いてR&Bの「傘」、「I Never Knew」と続け、彼女の中の洋楽的なエッセンスはアコースティック・アレンジでもしっかり届いた。

シンプルなアレンジだからこそ伝わる歌の強度と、シンプルであることを忘れるほど豊かな声のバリエーションであっという間に進んできたステージは残すところわずか。歌メロをエレピにアレンジしたイントロから、もうフロアが明るい表情に溢れているのがわかる「I wanna see you」ではザクザク刻まれるアコギのリフにクラップが重なり、ラストの「ロンリー」でも、阿部とファンの育んできた時間を祝福するようなムードが最高潮に達した。幼さすらあったラヴ・ソングが、年齢と共に会いたい人に会いたいだけだという、生きるうえで最も大きなモチベーションに気づかせる豊かな歌になっていた。

アンコールでは"初めて作った曲を聴いてください"と、ルーツ・ミュージックっぽさを醸すアレンジで「MY BABY」を歌い、曲中で"あまり曲の長さとかわかってなかったから、尺が長いんですけど、もうちょっと頑張って"と種明かし。サポートのふたりがはけたあと、19曲目はこのツアーでまだやっていない曲で、ファンに向かって"なんの曲でしょう?"と投げ掛け、この日最も強烈なシャウトを放った「デッドライン」。何度も圧倒されてきたはずだが、それでも言葉が出ないほど打ちのめされる歌唱。阿部真央のライヴに来た! という実感を残す。一転、多くのレパートリーの中には恥ずかしい感じの曲もあって、と「ストーカーの唄〜3丁目、貴方の家〜」を歌う。狂気と愛嬌は紙一重だなんてことも認めて生きていくのだ。来年には、デビュー15周年を迎える彼女。曲はできているし、バンドでのライヴもやりたいと、期待を高める発言が頼もしい。そして正真正銘のラストはこの日も「母の唄」。そういえば初めて阿部真央のライヴを観てこの曲に射抜かれたのも同じライヴハウスだった。そのときからの変化と不変をこの日ほど嬉しく受け止めたことはなかったと思う。

LIVE INFORMATION

"15th Anniversary Abe Mao Billboard Live Tour 2024"
1月24日(水)ビルボードライブ東京
1stステージ:OPEN 16:30 / START 17:30
2ndステージ:OPEN 19:30 / START 20:30

1月28日(日)ビルボードライブ大阪
1stステージ:OPEN 14:30 / START 15:30
2ndステージ:OPEN 17:30 / START 18:30

[チケット]
サービス・エリア:¥7,500 / カジュアル・エリア:¥7,000(1D付)
※ご飲食代は別途ご精算となります。

■"ABEMANIA"FC1次先行 ※応募者同行者共に年額会員
受付中
詳細はこちら

■"ABEMANIA"FC2次先行 ※応募者年額会員もしくは月額会員/同行者は非会員可
2023年12月4日(月)18:00~
詳細はこちら

■Club BBL会員先行
2023年12月16日(土)12:00~

■一般予約受付
2023年12月23日(土)12:00~

▼公演に関するお問い合わせ
ビルボードライブ大阪:06-6342-7722
〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田2丁目2番22号 ハービスPLAZA ENT B2F

ビルボードライブ東京:03-3405-1133
〒107-0052 東京都港区赤坂9丁目7番4号 東京ミッドタウン ガーデンテラス4F

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