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INTERVIEW

Japanese

九十九

2018年09月号掲載

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Member:まめ子(Vo/Gt) 牧 孝奎(Gt) 酒井 健太郎(Ba) 野村 卓馬(Dr)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

-6曲目の「dischord」は先ほど心血を注いだ曲のひとつだとおっしゃっていましたが、今回の収録曲の中で一番生々しい曲だなと思いまして。この曲ってもしかして、バンド自身のことを歌ってますか?

まめ子:そうですね。もうこのとき全然歌詞を書けなかったんですけど、それでも書かなきゃいけないってなって、一番等身大の状態で生まれた歌詞なんです。でもそんなマイナスの意味で書いたわけでもなくて。今を生き急いでるというか、やりたいことがすごくあるのにそれが好きじゃなくなる、みたいな人はたぶん私だけじゃなくて、たくさんいると思うんですよ。

-失礼ですが、まめ子さんっておいくつですか?

まめ子:23歳ですね。

-そしたらちょうど今年、同い年の人たちが社会人になったタイミングだと思うんですけど、そういう人たちの存在から影響を受けたりしましたか?

まめ子:それはめちゃくちゃありますね。やっぱりちょうど学生から社会人になる歳だから友達とかも苦労してるんですよ。この曲を書いたときにそういうのを見てたので、(歌詞に)すごく出てると思います。だから自分の中で意識したのは、音楽をやってる人だけのことに偏らずに書けたらいいなということで。別にその問題を解決しようなんていう大それたことは思っていないんですけど、"大丈夫、みんなそんなもんだよ"、"ひとりじゃないよ"っていう気持ちで書きました。

-この歌詞を見て、お三方はどう思いましたか?

牧:歌い出しから"気に入らないよ"って言ってるので、すごくイライラしてるんだなぁと(笑)。

まめ子:はははは!

牧:だからライヴでやるときとかすごくいいんですよ。やっぱりロック・バンド、特に僕たちのように若いバンドにとっては、社会への反骨精神じゃないですけど、食らいついていく気持ちみたいなものがエネルギーになってて。そういうのを掻き立てられるというか、僕ら3人にもそりゃいろいろなことがあるので、そういうの全部ぶつけてやれ! みたいな感じで演奏してますね。

野村:あと、この曲は(セットリストの)真ん中ぐらいでやることが多いんですけど、それを経て最後に「Delight」とかをやったときに対比ができるというか、幅を広げることができるなぁと。そういう意味でもやっぱり欠かせない曲だなっていうふうに思いますね。

-そして7曲目の「カーテンコール」もかなり尖ってますね。

牧&酒井&野村:これはもうヤバい!

まめ子:あはははは!

酒井:この曲はもう完全にお客さんを置いていこうと思って作りましたね。"今何が起きた!?"っていう驚きを与えるために書いた曲なので、まさにそう思っていただけると嬉しいです(笑)。

まめ子:作曲家としての牧の性癖が一番出てるんじゃないかなと思う(笑)。

牧:やっぱりアルバムを作るにおいて、どんなコンセプトがあったとしても、それとは別に"こんな曲が1曲は欲しい"みたいなものが俺の中にはあるんですよ。それでやっぱり最後の曲ではすごくエクストリームなことをしたいみたいな感じの趣向があって。

酒井:この曲はまず覚えるのが大変だった。展開が結構あるし、"え、ここでブレイク入るの?"みたいなところがあって。

牧:まずはメンバーを驚かすところからですよね(笑)。

-歌詞で気になったのが「dischord」同様、"大人"というワードが出てくることで。おそらく奔放な自分たちとの対比として使用しているのかなと思いました。

まめ子:私、こういうエグめの曲の歌詞を書くときにすごく気をつけてるのが、ひとつの物語を大事にしていこうっていうことで。で、今回の場合はなんだろうなっていうのを考えながらこの曲を聴いてたときに、頭の中に浮かんだのが、バンドをやり始めた当時のことだったんですね。私は両親からもすごく心配されてて、ライヴハウスに通うのとかも反対されてたんですけど、それを押し切って、夜中にチャリ漕いでライヴハウスに行ったりしてたんですよ。それをなんか面白く書けたらいいな~っていう気持ちでした。

-"僕たちはいつまでも脱走者/終わらない鬼ごっこをしよう"というフレーズはまさにライヴハウスに向かってるところなんでしょうね。

まめ子:もう本当に家出少女の気持ちで。決められたもの、押しつけられたものから逃げていく気持ちというか、そういうのをファンタジー調に書けたらいいなっていう気持ちでした。

-なるほど。ここまで振り返っていただいたように、全体として様々なことに挑戦してる作品だと思うんですけど、だからこそ、自分たちの核を再認識する機会になったんじゃないかなと思いまして。そのあたりはいかがですか?

野村:俺たちはこうだ! みたいなものってひとつじゃない感じがして。

牧:核みたいなものについてはそんな複雑に考えてなくて。別に、この4人で演奏していれば九十九たり得るなぁっていう、それだけのことだと思います。この4人で演奏してることが九十九である理由だし、意味でもあるし。そう思ってやってますね。

まめ子:本当にそのとおりですね。やっぱり激しめのロックを求められることが多いとは思うんですけど、でもそれだけがやりたいことじゃないし、いろいろなことをやろうと決めてあえて挑戦してるわけでもなくて、本当にやりたいことを個々が持ち寄ってやってるっていう感じで。でも牧も言ってたように、それをこの4人で演奏することによって、嫌でも人間性というか、今までやってきたことが随所に絶対表れると思ってるんですよ。全員がそうだとは限らないんですけど、今の若い人って、"こういうジャンルをやってるから好き"みたいな感じで、ジャンル分けをしながら聴いてる人が多いと思うし、私たちもそういう聴き方をきっとされてて。でもそうじゃなくて、九十九自身を好きになってもらいたいっていう気持ちが今一番強いですね。

-いいですね。自信があるからこそ言える言葉だと思います。

まめ子:だからきっと"え~、こんな明るい曲聴きたくないし"とか、"もっと激しい曲もやってたのに......"みたいな声もあると思うんですけど、"うるせぇ!"って感じです(笑)。2回、3回って聴いてもらえれば絶対良さをわかってもらえると思うし、百歩譲って、今わからなくてもいい。ただ、そのCDをずっと持ってて、もうちょっと時を経てからまた聴いてみてほしいです。私たちがやりたいことはいつかわかってもらえるだろうし、そういう意味でずっと手元に置いていてほしいアルバムだなと思います。