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INTERVIEW

Japanese

キノコホテル

2017年06月号掲載

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Member:マリアンヌ東雲(歌と電気オルガン)

Interviewer:岡本 貴之

-今回はタイトルが"マリアンヌの~"ではなくなりましたね?

このアルバムは、キノコホテルの歴史の中でも今まで出してきた純粋なオリジナル・アルバムとは完全にコンセプトの異なるもので、作品としての存在意義がもともと違うというのは構想を練っているときからあったんです。新譜ではあるんですけど、新作かと言われると収録曲はほとんど過去の曲で、それを今の4人の最新の音に仕上げてはいるものの、いわゆる新曲が集められた作品とは違うので。そのあたりを混同していただきたくないという意思表示。これは10周年の記念碑のような作品ですので。これを出したあともリリースなり実演といった活動は今後も一応続いていく予定ですが、そういう流れの通過点、ひとつの総括としてこの作品があるわけです。"キノコホテルとはなんぞや"の答えをこの1枚に見いだしていただいて結構なんですが、『プレイガール大魔境』は『マリアンヌの~』シリーズに対して、パラレル・ワールドに存在するような作品なんですね。どう楽しんでいただくかはリスナーのみなさまが決めることですけど、私の意向としては進化し続けているキノコホテルの集大成として出すものと進行形の新作は別物なんです。シリーズのアルバムではなくて、これはこれで独立した特別な作品であることをわかっていただければと思います。

-かといって、ベスト盤というわけでもなくて。

キノコホテルにベスト盤なんていうものはいらないし、"そもそもベストって何が?"っていう話じゃないですか(笑)。ベスト盤なんてヒットメーカーが作っていればいいのであって。キノコホテルは"そんなものしゃらくせぇ"ってスタンスですよ。すべて新録で作ったことに意味があるんですね。これが過去のアルバムからの寄せ集めだったらそんな作品は必要ないんです。

-ベースのジュリエッタ霧島さんが加入(※2012年12月)して以降の曲を中心に選曲されているそうですが、以前の曲を彼女のベースで録り直したいという気持ちがあったのでしょうか。

そうですね。今の4人になったことでサウンドとしても進化して、バンドとしてのいい意味でのまとまりや広がりが出てきたところで。結局、今までの古い楽曲に私がなんとなく気持ち的に背を向けていたのは、やっぱりあくまでも昔録ったもので、今の自分の感性にそぐわないからやりたくないというシンプルな理由なんですけど。ただ懐メロをやるような雰囲気になるのが嫌だったので。そういった事情でここ数年ステージでも披露していなかったような楽曲も多いんですね。今回古い楽曲と向き合うにあたって、今なら試すことのできるアプローチやアレンジの方向性というのが、わりとスムーズに浮かんできたんです。今回はそういったものを思いつくままに、"キノコホテルかくあるべし"という枠から、まずいち早く自分が脱却して、過去の曲をアップデートさせながら、本来の姿に持っていくという作業になりました。初期の作品が好きな人たちにこそ聴いていただきたいという気持ちはありますね。

-ライヴでやっていたアレンジを入れたということではないんですね。

本当にライヴでもずっとやっていなかった曲が多くて。「還らざる海」(Track.7)なんかは 去年の暮れくらいからこのアレンジでやり出したんですけど。あとは選曲と同時進行で曲ごとのムードや方向性を決めていきました。

-Francoise Hardy「さよならを教えて」風なイントロが加えられてますね。

冒頭は盛大にオマージュしております(笑)。

-「悪魔なファズ」(Track.5)では「ジンギスカン」(Dschinghis Khan)をフィーチャーしていたりと、ユニークなアプローチをしていますね。

これはもう、ミュンヘン・ディスコですね(笑)。この曲は始めからこれ一択でした。

-「ジンギスカン」の訳詞に"もっとウォッカを持ってこい 飲んだら悪魔の腕の中"とあるんですよ。そこで悪魔が繋がっているなと。

あぁ、そんな深い分析ありがとうございます(笑)。訳詞にはまったく注目しなかったですね。"一晩に7人の子供を作り~" なんてくだりがあった気はしますけど。性豪ですからね、「ジンギスカン」(笑)。そういったマニアックな楽しみ方ができるのもキノコホテルならではかと。

-今作はもとの曲と聴き比べる楽しさもあると思うんですけど、例えば「愛人共犯世界」(Track.2)のベース・ラインは、以前は跳ねたフレーズでしたけど今回はシンプルですよね。

リズムが跳ねたままだと、他を変えてもあまり変わり映えしなかったので。シンプルなだけに持っていきどころを一番迷ったのが、実はこの曲なんです。思いつきでいろいろ試しましたよ。レゲエ風に、とか(笑)。あまりの無茶振りに3人ともキョトンとしていました。もう何をやってもおかしくなってしまったので、逆に一番シンプルにしてみようということで、イントロのギターのリフをその場でケメ(イザベル=ケメ鴨川)さんに指示して。そこからはすんなりいけましたね。