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INTERVIEW

Japanese

モーモールルギャバン

2017年06月号掲載

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Member:ゲイリー・ビッチェ(Dr/Vo) ユコ=カティ(Key/Vo/銅鑼) T-マルガリータ(Ba)

Interviewer:沖 さやこ

-願いと生き様がタイトルと楽曲になっているということですね。今回の楽曲たちの酔っぱらい度はかなり高くて。お酒を飲んでいると胸につかえていた気持ちがこぼれてきたりすると思うんですけど、そういう感覚になる曲たちばかりです。

ゲイリー:心の鎧は年々どんどん剥いでいかないとつらいな~って。脱いでも脱いでも心の鎧はあるし、そこをはぎ取っていくのは嫌いじゃないんです。やっぱりこういう仕事をしているからには、1日1回は感情を揺さぶらないといけないなと思っているので、そういうのが心の鎧をはぎ取っているのかもしれないですし、年々内容は赤裸々にはなっていきますよね。"あ、こういうことで俺は感動するんだな"というのは常に確認するようにはしています。

-メロディのキーがなかなか高い気がしました。「ガラスの三十代」(Track.2)のCメロなどなど。

ゲイリー:高い声が正しいトーンでちょっとずつ出せるようになってきて。歌に関してはまだまだ伸びしろがあると思っていて、自分の限界と常に向き合うメロディ・ラインを作っているから少し高くなっているかも。「ガラスの三十代」はAメロが低いのにCメロは高くて大変なんですよ。MONGOL800の「小さな恋のうた」(2001年リリースの2ndアルバム『MESSAGE』収録曲)くらい大変なんですよ! そういう曲はカラオケの練習曲にぴったりですね。最近は声を高く出したい欲求が強くて、よくX JAPANやスピッツを歌っています。

-自分に鞭を打つメロディ・ラインや練習だということですか。

ゲイリー:例えばアルカラ主催のイベントに出演するときも"打倒、稲村(太佑)!"と言っているんですけど、向こうの方が2万倍くらい歌上手いんですよ(笑)。そういうふうに自分を追い込んでいかないとサボっちゃうじゃないですか。でも、打倒はできないんですよね。例えばドラムなら、俺とピエール中野さん(凛として時雨)だとカラーが違いすぎて、"打倒ピエール中野!"と言ったところでまったく無意味なんです。一生懸命やっている人間は美しいけれど、音を聴いて残念だと思ったらもったいないなと思うんですよ。"ちゃんとドラムを叩いていて、ちゃんと歌えている"というレベルまではやりきりたい。少しずつそういうミュージシャンになれたらいいなぁ......とは思っているんですけど、なかなか至らない点が多くて。そういうふうになりたいな、と思いながら。

-『ヤンキーとKISS』はそこに向かっている最中が刻まれているアルバムということでしょうか。

ゲイリー:作品というものはそのときそのときの自分たちを切り取った......まさしく写真を綴じるアルバムと同じですよね。だから、いまのモーモールルギャバンをかたちとして残せたものにはなったかなと思いますけど、"まだまだこんなもんじゃないぜ!"という気持ちもあるし、最高の作品ができたし、こういう音楽人生が続けばいいな......とも思っているし、でも続かないこともわかっているし。そんなうまい話、ないじゃないですか(笑)。楽しくバタバタ生きていけたらラッキーだなくらいには思ってますけど。......でもね、偉い人が言ってたんですよ。"スペックが劣っていても、常に全力を出している奴には絶対に敵わない"って。だから常に全力で生きていけたらと思います。全力だからって何がどうなるわけでもないんですけど。

ユコ:......ん?

-ゲイリーさんは全力で生きるんですか、生きないんですか(笑)。

ゲイリー:全力な人間には敵わないんですよ。でも、全力だからなんとかなるだろう、と思っている人は全力じゃないんですよ。全力の人は"ここまでやったらOK"という発想で生きていないんですよね。まだ足りない、まだ足りない、まだ足りない......と生きられたらいいんですけど、なかなかそうもいかないなぁ。もう矛盾だらけなんですよ!

-表現者たるもの、悩みは尽きませんよね。『ヤンキーとKISS』も最後は"彷徨い続けて"というゲイリーさんのアカペラで終わっちゃうし(笑)。

ゲイリー:はい。めっちゃ彷徨ってます! 人は答えを欲しがるけど、答えなんてないじゃないですか。誰かが"これが答えだよ"と思ったものをありがたがって生きているだけなんですよ。それは答えではないから。

ユコ:いいね、永遠の旅人だね(笑)? だから旅を楽しみたいよね。楽しくなくなるとつらいから。

ゲイリー:そうそう。悩んでるからといって人生が楽しくないのかと言うと、人生はすげぇ楽しいんですよ。人生は楽しいんです、だけど迷ってるんです(笑)。

ユコ:「GIKKURI」(Track.4)も痛々しくならないように外国人みたいな発音にして(笑)。どの曲も歌詞のテーマがテーマだけに、音に悲壮感が漂わないように気をつけたんです。

-たしかに、「ロックミュージック」の"My life 難航中"などなど(笑)。

ゲイリー:俺、30代で人生がうまくいってる人いないと思うんですよ! こんな時代で人生が順調な10代、20代、30代、信用できないですもん(笑)。それは"難航中が普通だよ"というメッセージです!

-なるほど。「ガラスの三十代」の"最近ちょっと限界ですが悪くはないのさ"ということですね。

ゲイリー:人が生きるってそういうことだと思うんですよ。楽しくない人生にならなければいいなー......と祈りながら生きていますね。