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INTERVIEW

Japanese

memento森

2016年12月号掲載

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Member:宮地 慧(Vo) 榎本 欣司(Gt) 木原 潤(Ba) 新形 耕平(Dr)

Interviewer:秦 理絵

-話を聞いてると、6人から4人編成になって、サウンド的には試行錯誤したけれども、バンドが伝えたいもの、見せたい世界観はずっと一貫してますね。

木原:根幹はブレてないはずです。

宮地:フォーカスする部分はちょっと変わった感じはしますけどね。4人編成になって、サウンドがソリッドになったぶん、歌詞をもっと具体的にしようっていうのはありました。今までは壮大で抽象的な歌詞が多かったんですけど、レベル・ミュージックをやるうえで――とは言っても、僕らは普通に飯が食えて、家があるわけじゃないですか。そこで、いくら不平不満があると言っても最低限の生活ができてる。でも、それでも埋まらない何かがあったり、どうしようもない、やるせない気持ちがあったりする。もちろん世界で紛争が起きてることはたしかに痛ましいけども、僕らはどうやっても当事者にはなれないから。それよりも彼氏にフラれたとか、友達に裏切られたとか、就活がうまくいかないとか、そういう生活レベルの話に落とし込んだときに、この感覚は広義でいろいろな物事に通じると思ったんです。そこにやるせなさの入り口があるような感じがしたんですね。

-要するに、Bob Marleyとかがやっていたような権力に対するレベル・ミュージックではなくて、2016年に日本のバンドが鳴らすべきレベル・ミュージックというか。

宮地:そうですね。今の社会は本当にヤバいなと思ってるから。紛争もないし、どこから攻撃をされてるわけでもないのに、年間で万単位の自殺者がいる。自分で死んでいくのが当たり前になっているヤバさ。それは誰もが強い人でい続けないといけないっていう思いのせいだと思うんです。それをやめさせたい。汚さとか弱さをいったん認めた方がいいと思っていて。俺が憧れてるミュージシャンは、RAGE AGAINST THE MACHINEとか、日本だとBRAHMANとかTHA BLUE HERBなんですよ。彼らは強いし、ヒーローですよね。

木原:うん。

宮地:だけど、やっぱり時代が違うんです。多岐に渡っていろんな感性が認められてるなかで、僕は強くはい続けられなかった。弱い人間だっていうことを認めざるをえなかったので。じゃあ、もう無理なのかっていうと、そうじゃない。"弱いことを認めようぜ"って言えるヒーローになれるんじゃないかなっていうことなんです。俺はこんなに弱いぜ、ダメな人間だぜっていうのを認めながら、でもやる。先にやるから。これで俺がいけたら、みんなも一緒に上がっていこうぜっていう感じはあるかもしれないですね。

-自殺者の多さだとか、あとはTwitterで"死にたい"という言葉が溢れてるようなことは、今作ではTrack.4「sick hack」や「eS」に出てますよね。

宮地:そうですね。

木原:最近はみんな、本当にすぐ"死にたい"とか言いますから。

宮地:健全やなと思いますけどね。すぐに"死にたい"って言えるだけラッキーやなって。いつかはそのありがたみに気づこうねっていうところですね。俺らは"死にたい"って言えるぐらい好き勝手に生きられてるし、"不自由だ"って言えるぐらい自由ですから。

-そうですね。メンバーは宮地さんの持ってる世界観をどう見てます?

木原:正直、好き勝手やってもらってるところが多いんです。

榎本:俺らはそれをサウンド面で出せるようにしてますね。

木原:そこは分担されてるんです。信頼してるので。

宮地:面白いなと思うのが、今までは世界観というか、歌詞ありきだったんですけど、4人編成になってから、まず楽曲ありきなんですよね。自分のなかで素材みたいなものはあるんですけど、バンドの音を聴いてから言葉をハメていく、みたいな。「sick hack」も、Bメロに出てくる"ビル群眼下のゲリラ戦"とかはそうですね。誰かが持ってきもので楽曲ができあがったときに、言葉がハマッていくから。バンドだなと思います。

木原:自分が出したものに対して、みんながどんなふうに返してくるかが楽しいんです。

榎本:こうなるんだろうなっていうところの裏から全員、音を乗せてくるから。

新形:捻くれ者ばっかりですね。

-そういう意味では、Track.1の「0.02mm」とかやりたい放題じゃないですか?

宮地:そうですね。「0.02mm」は悪ふざけしながら作ってます。

新形:僕がイントロのノイズと(ドラムの)フレーズを持っていったんです。そしたら、こいつ(木原)がその上にタッピングのベースを入れてきたんだよね。

木原:セッションでザッとできて、"それいいやん!"ってなったら、どんどん悪ノリして、音を足して作っていくっていう作り方をすることが多いんですよ。

宮地:あとは「JACKPOT」(Track.6)も同じような作り方ですね。デジタル・ロックっぽい曲を、あんまりデジタルにしないで作りたいっていう無茶苦茶な要求から作ったんですよ。レコーディングのときに音素材を足してEDM感を出したりとか。音自体はロックっぽいことをやってるんですけどね。「UNO」(Track.3)も、イントロは勢いよく始まってるのに、ラップのところでビート・ダウンするんかい!? みたいな曲だし。

木原:昔、プログレっぽいバンドをやってたので、ぶっ込むのが好きなんですよね。

-「LIFE」(Track.5)は個人的に好きな曲で、90年代のナードなヒップホップというか。

宮地:お、嬉しいですね。最初はもっとスタイリッシュなイメージだったんですよ。ベース・ラインも冷たい感じで終わりたいなと思ってたんですけど。カッティング・ギターが乗っていくうちに、不穏なイメージになって。結局、ラップも乗せて、90~00年代のオールド・スタイルなヒップホップで人間賛歌っぽい曲になりましたね。