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INTERVIEW

Japanese

nano.RIPE

2016年11月号掲載

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Member:きみコ(Gt/Vo)

Interviewer:山口 智男

-苦悩しながら、絶対的な存在としての"ぼく"、"あたし"を求めているように感じました。

やっぱり、自分の理想に自分が追いつけていないという気持ちがあるんですよ。もともと、"nano.RIPEきみコ"っていうのは、"普通の人間きみコ"よりも強くあってほしくて、自分が憧れられる存在でいてほしいとずっと思っているんですけど、それが全然叶ってなかったり、メンバーにとってもまだまだ頼りないフロントマンだなと感じるところがあったりして。もっと自分の思い描く理想のきみコに近づきたいというのは、ここのところずっと思っていましたね。

-中でもTrack.11「イタチ」がすごくいいなって。

おっ、暗いですね。はははは。これ、夢に出てきそうですよね(笑)。

-"イタチ"ってタイトルの曲、他にないと思うんですよ。イタチという言葉を持ってくる閃きというかセンスがすごいな、いいなと思って。イタチというのはどんなところから?

あたしの大好きな作品で、"鉄コン筋クリート"という松本大洋さんのマンガがあるんですよ。そのマンガに出てくる絶対的な悪......悪なのかな、そういう存在でイタチというキャラクターがいるんです。"鉄コン筋クリート"は基本的にシロとクロのふたりが主人公なんですけど、はっきりとした答えがある作品ではないので、見る人によって捉え方が違うと思っていて。あたしの見解では、シロとクロは同じひとりの人間で、ひとりの人間の中の白い部分と黒い部分。そのふたつがあることでちゃんとバランスが取れて、ひとりの人間として成立しているということを、この作品は伝えたいんじゃないかなと勝手に思っているんです。でも、その中に黒よりもさらに黒いイタチっていうのが、白と黒のバランスを崩そうとする役目として出てくる。その子が悪い奴なんだけど、どこか"助けて"って言っているようにも見える。あたしには、そんなちょっと切ない感じに思えるんですよ。苦悩、葛藤している「イタチ」という曲は結局、"ぼくは答えがわからない"と悩んでいるんですけど、実はそういう状況に陥ったとき、答えを知っているのは自分の中の一番汚い自分なんじゃないかとふと思ったんです。神様や他人に助けを求めても解決しないことがたくさんある。それならいっそ自分の中の汚い自分に問い掛けてみたら、意外に自分のことは見えてくるんじゃないか。そんなことをイタチに教えてもらったような気がしたんです。

-オーケストラル・ポップなアレンジとバウンシーなリズムが心地いいTrack.13「ディア」で歌いかけている"きみ"は、ひょっとしたら自分の中の自分なんでしょうか?

いえ、これは"拝啓、誰々様"の"ディア"で、ファンに歌いかけているんです。ライヴをしながら、お客さんに歌いかける曲が全然ないなって思ったんですよ。それは普段から自分のことばかり歌っているからなんですけど(笑)、今回のアルバムは特に強い曲が揃ってしまったぶん、アルバム全体のバランスとして、そういう曲があった方がいいだろうと思いました。ファンがいなければ、自分もnano.RIPEも存在しないという気持ちは常にあるので、アルバムの中で1曲、"あたし"から聴いてくれる人に向けて歌いかける歌が欲しいと思って、お客さんに向けての手紙という意味で書きました。

-そうなんですか。てっきり自分に向けた曲なのかなと思いました。

なるほど。1年前のあたしだったらそうしていたかもしれないです。同じテーマで書いたとしても、昔の自分、もしくは未来の自分に向けて書いていたかもしれないですけど、今だからこそお客さんに手紙を書こうと思えたんですよ。

-もちろん全曲ではあると思うんですけど、他に注目してほしい曲はありますか?

インタビューでは「在処」(Track.10)、「イタチ」、「ディア」という印象の強い曲について訊かれることが多いんですけど、新録で言ったら、あたしは真ん中あたりにひっそりといる「アナザーエンド」(Track.6)という曲がすごく気に入っているんです。アルバム用に書いたわけではないんですけど、作りためた中から"これは絶対入れたい"と思って、早いタイミングで入れるって決めました。nano.RIPEの2ndシングル『フラッシュキーパー』(2010年リリース)のカップリングに「祈りうた」という曲が入っているんですけど、その曲は童話の"人魚姫"をテーマにしていて、その続き......続きではないんですけど、まさに"アナザーエンド"で。"人魚姫"の終わり方って、子供に読み聞かせるバージョンではライトかもしれないけど、実はかなり怖い。こんなに怖いお話なんだと思って「祈りうた」を書いたんですけど、それはそれで偏った見方かもしれないといまさら感じて。違うエンディング、もしくは違った角度から見たら、こういうふうに思えるんじゃないかって「アナザーエンド」を書いたら、すごく明るくなったんですよね。ありきたりかもしれないですけど、この曲を書いたとき、ひとつの物事もどこから見るかによって、こんなにも見え方が違うんだって改めて感じたんです。特に派手な曲でもないし、アルバムの中では他の曲が強いので目立つわけではないんですけど、あたしの中では結構大事な曲になりましたね。

-でも、実は「アナザーエンド」は曲も面白い感じで、基本にオールディーズっぽいロックンロールがありつつ、終盤では2ビートになるという、地味なようで、アレンジは意外に凝っているんですよね。

ギターもずっと弾いているわけではないんだけど、ときどき入ってくるフレーズがおいしかったりするんです。(ササキ)ジュン(Gt)がこれまであまりやらなかったようなことをやっていて。メロディの歌い回しもちょっとした変化なんですけど、"そのちょっとしたことを今までやらなかったよね"ってことが散りばめられている曲なんです。nano.RIPEっぽいんだけど、ちょっと新しい。

-Track.14「終末のローグ」も、ラストがこの曲で本当に良かったと思える曲になっていると思いました。

全曲出揃ってこの曲のアレンジが固まったとき、曲順はまだ考えてなかったんですけど、これは絶対最後だろうって思いました。