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INTERVIEW

Japanese

UNCHAIN

2016年03月号掲載

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Member:谷川 正憲(Vo/Gt) 佐藤 将文(Gt/Cho) 谷 浩彰(Ba/Cho) 吉田 昇吾(Dr)

Interviewer:石角 友香

-それはすごく大きな変化じゃないでしょうか。

谷川:なんか"力を抜く"ってことが、人生における極意なんじゃないかな?と思っていて。それぐらい力を抜くことは僕にとっては難しくて、でもそれがやっと力を抜ける環境を作ってステージに立って、曲も作れるようになってきたんですよ。その、"もっといい曲書いてよ"って言われるプレッシャーもうまいこと、受け流すというか(笑)。プレッシャーをかけられるんですけど、それをうまいこと力入れずに新しい曲書いたりっていうのも......できるようになってきたんじゃないかと。

-それにしても楽しいアルバムで、いちいち細かいところにニヤニヤするんですけど、若い人が聴いてどう思うのかも興味があります。

谷川:ほんと最近ね? さっきもありましたけどSuchmosとか、ああいうバンドも出てきてるんで、若い子たちにも受け入れてもらえるんじゃないかな?と期待してます。

-たしかに。まずアルバムはどのあたりの曲から出てきましたか?

谷川:1番最初に書いたのは「get down」(Track.2)ですね。去年1番かっこいいと思った曲が、Mark Ronsonの「Uptown Funk ft. Bruno Mars」(2015年リリースの『Uptown Special』収録)なんですけど、あれがかっこよすぎて。こんなかっこいいのできたらいいなと思ってこの曲を作りました。『10fold』は、最新のデジタル録音なんですけど、機材は大昔のアナログのコンプレッサーとか使って。その流れがあったのと、向こうのサウンドはバチバチにグリッドに合わせて、その上にナマの熱のある楽器の音を入れるみたいな、そういうハイブリッド感があるんですよね。だからリズムも機械的に録って。今っぽいなとも思いつつ、そういうテイストを意識したアルバムにしたいという狙いがあったので、一発目として「get down」を考えてみたという流れですね。

-軸はあるんだけど、いろんな方向の曲が聴けるというか。Track.3「a prayer」とかはサカナクション好きな人も好きだろうみたいな、でもそこに2016年らしさやUNCHAINらしさもあって。

谷川:2016年らしさありましたか? よかった。「a prayer」に関しては、これもロックっぽくないアプローチなんですけど、拍のアタマの音がほとんどないんですよ。ベースはほとんど弾いてない。

-これ、ナマですか? シンセ・ベースじゃないんですか?

谷川:(シンセ・ベースは)重ねてはいるんですけど、方法論的にはそれこそエレクトロニカっぽいベース・ラインをナマでやってみるっていうことですね。あと今回、今までで1番キーが高いかもしれないです(笑)。今までもキーが高いって言われてきましたけど、こんな裏声みたいな声を使うことは勇気もいりますし、なかなかできなかったんですよね。でも今回はやりきってますね。

-曲を聴いてアレンジ詰めていったりするわけじゃないですか。その話し合いとかも淡々とやるんですか?

谷川:(笑)作り方もいろいろあって、今まではスタジオで意見を言い合いながら、せーので作ることもしてたんですけど、今回はわりとデスクトップ上で完結させて、みんなに聴いてもらって作っていきましたね。もうかなり作り込んだ段階で聴いてもらったんですよ。あまり文句も言いようがないぐらいのところまで詰めてからみんなに渡しました。

-イメージを伝えたいから作り込んで持って行ったんですか?

谷川:そうですね。今回、セルフ・プロデュースということもあって、僕らで全部やらなきゃいけないから最初の提示は僕からやろうと思ってたんですよ。みんな結構忠実にやってくれましたよ(笑)。

佐藤:今まではセッションで作っていたんで、バンドの音が固まったあとで同期やシンセを加えていたんです。でも今回同期やシンセもメインの要素のひとつとして考えていたところもあって、4人でせーので作れないところではありました。

-各々、これは新しいことができたという手応えのある曲をお聞きしていいですか?

吉田:僕は「2 late 2 luv」(Track.10)ですね。ま、新しいことというか、この曲は僕的に曲の世界観と歌詞がすごくマッチしてると思っていて。アルバムの中でも1番好きですね。ドラムはアルバムの中では1番手数が多いと思うんですけど、"転がっていく"みたいなビートを目指して叩きました。

-普遍性もあるけど新しい。じゃあメイン・ソングライターの谷川さんは?

谷川:今回、曲ができた時点で曲名が決まってたんですよ。というのも、タイトルになっているのはサビの最初の言葉やその曲における重要な言葉であることが多いんですけど、曲を作るときにその言葉を出発地点に考えていったんです。今までそういうことがなくて、これまでは完全に曲先だったんですよ。今回、曲における重要な言葉をまず決めてから、曲と歌詞をそこから膨らませていったんですけど、そうすることでメッセージ性がシンプルになってわかりやすくなった実感があって、それに伴って楽曲もポップになる気がして。「stay here」(Track.11)って曲もそうだったんですけど、なんか世界が広がりやすくなって、曲作りがだいぶ......これまでは暗中模索しながらやってたのが、遠くに見える光がずっと僕の手を引っ張ってるみたいな感覚がありました。

-歌詞の書き方も以前とは変わったと。

谷川:昔は1曲に世界平和から自分の日常までを繋げて切り取って、しかも社会的に意味のあるものじゃないといけないみたいな考えがあったんですけど、やっぱり壮大すぎると言いたいことのポイントを絞れないんですよね。そういうことは最近考えていて、まず言いたいことを決めるっていう意識はありましたね。

-なるほど。谷さんはいかがですか?

谷:新しい挑戦ではないのかもしれないですけど、「baby baby」(Track.6)は間奏のひとつの展開を除いて全部ループなんですよ。でもそれを人力でやることによって、グルーヴの波も生まれてきて。でき上がって通して聴いてみると、この曲だけいいハネ方してる、飛び抜けたハネ方をしてるんですよね。スロー・テンポにマッチしたのかなと。今までこのテンポでこういうノリあんまりなかったなと思って。

佐藤:今まではそういうのを精神力でやっちゃってたところはあったんです。だからライヴでやるたびにテンポが上がっていって、最終的にギター・ロックになってしまったりとか。

-なるほど。佐藤さんはいかがですか?

佐藤:Track.4の「beautiful girl」ですね。この曲がこのアルバムの中で1番最初にバンドでアレンジして、『10fold』のツアーでも演奏したんですけど。上モノとしてのギター・プレイっていうよりは、リズム楽器としての意識がかなり強くなった典型的な曲ですね。

-最後に"with time"というタイトルに込められた思いを訊かせてください。

谷川:最初の話じゃないですけど、迷いながらも20年続けてきたという事実があって。やっぱりこの20年がなかったらできてなかったアルバムだなということで、"時とともにやってきた結果がこれだ!"ということを残せたなと。あと、どんなに孤独でも時間とは一緒にいるので、その時間とうまいこと友達になった人が勝ちなんじゃないかな?と。僕らは幸いにも20年間同じメンバーでやれてきたってことが、そういうことなんじゃないかと思っています。