Japanese
片平里菜
2016年02月号掲載
-では、「舟漕ぐ人」についてはどうですか。
今回のアルバムは東京に出てきてから書いた曲がほとんどなんですけど、この「舟漕ぐ人」は1番古いの時期の曲というか。福島の自分の部屋で、それこそ自由に大きな声で歌っていた時代の曲で(笑)。それでこういう水平線が見えるような曲になったんです。書いたのは、19か20歳のころだったかな。曲を作りながら、まずギターのコード進行と響きと、浮かんでくるメロディがすごく穏やかでキレイだったんですよね。そのイメージから、海の曲にしようと思ったんです。その大きな海で、舟を漕いでいる人がいるというか。普遍的な場所に佇んでいるちっぽけな人間が浮かんだんです。
-静かで繊細な曲だけれども、それでいて前を向いた曲でもあります。
あまり気にして書いてはいなかったんですけど、今歌うと、震災のことだったり、そこに住んでいる人たちを思い出す曲にもなるんです。人生の岐路に立たされているんですけど、前を向いて、残されたものたち同士で支え合って生きている姿とか。痛み、哀しみとか。そういうものが内包された曲で。でも、海っていう生命力に生かされてもいるという、すごくパワーがある曲なんです。
-当時はそこまでの思いで書いていたわけではなかったんですね。
そうです、ただ絵を描くようにして、曲を作っていたんです。
-無意識の思いが引き出すものがあったんでしょうね。
考えずに書いてできたものって、不思議ですよね。無意識なところで、出ているんだと思います。
-改めて今作は2枚目のアルバムということで、東京に出てきてから書いた曲も多いようですが、片平さん自身どんなアルバムにしたいかっていうのはあったんですか。
前作の『amazing sky』は、初期の曲や、10代のころを思い出して書いた曲を詰め込みたいと思っていたんです。それで、次のアルバムは、次のモードでやりたいことをやりたいなと。そのタイミングでまず「最高の仕打ち」という曲ができて。ずっと表現したいと思っていたことが形になったから、たくさんの人に聴いて欲しいなと思って、この曲を軸にアルバムを作りたいと思ってました。地元の福島で書いた曲は「舟漕ぐ人」と、「この空を上手に飛ぶには」もそうかな。すごく少ないんです。ほとんどが上京してから書いた曲なので、どこか人工的とまで言わないですけど......『amazing sky』のようなアイリッシュやカントリーの香りのするサウンドとはまた違ったニュアンスにはなった気がします。ジャケ写もそうですけど、コンクリートの冷たい感じがあって、そこに生きる切なさのようなものがある。でも、"自由"はテーマにしたいと思っていたんです。「この空を上手に飛ぶには」とか、Track.14「そんなふうに愛することができる?」とか、「最高の仕打ち」はアルバムのキーになっていると思うんですけど、自由をテーマに書いた曲で。『amazing sky』が、自然の中を飛ぶ鳥だとしたら、同じ鳥でも今回は雑多な街やコンクリートジャングルで生きてる鳥というか。そういうイメージがありますね。逞しさや解放感もあって。
-地元を離れて、東京で自分ひとりで生活するようになって。"自由だ!"って満喫してる感じもありますか。
すごい楽しいです(笑)。自分で全部選んで生活をして。好きな時間に寝て、お風呂に入ったり、すごいラクですよね(笑)。
-曲も、上京してからも順調にできているようですしね(笑)。人によっては、環境が変わることで書くことの難しさが生まれる場合もあるようなんですが、それはないみたいですね。
書く曲は、環境に応じて変わっていっているとも思いますけどね。最初に言っていたような、静かめな曲、フォーキーな四畳半フォーク的みたいな増えたりするし(笑)。環境に応じて、自分も変化をして、自然と曲調も変わっている感じはすごくしています。でも感じたことや思ったこと、面白いことを曲にしたいというのは変わらないので。曲作りの仕方はあまり変わっていないと思うんです。
-ちなみに、これは生みの苦しみを味わった曲などはありましたか。
つらい気持ちや、苦しさ、生きていて苦しいなっていう心境を越えて、ぽろっと出てくる曲が多かったりもするので。だから、曲を作るのが苦しいというよりは、曲で解放されているという感じはしているんです。その半面、シングル曲や、誰かの人生を応援するために書くとか、若い子に向けて書くとか、そういったテーマありきで書く方が、大変だったりもしましたね。それ以外は、自然に書いているものなので。
-そうやって毎回、曲に助けられているんですね。
そうですね、救済されてると思います。
-だからこそ、切ないけれどあたたかで、キラキラとした曲になるのかもしれませんね。
たぶん、そうなんだと思います。私が夢見がちなので(笑)。前向きなのが好きなんですよね。
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