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INTERVIEW

Japanese

バスクのスポーツ

2016年01月号掲載

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Member:能美 亮(Syn) 磯部 蒼(Ba)

Interviewer:山元 翔一

-すごいですね。それじゃあレコーディングって――

能美:大変でしたね。1日空けないといけないのでなんとか言い訳をして抜け出して......完全にひとつの工房の師匠に弟子入りするっていう形なので、出勤日数が決まっているわけでもなく。まあ......ある意味信頼関係というか(笑)。

-そういうストイックな環境で作られたっていうところは音にも表れているのかなと。

能美:僕が曲を作っているんですけど、新しい曲を作るときはキーボードにヘッドフォンをつけてそこから出た音をiPhoneに録音して、LINEでみんなにフレーズを送って(笑)。っていうことを夜こっそりやってました。

磯部:みんな働いてるし、彼は熱海にいるしでこの1年間集まれなかったので、バンドをやめないことが1番の目標というか。その中でなんとかレコーディングをして。

能美:我慢の1年という感じで。だから今作は本当に思い入れのある、全力の作品ですね。

-おふたりが美大に進学した動機やアートに触れたきっかけは何だったのでしょうか?

能美:もともと絵が好きだったんですけど、油絵をやりたいと思って高校時代は美術部で描いていました。好きな作家の展示を見たときに、ガラスとか工芸の魅力に惹かれて――工芸っていうのは、油絵みたいなアートよりもプロダクトに近いというかライフスタイルに1番密着しているものを生産することなんですけど。食事自体もそうですし、器が好きで、実際にいいものを買って使ってみるとすごく心地良くて生活の質が上がるように感じるんですよね。そこに楽しさを見出して工芸科に入ってガラスを専攻しました。

磯部:僕も絵が得意で、小中学生時代は漫画とか描いてなんとかクラスでのポジションを確立していました。父が美術をやっているのでその影響もあって美術大学の予備校に高一の春休みから通い始めて。粘土が得意だったので彫刻科に入学したんですけど、高木正勝さんとかRhizomatiksをやってる真鍋大度さんとか映像と音楽を一緒にやっている人に興味を持って映像学科に3年のときに転科したんです。メディアアートや現代音楽の勉強をしました。

-なるほど。能美さんがおっしゃったことは、普通のバンドマンにない視点で面白いなと思いました。バスクのスポーツの音楽の根底には、そういう芸術やアートに対するきちんとした視座がありそうですね。

能美:芸術やアートをやっていると自分の作品を発表する講評という場があるんですよ。そういう場ではあまり言葉では説明しない方がいいと僕は思っていて。アートピースにしろ工芸作品にしろ、作品から伝わったものでお互い理解するっていう部分が大きくて、そこで言葉巧みに相手に理解させようとしても理解されないことが往々にしてあって――作品って説明的になったらいけないんですよね。音楽もそうかと思うんですよ。歌で情景を説明するよりは音で直接伝わった方がいいと思うからインストをやっているのかなと。音楽の作り方も、僕のアートに対する向き合い方に似ているかなと思いますね。

-すごく納得できます。世の中には説明的すぎる音楽も少なくないですよね。

能美:まあ、そういう音楽を否定するもりはなくて。僕らのアウトプットが、音で直接伝えるタイプのものだっていうだけですね。それを歌で伝えることが間違ったことだとは思いませんし。

磯部:実際、歌の入った楽曲(Track.2「Gernikako arbola」)もありますし。

能美:あの歌も歌詞に意味はなくて、歌を楽器として使って声で出す音の面白さを表現したくて入れただけなんです。歌で説明するっていう意味で入れたわけではないんです。

-美術大学に通っていたからこそ、いろいろな選択肢があったと思うんですがなぜ音楽という表現手段をとったのでしょうか。

磯部:単純に僕ら自身がバンドでやっていることに可能性を感じたというか。新しい曲ができるたびに次はもっといい曲を作りたいってみんなが共通して思っていたのが大きいと思います。

能美:表現方法はいっぱいあると思うんですけど、音楽を選んだからって他の表現手段をとることができないとは思っていないんですよ、今もガラス工芸をやっていますし。"表現者としての音楽"をやっているだけで、芸術やアートを通して何かをやるってなったときに音楽をひとつの手段としてやっているだけなんですよね。

-これまでの話を聞いてもバスクのスポーツというバンドの根底にあるものは、アートに対する表現欲なのかなと感じていて。

磯部:もちろんアートに対する表現欲は根底にあるかもしれないですけど。今も昔も面白いバンドはいっぱいいる中で、僕たち4人だからこそできることをしたいと思っていますね。

能美:僕はプログレが好きで曲を作ってきて、今の表現方法が他のバンドにはないと思ったんですよ。このバンドなら他のバンドにできないことができるかなと思ったんです。要は"ロック・バンドをやろう"っていうような単純な話ではなくて。可能性としてバンドというフォーマットで音楽をやろうと思ったんです。単純に面白いことをしたいっていうざっくりした話になるんですけど、いろんなプログレを聴いてきて、ここはもっとこうしたらよかったんじゃないかと思うこともあって。僕だったらもっといいものができると思ったんですよ。曲に関しては僕が全部考えてくるんですけど、ドラムやベース、ギターが僕にできないことを加えてくれることで広がりが生まれて曲が作り上がるっていうことが面白くて。そうやってバンドやってて、僕が昔憧れていた、雲の上の存在だと思っていたプログレッシヴ・ロックのアーティストとも戦えるような曲が作れると思ったんですよね。