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INTERVIEW

Japanese

クウチュウ戦

2016年01月号掲載

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Member:リヨ(Vo/Gt)

Interviewer:山元 翔一

-なるほど。次回作への布石になっているということでいいんでしょうか? 今後ロック色を薄めていくというような方向性に進むというわけではないんですよね。

そうですね、でもロック色は薄めないです。これはあえて打ち込みで作っているんです。次回作では今までにない新しい感じは打ち出せるのかなと思いますね。

-では最後のTrack.6「エンドレスサマー」ですが、最高の名曲といえる曲が誕生しましたね。山下達郎さんや坂本慎太郎さん、それこそ井上陽水さんといった歴史に名前を残す偉大な作曲家の功績に一歩近づくとんでもない出来栄えだなと思います。

ありがとうございます。これは、夏がくるっていう6月くらい――随分前に失恋して、楽しかった夏が頭をよぎるというか......。

-そういう過去に思いを馳せる感覚ってすごくロマンチックだと思うんですよね。過去を取り戻すことはどうやっても叶わないじゃないですか。そういう思いの底にある感情をリヨさんは表現しようとしているのかなと思ったんですね。

取り戻したいっていうよりは、それこそ"エンドレス"なんですよ。取り戻す必要性もないんですよ。思い出の中にあるっていう感覚じゃなくて、宇宙規模で見たらエンドレスなはずなんです。時系列で考えたら終わっているけど、エモーショナルな目線で見たら終わったことなんて何ひとつないと思うんですよね。過去・現在・未来っていう時系列で区切るから――左脳的に考えると、過ぎ去った時間は過去で終わっているものっていう見方になるんですけど、右脳的に考えると思い出とか楽しかった時間はエンドレスなんです。すごくスピリチュアルな話になっちゃいますけどね、これを言い出すと。......俺が死んでも終わらないし、誰もが俺を覚えていない時代が来てもエンドレスなんです。

-......言葉にはしがたい感覚ですね。でも音楽でそれはきちんと伝わってくるんですよね。

言葉で説明できないからこうなっているんじゃないですかね。言葉で説明できないことだからこそ聴いてくれた人がいろいろ感じてくださるというか。

-気が早いもしますけど、2016年はこれよりいい曲は出てこないような気さえしてしまいます。エンドレスな話とはいえ、この曲は失われてしまったものにある美しさを描いているような気もしたんですよね。

説明できないゾーンに入ってしまうんですけど、1サビで"昔話"って歌っているのが2サビで"おとぎ話"ってなってて、最後は"ふざけ話"になっているんですよ。最終的にここがミソなのかと思いますね。もちろん"過去の匂い"とか"過去の味"っていう歌詞もあるので、そういう意味合いもありますけど――まあでも失われたものっていうのはひとつのピースとしてはありますね。タイトル通り終わっていない話ではありますけど、そこは聴く人の自由だと思うので。

-うんうん。この曲って、例えば深夜の高速道路を走るトラックの運転手がラジオから流れてきたこの曲に耳を傾けて......みたいな、普段CDショップやライヴハウスに足を運ばないような普通の人の心にも届く曲だと思うんですよね。ラジオだから具体的に歌っている内容まではわからないと思うんですけど、すごくじーんとくるというか、曲の持つ力で人の心に触れるというか。そういうエネルギーがあると思います。

そうだと嬉しいですね。

-ひと通り作品について訊いてきましたが、改めてクウチュウ戦はどのシーンにもはまらないバンドだなと感じるんですよ。とはいえ、ワッツーシゾンビみたいなアンダーグラウンドなバンドから、カラスは真っ白みたいなポップなバンドまでと共演できてしまうんですよね。

まあ、変なバンドだなと思いますよね。対バンによってセットリストを組み替えて見せ方も変えられるし、特に悲観的には捉えていないですね。逆に一緒になったらつまんないし、かといって異質すぎてもダメだし。いい感じだと思います。

-あと、クウチュウ戦はどことなく過小評価されているような気がしてて。ご自身ではそのように感じることはありますか?

いや......そんなこと思わないですね。今のところ世に出ているのが『コンパクト』だけなので、まあ『Sukoshi Fushigi』が出て、今と変わらなかったらそう思いますけどね。前作は実験作だったし、『プログレ』はもうなかったことになっていますし(笑)。相応なポジションにいるんじゃないかなとは思います。たまに『プログレ』の曲もライヴでやりますけど、スタート地点はあくまで『コンパクト』なので。

-わかりました。これは完全に個人的な願いになってしまうんですけど、クウチュウ戦には"FUJI ROCK FESTIVAL"のWHITE STAGEに立って欲しいんですよね。

そういう具体的な目標みたいなものはないですけどね(笑)。まあ、でもフジロックのWHITE STAGEに立てるよう頑張ります。

-楽しみにしています。ちなみに前作では、親御さんの評価をすごく気にしていらっしゃいましたが、今作についてはいかがでしたか?

『Sukoshi Fushigi』を聴かせたら「雨模様です」が1番いいって言ってくれましたね。

-ああ、でもそれはちょっと複雑ですね(笑)。

カオルが作った曲だけど、まあいいかって。あ、でもすごいエモいこと言ってました。父親に「光線」を聴かせたら"これは当たるぞ!"って(笑)。父は井上陽水が好きで、プログレとかは聴かないんですけどね。その言葉は嬉しかったですね。