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INTERVIEW

Japanese

ARTIFACT OF INSTANT

2014年10月号掲載

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Member:飯干 達郎(Vo/Gt) 井上 峻(Gt) 早衣子(Ba/Vo) キモト リョウスケ(Dr)

Interviewer:天野 史彬

-この『モラトリアム』という作品には、全体を通して"別れ"や"喪失感"、"後悔"が大きなモチーフになっているように感じました。実際に、本作を作るうえでこのような感情は重要なものとしてありましたか? あるとすれば、それは具体的な体験をもとにしたものでしょうか?

飯干:本作に限らず、もともと"別れ"や"喪失"をモチーフにすることが多いのです。ですが、後ろ向きな意味だけではなく、それが新しい始まりであったり、苦境を乗り切ろうとする姿勢だったりに人間臭さを感じるので、よくモチーフにします。なので、どちらかというと前向きなイメージで書いてます。僕が歌詞にすることはすべて実体験をもとにしてます。

-Track.2「追伸」に"今もこの歌はどこに向かうことも出来ずに/死に場所を探している"というラインがありますよね。ここがとても印象的で、AOIというバンドにとっての音楽の存在意義の在り処を示す言葉なのではないかと思いました。"歌の死に場所を探す"とは、どのような想いを込めて書いた言葉だったのでしょうか?

飯干:例えば、僕と"誰か"のふたりだけしか知らない出来事があったとして、それを共有できる"誰か"がいなくなった場合、その出来事を知るのが僕しかいなくなる訳で。自分以外の誰かと共有できなくなるということは、その記憶は死ぬように思えて。記憶や経験をもとに書いているので、それを誰かと共有して、せめて僕の中だけでも留めていたいと思って書きました。

-Track.3「極楽鳥」やTrack.4「ナナ」といった楽曲からは、前の前の質問で書いた"喪失感"や"後悔"を抱えながらも、失った誰かの幸せを遠くで願いながら、前を向こうとするような力強さを感じました。音楽を作り、鳴らすことは、自分たち自身が前を向くきっかけになりますか? また、この作品を作ることで、何か今まで抱えてきたものに決着をつけることができた部分はありますか?

飯干:はい。自分本位ではありますが、曲にして歌うことで後悔や喪失を昇華させている部分はあります。ですが、同じような経験をしたり、うなだれてる人の支えというか、近くにいれたらなという思いもあります。

井上:言葉を発することが苦手で、伝えきれてるかどうかはわかりませんが、自分の中で、大事な表現方法になってます。形にすることで、反応してくれる人がいると、もっと前へ進みたいという気持ちが強くなってます。

-「極楽鳥」で歌われる"己を嘆くことで己を守る極楽鳥。"とは、自分自身のことでしょうか? だとすれば、自分たちは悲しみを歌うことで、自分自身を守っている部分があると思いますか?

飯干:"己を嘆くことで己を守る極楽鳥。"に続く歌詞で"誰しもの中で嘲囀る。"と歌っているので、万人誰しもにある弱さを指したつもりです。なので自分たちも含んでいます。"気づいて欲しい""知ってほしい"という思いは誰にでもあると考えています。

-"その熱を伝えて。"(「0℃」)、"迷わずそこにある温もりを離さないで"(「ナナ」)、"触れて見えるものが僕の総てだよ。"(「モラトリアム」)――これらの歌詞から、この『モラトリアム』という作品は、過去や記憶に捉われながらも、それでも"今、目に見えるもの、今、触れることが出来るものの実感、そこにある喜びを感じたいんだ"という想いが込められているように感じました。みなさんの中には、こうした現実に触れることのできるものこそを大切にしたいという気持ちがあるのでしょうか?

飯干:そういう気持ちはあります。SNSをはじめネットが絶えず進化していく中であるからこそ、温度感のあるものを大事にしたいという気持ちは強いです。日常でいうとひとつひとつの会話であったり、バンド活動でいうとライヴであったり。情報は際限なく溢れるし、手に収まりきらないならば、触れて見えるものだけで充分だ!っていう。

-Track.6「葛藤と未来展望」には"何処にも吐き出せなかった悲哀を書き溜めたこの歌も否定するのなら、それでいい"というラインがありますね。このラインを聴くと、普段は言葉にできない、あるいはしたくないことだけど、音楽に乗せることで何とか伝えられる想いというものがみなさんの中にあるのではないかと思ったのですが、そういう想いは、みなさんの中にあると思いますか? あるとしたら、何故、音楽でなら伝えられるのだと思いますか?

飯干:例えば、文字にしてみればそれはストレートに伝わるのですが、音にすると伝わりすぎず、聴いた人のそれぞれの解釈でいい、そのラフさが好きです。小心者なんです(笑)。