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INTERVIEW

Japanese

Saunash

2014年07月号掲載

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Member:佐藤 啓 (Vo/Ba) 杉山 こうじ (Gt/Vo) 常木 貴文 (Dr)

Interviewer:天野 史彬

-今話してもらったことにも繋がると思うんですけど、本作の歌詞の多くに"YOU"――つまり"君"っていう言葉が出てくるんですけど、ほとんどすべての詞において、"君"は"ぼく"よりも輝いている存在として描かれてますよね。たとえばTrack.10「Mid On A Link」の"君は勇敢で、優しく、つよい人/だめだとわかってるのに頼ってしまう(和訳)"っていうライン。この常に"君"を見上げている感覚はどうして生まれるんだと思いますか?

佐藤:まぁ、別に僕の隣には僕より成績がよくてモテるやつが常にいるわけじゃないんですけど......結局、誰かに憧れてる部分っていうのは常にあって。その辺が滲み出ちゃう......としか言えないなぁ(笑)。

常木:"YOU"って、女性のことじゃないの?

佐藤:女性の場合と男性の場合があります。

-常に誰かに憧れているっていうのも、自分の中の先天的な要素だと思います?

佐藤:そうだと思います。やっぱり憧れてバンドを始めたし、何をやるにも常に上を見てるものだし、1番はいいやって言いながらも、別に負けず嫌いな部分がないわけじゃないし......でもきっと、憧れみたいなものはずっとまとわりついてきてるんだろうなって思います。

-なるほど。ヒーローにはなれないんだっていう気持ちや"君"を常に見上げてしまう感覚って、それこそエモと呼ばれるバンドに通じる世界観だと思うんですよ。でも、Saunashの音楽は一介のエモ・バンドとは違うなって思っていて。それって何故だろうって考えたら、Saunashの音楽には"ひがみ"や"嘆き"がないんですよね。理想に比べて現実を見てるけど、その中で凛としてるというか。ヒーローにはなれないけど、でも黙ってないし、言いたいことはあるぞっていうスタンスを貫いてると思うんですよ。これって自分たちの中に強くあるものだと思いますか?

佐藤:あぁ......ありそう。

常木:(笑)全員、偉そうなことは言いたくないんだよね。でも、当然思ってることはあるわけで。確かに、ひがみっぽくないよね。なんでだろう......カラッとしてるよね(笑)。あの人はあの人、自分は自分っていうスタンスがあるから、俺は俺でやりたいことをやろうっていう気楽さというか、開き直り感が3人それぞれにあるんじゃないかなぁ。

佐藤:僕は映画とか観てもそうなんですけど、たとえ映画でも、"いや、そんな暗い部分見たくねえし!"って思うタイプなんですよ。凄く重いオチだったりすると、"そんなオチないでしょうよ!"って思う。重いオチは嫌なんです。だから、自分のバンドを誰かが聴いて落ち込むような曲は作りたくないんですよね。もちろん暗い曲が必要なのもわかるんですよ。でも、それは他のバンドさんにどうぞっていう感じで。自分たちの音楽を聴いてもらってる時ぐらいハッピーでいてほしいっていうか。

杉山:基本的にマイナー・キーの曲がないしね。だからサウンドから言っても、明るくカラッと聴こえると思うんです。今回のアルバムでも、マイナー志向の曲って「Mid On A Link」くらいしかないんですよね。この曲を書くにしてもなかなか上手くいかなくて。ちょっとドロドロした部分が出ちゃうと、3人とも拒否反応を示しちゃったりするんですよ。ダサい!ってなっちゃうんですよね。もしかしたら世間一般から見たら別にダサくないかもしれないんですけど、僕らはどうしてもダサいと思っちゃう。だから自動的にカラっとするのかもしれないですね。

佐藤:気持ち悪いバンドなぁ(笑)。

-(笑)音楽の効能みたいなものを凄く考えてるバンドなのかなって思うんですよ。それこそさっきの、自分たちの曲が流れて自転車を漕ぐスピードが上がればいいっていう話もそうですけど、ちょっとしたことでもいいから人の気持ちを推し進める力としての音楽でありたいっていう思いがあるんじゃないですか?

佐藤:いやぁ~、CD出して聴いてもらうからにはそうなってもらわないと何の価値もないですから。ちょっとした変化を与えたいんですよね。

杉山:「A Little New World」の"A Little"ってそういうことだもんね。

佐藤:そうそうそう。"ちょっと"違うっていう。その辺はバンド感的なところもあるんですけど、たとえばライヴをやってても、"別世界に連れて行きますよ!"みたいなバンドっているじゃないですか。凄いなって思うんですよ。でも僕らはそうじゃないので。ただ、決していつもと同じ世界ではなくて、ほんとに"ちょっとだけ"皆さんに違う風景や感覚を与えられたらいいなって感じでやってる。「A Little New World」は、ほんとにその気持ちを書いてみようかなって思って書きましたね。

-確かに、「A Little New World」は、アルバムの中で最もバンドのステートメントが強く出ている曲だと思いました。......このアルバムまで4年かかりましたけど、次はもっと早く聴けそうですか?

3人:それはわかんないです(笑)。

杉山:時間かけるクセができちゃったから(笑)。でも、このアルバムのレコーディング終わった瞬間に次の作品作りたいなって思いましたね。もちろんこの作品に対する手応えはあるんですけど、次もあるなって思います。