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INTERVIEW

Japanese

Saunash

2014年07月号掲載

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Member:佐藤 啓 (Vo/Ba) 杉山 こうじ (Gt/Vo) 常木 貴文 (Dr)

Interviewer:天野 史彬

-なるほど。じゃあそうした試行錯誤の制作期間に手に入れたものの中で、新しい要素として今回の『Bounds Away』に大きく影響してる部分っていうと、どういうものがありますか?

常木:佐藤くんのヴォーカルがメインになったのは大きかったですね。前は杉山くんが歌う曲もあったんですけど......なんでそうなったんだっけ?

杉山:それを説明すると、ちょっと面倒くさくなりますけど(笑)。

-なんでそうなったんですか?

杉山:(笑)えーっと......一応今まではTHE BEATLESスタイルというか、僕と佐藤で、曲を作った方が歌ってたんですね。でも前回の作品からバンドのイメージを変えていきたいっていうのがあったので、もっとわかりやすくする方向性として、ツイン・ヴォーカルじゃなくてヴォーカリストをひとりにしたほうがいいんじゃないかっていうのがあって。それは実は、前から周りに言われていたことでもあるんですよ。別に、だからそうしようと思ったわけではないんですけど、でも、このアルバムの3曲目に入ってる「Crossroads」ができた時に、この曲を周りの人に聴かせて、いいヴォーカルのほうを選んでもらおうと思ったんです。で、僕が歌ってる方と彼(佐藤)が歌ってる方の両方のデモを作って、周りの人に判断してもらって。その結果、佐藤の方が合うっていう話になった時に、じゃあこの方向性で行った方がわかりやすいなって思ったんですよね。僕個人的にも、プレイヤーとして歌いたかったっていうのはあるんですけど、声自体は佐藤のほうが好きだったので、いい方向に転がっていくんじゃないかって。

-杉山さんと常木さんから見て、佐藤さんのヴォーカルの魅力ってどこにあると思います?

杉山:うわー、そんなこと誰にも訊かれたことないな(笑)。......やっぱ声ですね。前に披露宴で、このアルバムに入ってる「Happiness」っていう曲を演ったことがあるんですよ。その時に客席から"彼の声は卑怯だよ"っていう声が上がって。好きな人は多いんじゃないかと思いますね(笑)。

常木:似てる人のいない声だよね。あと、素直さが出てる感じがしますね。カッコつけてないというか。素で出てくる声の音色がいい。

佐藤:......気持ち悪いっすねえ。

-(笑)でも、素直な歌声っていうのは凄く感じるし、素直さって、歌詞の面でも出ている部分だと思うんですよね。歌詞は佐藤さんが書かれてるんですか?

杉山:大体は佐藤が書いてて、たまに僕が書いてますね。今作だと、「Crossroads」と「Happiness」は完全に僕が書いて、「Orange Cloud」は一部僕が書いてるぐらいで、あとは全部佐藤ですね。

-歌詞を読んでいて気になったのは、"ヒーローになれない感覚"みたいなものが強く歌われてる気がしたんです。Track.5「Light Me Up」の"いつも君のスーパーマンでいたいんだけど/ぼくにも辛いときがある(和訳)"っていうラインが象徴的ですけど、他にもTrack2.「A Little New World」の"それこそヘレン・ケラーのような人になれたらなんて思っていたけれど/理想と現実は違っていた(和訳)"っていうライン。自分はヒーローになれないんだっていう、この理想よりも現実を見ていくような感覚って、どうして生まれるんだと思いますか?

佐藤:なんでですかね?......僕個人としては、バンドをやってること自体、その辺にいそうな兄ちゃんが、ちょっとだけカッコいいことをやってる、みたいなイメージなんですよ。ライヴも、主役は自分たちじゃなくて観てくれてる人で。聴いてくれる人、観てくれる人が"ちょっと頑張ろう"って思ってくれるような、そういう感覚が欲しいんですよね。たとえばウォークマンで音源を聴きながらチャリ乗ってて、僕らの曲がかかったらちょっと漕ぐスピードが上がる、みたいな。そういうレベルでいいんですけど、あくまで聴いてくれてる人が主役で、僕らはBGMでいいんです。その感覚が歌詞にも滲み出てるのかもしれないですね。"ザ・ヒーロー!"みたいなものに、憧れはないんです。

-皆さんのルーツにある90年代パンクやグランジ、あるいはそこから地続きに生まれたエモの何が若者たちを魅了したかって、やっぱりその部分が凄く大きいと思うんですよ。派手で煌びやかなロック・スターではなく、その辺の兄ちゃんがステージ上で自分たちと同じ気持ちを歌ってるっていう。佐藤さんは、ご自身がそういったパンクやエモを聴いてきたから、ヒーロー的なものに憧れなくなったんだと思いますか? それとも、もっと根本的に、自分自身の人間性からそうなっていったんだと思いますか?

佐藤:あぁでも、自分はずっと1番になれないなっていう妙な感覚があったんですよね。なれないというか......"別にいいや"みたいな。別の人にどうぞって譲る感じというか。それこそ、さっき日本語詞に結局しなかったって話もしましたけど、同年代でやってたバンドがどんどんと日本語詞になっていったりもしてるんですけど、その時もなんというか、じゃあ日本語詞は他の方たちでどうぞ、みたいな。それこそHi-STANDARDは僕にとってはヒーローだったし、みんなはバンドをやってる時"俺は世界一カッコいい!"みたいな気持ちでやってるんだろうけど、僕はそうなり切れないんですよね。そういう部分が歌詞に滲み出ちゃってるんですかね(笑)。全然意識してなかったんですけど。