Japanese
Any
2010年12月号掲載
Member:工藤 成永(Vo & Gt) 大森 慎也(Ba) 高橋 武(Dr)
Interviewer:沖 さやこ
-このアルバムの歌詞は、歌詞というよりも“手紙”という印象を受けたんです。手紙って相手がいるから書けるものだと思うんですよね。人に伝えるっていう思いを非常に強く感じました。
工藤:今までの作品と違うなぁと感じるのは……より相手を理解しようっていうところだと思います。自分のエゴだったりすることも多いじゃないですか。相手を本当に理解してると思っていても、理解出来てなかったりするし。言葉は一言一言凄く考えましたね。特に「セレナーデ」の最後の言葉、“君が僕だけにくれたもの/それ以上をあげるよ”。ずっとこの言葉を言っていいんだろうか? って凄く考えてて。それはメンバーの前でも言ったんですけど。実際自分が何か人に影響力があるだろうかと言われればそれは自信が無くて。寧ろ、周りによって自分が作られてるなって印象が強かったんで。自分が何か人にしてあげられることとか、あげられるものよりも、人にもらって返したいっていう気持ちが凄く強かったんで。だから“それ以上をあげる”っていうのは驕りなんじゃないか? か。こんなこと言っていいのかな? って悩んだんですけど。それでも“渡したい”っていう気持ちの方が強いなって最終的には感じて。もらったものを相手が本当に喜んでくれるかどうかは分かんないけど、“渡したい”っていう気持ちのほうが大事かなって思って。
-ようやく言えた言葉なんですね。
工藤:ひとつひとつのリアルタイムで感じた言葉は乗せていった感じなんで、ノートぐちゃぐちゃになってて自分でも何書いてあるか分かんない。全然歌詞に関係ない、お腹痛いとか(笑)、そういうこと書いてたりとか。正直な気持ちを吐露していくことによって、自分の中でもキッカケをつかめた。だから、方向性があってその方向に向かいたいっていうよりも、今自分が感じたことっていうのをひとつひとつノートにしたためていった時に、曲が出来てったって感じですね。
-「~したい」っていうフレーズが凄く多いのも印象的でした。
工藤:あー、多いですね。今回は“変わりたい”っていうところがずっとあったんで。俺はこうしたいんだ! っていうのが今までは言葉にも歌詞にも出て来なかったんですね。以前からAnyの音楽を楽しみにしてくれてる人にも、初めてAnyを聴く人にも届くメッセージの強いものを作りたいと思ったんですよね。今まで表現したいなって思ってたことが、ようやくひとつの形になったと感じてます。
高橋:工藤くんは歌詞の言葉を、一言一言覚悟を決めて選んでるし、覚悟を決めて歌ってると思うんです。その言葉に対して真剣に向き合ってるっていうのが伝わって来たんで、それに対しては僕らも演奏一音一音でそれに負けないような演奏をしたいし。だから……今回アルバム作るにあたっては、工藤くんに感化された部分が凄く大きいかなって。
大森:今回の詞は、工藤くんの本心を本気でぶつけられたような感じがして。人間臭さとか、そういうものをしっかり大事にしなきゃいけないなって演奏も意識しました。
-そんな覚悟と感化の詰まったこのアルバムですが、『宿り木』というタイトルの由来は何でしょうか?
工藤:もともと「宿り木」という曲があって。……僕がアコギを借りてるおじさんがいて。その人が病気で亡くなっちゃったんですよ、1年前に。さっき僕が言った“ちゃんと生きたい”って思った理由はそこにあって。人の死っていうものに対して、もっと向き合っていかなきゃいけないなって思ったんです。そんなに人の死に関して……感じられる機会っていうのもなかったし、全然意識もしてなかったし。だからそのことによって、自分の中にハッとするものがあって。で、たまたまこの「宿り木」をおじさんの前で歌ったんですよね、亡くなった時に。で、そのおじさんの治療の薬がドイツ新薬で、原材料がヤドリギだったんですよね。本当に偶然で……呼ばれた気がしたんですよ。その言葉もそうだし、このタイミングで歌う意味があるんだろうなって。だからもともとその曲のタイトルにしてたものを今このタイミングで使うのがいいんじゃないかなって引っ張って来て。自分達がやってきたことが、ひとつの形としてちゃんと“宿り木”っていう言葉にもちゃんと閉じ込めることが出来たんで。なんか、降りたなっていう感じはしますよね。
-そうですね、運命であり必然だと思います。アルバム制作も勿論ですが、メジャー・デビュー、精力的な作品リリースと、2010年は非常に動きのある目まぐるしい1年のように思いますけれど。
工藤:変化の年だったなって思いましたね。2010っていう、10という節目もあったし。来年から11になるから、また一歩成長出来るようにしたいなって思うのと同時に、僕は僕自身がもっと成長したいなと思うんですよね。Anyっていうものは僕が曲を書いて歌詞を書いているっていうところが……どうしたっていい方向にも悪い方向にも転んでくることだと思うんですよ。僕自身が変わっていくことで、自分が成長を遂げることで、このバンドの魅力っていうのももっともっと出てくると思うし。来年はもっと、僕自身が魅力のある人間になっていけたらなって思います。
-来年は念願の初ワンマンが開催されますね。初って意外ですけど。
工藤:今まで何故かやってこなかった(笑)。2本あるんで頑張ります。
高橋:ソールドアウトさせたいです!ワンマンやったら僕達が考える事がまた生まれると思うんで、来年は来年で一歩ずつでも確実に進んで行けたらと思います。
大森:また見に行きたいなっていうライヴを創り上げるのが目標ですね。ふと何の為にライヴをやってるんだ?と考えた時に、見に来てくれてる人達と繋がりたいって気持ちを凄く強く持つようにもなったし。
工藤:ライヴをやる上で聴いてる人が何かひとつ持って帰ってもらえたらなぁというのはずっと考えてたことではあるんですけど。凄い暗い気持ちになってもいいと思うし、凄いテンション上がってもいいと思うし。その日1日終わりを迎える時に、家に帰るまでに「あの人に会いたいなぁ」って思ったりとか、今日の自分を振り返ってみたりとか。自分自身に返るものがひとつ何かあればと思います。
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