Japanese
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感情に敏感でありすぎるがゆえに、喜怒哀楽では名づけることのできない思念の渦の中で、次第に引きつり笑いを起こす神経質なサウンド。80年代ニュー・ウェーヴのような甘美なメロディ、それにハード・ロックやグランジの意匠を受け継ぐヘヴィネス。時折、リズムの中に覗かせる黒さ。そんな様々なエッセンスを昇華した3ピースの研ぎ澄まされたアンサンブルは、しかし"人生とはフラッシュバックし続けるトラウマだ"とでも言いたげな冷めた眼差しで、外部に対してひたすら違和感を発散させていく。それはまるで、手のひらで潰した蠅の死骸とその血痕をまじまじと見つめるようなやり切れなさと、清々しさを伴って。"共有することはできない"という事実のみを聴き手と共有しようとする、そのスタンスが何よりリアルなメジャー・デビュー作。(天野 史彬)