昨年11月にメジャー・レーベルへ移籍したササノマリイのニューEP。"game of life EP"というタイトルが表すように、人生をひとつのゲームに喩えつつ、日常に潜むルーティンが本当に"当たり前"なのかどうかを問いかけてくる。そのコンセプトは、拭えない諦観と、それでも諦めたくない人間の性とが同居する彼のリリックとの相性も良い。ぼくのりりっくのぼうよみとのコラボ曲や、その曲のリミックス版を含む全5曲は聴き手の集中力と想像力をグッと引き出してくれるため聴き応え抜群だが、収録曲のピアノ即興版や、スライム・シンセサイザーとの実験的コラボ・セッション映像を収録したDVDも付属する、本作の世界観を立体的に伝えてくれる初回生産限定盤が特におすすめ。
ササノ自身がリスペクトしているというTV・ゲーム"MOTHER"のオマージュ曲である表題曲「M(OTHER)」、ぼくのりりっくのぼうよみに提供した「CITI」のトラックに新たなメロディと歌詞を施し再構築した「Re:verb」、ねこぼーろ名義での曲をリアレンジした「戯言スピーカー (in synonym)」などを収録。多彩な挑戦に打って出たEPがこのたびリリースとなる。冷たさとあたたかさが共存する声と、柔らかく丁寧に構築された、しかしそれゆえの空虚さも潜むサウンドは、虚像と現実が混在する、孤独の集団としての"街"と共鳴するものだ。別れの存在から目をそらさない歌詞の内容を始め、孤独に寄り添う音楽を生み出す彼の根底に何があるのか、気になった。