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LIVE REPORT

Japanese

SWANKY DOGS

Skream! マガジン 2023年11月号掲載

2023.10.28 @盛岡 CLUB CHANGE WAVE

Writer : 吉羽 さおり Photographer:菅原大輔

岩手県出身の3ピース・ロック・バンド SWANKY DOGSが、10月28日に地元盛岡のCLUB CHANGE WAVEでワンマン・ライヴ[SWANKY DOGS 15th Anniversary One Man"Beyond the wander life"]を開催した。昨年9月に行った[SWANKY DOGS 3rd Full Album「流転」Release Oneman "Trace the 15years"](9月17日盛岡Club Change)で結成15周年を幕開けて以来、地元の仲間や憧れのバンドを招いたツーマン企画"青の日"、"明くる日"、"同腹の日"や、アコースティック・ライヴなど、スペシャルな企画を重ねてきたが、今回の[SWANKY DOGS 15th Anniversary One Man"Beyond the wander life"] はその締めくくりと言えるワンマンとなる。10月にリリースしたミニ・アルバム『ショートシーン』からの新曲も披露するなど、15周年の集大成であり、また新しい始まりへの一歩を踏み出すライヴとなった。

会場を入るとこれまでのライヴのフライヤーや作品リリース時のポップが飾られたり、またバー・カウンターのモニターには過去のレアな映像が流れたりとSWANKY DOGSの15年の歴史に出迎えられて、懐かしい思いに浸ったファンもいただろう。気持ちがタイムスリップしていくようなライヴへの導入から、3人が登場してまず演奏したのは「Raysman」。最新ミニ・アルバム『ショートシーン』収録のこの曲は、現在廃盤となっている2012年のミニ・アルバム『Raysman』のタイトル曲の新録バージョンでもある。ひたむきに突っ走る青い感情を再び真っ赤に燃やし、長くライヴで重ねてきたからこその力強いバンド・アンサンブルで叫びを上げるこの曲から、ライヴ序盤は「スタート」や「君が泣いてる夢を見た」など疾走感のある初期の作品からの曲で観客の手を上げさせた。

グルーヴ感のあるビートで曲を繋ぎながら演奏の熱と会場の温度を高めていくなかで、昨年リリースしたアルバム『流転』からの「季節の変わりめに」が続く。ふと沸き起こるビターな感情も、大人になったからこそ味わい深く、そして日々の燃料にも栄養にもなっていく。パワフルに突き進んでいく曲だが、そこには細やかなアレンジが効いていて、エモーショナルで饒舌だ。カラフルな照明と相まって、会場はぐっと高揚感を増していく。

MCでは、洞口隆志(Vo/Gt)が昨年9月のワンマンからスペシャルな企画を重ね、こうして締めくくりとなるこの日を迎えられたことへの感謝を語る。よーし、と気合いを入れて、久々のワンマンだから曲をたくさんやる予定だと言って続いた中盤は、『ショートシーン』から「MTMY」と「ライカ」をプレイした。アルバムの中でも試みのある2曲で、「MTMY」は音源では打ち込みのチル・ポップ、「ライカ」は歌を引き立てるミニマムで詩的なサウンドが心地よい曲だ。『ショートシーン』のインタビュー時はまだライヴはアレンジを考え中と話していたが、それぞれ曲の雰囲気は生かしつつ、バンド・サウンドで再解釈したものとなっており、上昇一方のライヴのテンションにブレスを入れて空気を柔らかに変えてくれるような場面になった。続く"気持ちは晴れないからもしれないけど、明日は海にでも行こうっていう曲です"(洞口)と紹介した「息も出来ない」の弾むビートとシンガロングで手拍子を起こして、観客を乗せ軽快なドライブへと誘うと、ここからはアクセルを踏み込んでダイナミックなバンド・アンサンブルで加速していった。

後半へと向かうなかでのハイライトとなったのは、『ショートシーン』の曲で、洞口が"俺らしい、うだつの上がらないまま未来に進んでいくみたいな曲"と添えスタートした「誰も知らない」。モラトリアムな気分となんとも言えない焦りとがないまぜとなった明け方の秒針のような長谷川快人(Dr/Cho)が刻むビートにギター・アルペジオと歌が重なり、川村 聡のベースがその淡々とした流れにアクセントをつけていく。緩急のある構成と、シンプルだが重厚な3ピースのアンサンブルで馬力を上げていくサウンドが、観客の心を揺さぶる。そこに続いたのは、映画"書くが、まま"(2018年)の主題歌として起用された「ワンダーライフ」。書いた時期こそ違う2曲だが、皮肉屋で斜に構えながらも煌めくような明日を諦めていない、ソングライター 洞口のまっすぐな眼差しが通底する曲だ。様々な気持ちに振り回されながらも、踏ん張って今を生きている。そういう日々のうねりと呼吸を、ノイジーにメロディアスに紡ぎ上げるバンドだと改めて思う。

終盤のMCでは、この1年、15周年を通したライヴなどをやってきて思い返す機会もいろいろこともあったが、大事なのはバンドが続いていくことだと語った3人。15年を経て、聴いている人のライフ・ステージが変わって、ライヴに足を運ぶことがなくなったとしても、バンドを続けていればきっとまた会うこともできる。そんな希望を語り、"生きて、笑って、会える、それが幸せなことなんじゃないかなと思います"(洞口)と言って、ラストに据えた「hope」へと繋いでいった。『ショートシーン』の1曲目を飾り、"君の声を聞かせて"、"僕らここにいるんだ"と語り掛けるこの曲はまさに、これからも変わらずにこの3人で音楽を奏で、ステージで歌い、新しい曲を作って旅に出る、SWANKY DOGSの思いを形にしたもの。

集大成的なライヴではあったが、バンドの目線はずっと前を向いている。その晴れやかさが会場を満たし、大きな拍手で包まれたワンマン・ライヴとなった。止まない拍手に迎えられて、2度のアンコールに応えた3人。2度目のアンコールではやる曲も決めないままステージへと出てきて、観客が見守るなか舞台の隅っこで3人で密談し「One」に決定。"こういうのは楽屋でやるんだよ!"と長谷川がツッコんでいたが、この気負いがない感じがホームでのライヴらしい。祝祭的だが、自然体な15周年の締めくくりとなった。

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