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LIVE REPORT

Japanese

MyGO!!!!!

Skream! マガジン 2023年12月号掲載

2023.11.04 @東京ガーデンシアター

Writer : 米沢 彰 Photographer:ハタサトシ, 池上夢貢(GEKKO)©BanG Dream! Project

不意にBGMのボリュームが上がると、暗転したステージの前に張られた紗幕に映像が投影され公演の始まりが告げられる。映像が明けると「無路矢」でライヴがスタート。演奏が始まっても紗幕は下ろされたまま、映像がステージの前面に投影される形でライヴは続く。間髪入れずに披露したのは「名無声」。楽奈 (CV:青木陽菜/Gt)のハイトーンなコーラスが楽曲に異質なテンションを作り出す「無路矢」と、調和を重視したコーラス・ワークで彼女たちの表現の奥深さを対照的に表した「名無声」。冒頭の2曲からはMyGO!!!!!の音楽性の広さを全力で表現するスタンスが感じられる。MCでは愛音(CV:立石 凛/Gt)がメンバーを紹介。アニメの中での呼び掛け方やリアクションがそのままライヴの中に持ち込まれ、まるで仮想的であったはずの世界が現実に拡張してきたかのような不思議な感覚になる。

カバー楽曲の「Henceforth」で"あぁ!夏を今もう一回"と歌ったこの日に"11月としては異例の夏日を記録"したことは、何かの因果なのか奇跡なのか、バンドが持っている不思議な力を象徴しているのかもしれない。続いてはそよ(CV:小日向美香/Ba)の軽快なベースがバンドのサウンドをぐいぐいと引っ張る「影色舞」。サビでは5Fまでサイリウムを大きく左右に振らせるほどに会場全体を一体感に包んだあとは、再びカバー曲の「swim」。04 Limited Sazabysが歌うと迷いを置いてくるように泳ぐ"軽快さ"に溢れた楽曲も、MyGO!!!!!の手に掛かると迷いも一緒に泳ぐ"生きる強さ"に溢れた楽曲に聴こえてくる。疾走感そのままに「音一会」へとなだれ込む。感情を揺さぶる叙情パートを含む燈(CV:羊宮妃那/Vo)のヴォーカル・ワークが対照的な多幸感と優しさに溢れるコーラスと最後に調和するこの楽曲が、前半戦のハイライトとして会場のボルテージを大きく上げた。

暗転したステージには映像が流れ、内面の葛藤が詩的に表現される。足音や足跡の表現からは下向きがちに歩く姿が連想され、その内向的な言葉の連続からは、燈の日常が自然に想起される。"一緒に すすもう"のメッセージが流れると紗幕が上がりはじめ、ひと際大きな声援へと繋がる。単独でステージに現れた羊宮は「人間になりたいうた」をピアノ伴奏で熱演。続く「詩超絆」では朗読とアルペジオ・パートのあとに生まれる短い静寂をギターのフィードバック・サウンドが切り裂いたと同時に眩しすぎるぐらいに照明が全開となり、完璧すぎる演出に一気に引き込まれていく。"立たない鳥肌はない"、とかよくわからない造語を考えつくぐらいに圧巻の演出で、会場も盛り上がる。立希(CV:林 鼓子/Dr)のドラムもひと際大振りになり、紆余曲折を経てきたバンドの今の力強さを表すかのよう。

続く「迷路日々」も落差の大きな楽曲だが、改めてこうしてライヴで聴くと、いきなり3拍子に変化したりと、すんなり聴けるわりに難しい曲だと改めて気づかされる。DTM前提の音楽が台頭した結果、そういうパートを入れていかないと物足りなく感じるぐらいにリスナーの耳が肥えてしまった、という現在のシーンの現実でもあり、今のリスナーに受け入れられるバンドのサウンドは以前とは比較にならないほどにレベルが上がってきている。そんなことを考えていたら、その勢いと弾き切る演奏力を証明するかのように「迷星叫」、「碧天伴走」と曲を重ね、5人は十分すぎるほどの余韻を残してステージをあとにした。

アンコール前の幕間では"ZEPP TOUR"の開催が発表され大きな歓声が上がる。発表の熱狂が残ったままの会場にアコースティック・ギターのサウンドが鳴り響き、再び5人が登場。アコースティック楽曲であり、TVアニメのエンディング曲にもなっていた「栞」が演奏される。毎回このあとどうなるんだろう、と思いながら聴いていた楽曲をライヴのインタールードとして生で聴くのはなんとも言えない不思議な感じがしてくる。

アンコールのMCでは自己紹介として全員が声優名を名乗る。ここでは自分自身の生身の姿を見せているという自身への確認も含まれているように感じられるが、その通りキャラを離れた等身大のトークはまたギャップが感じられて面白い。林 鼓子が"まだやっていない素晴らしい楽曲があるんじゃないですか!?"とトークを締め、最後の演奏へ。青木陽菜は"楽奈になるからね"と宣言し、アニメでの楽奈のギターの担ぎ方と完全にリンクした仕草で準備をしたり、それぞれのルーティーンを経てスイッチが入っていくのがステージから伝わってくる。

完全にスイッチが入った5人による今の集大成をステージ上に表現するかのような鬼気迫るパフォーマンスで「壱雫空」、「焚音打」の2曲を続けてプレイしてライヴを締めくくった。アニメ、ゲームというルーツを持つプロジェクトということで、色眼鏡で見られることもあるかもしれないが、MyGO!!!!!には間違いなくロックの魂が宿っている。恐らくそれは、何かを押しつけてくる存在に反抗する従来のロックの精神とはまた異なる、何もせずに生きてしまうことに抗う"必死な生き方"という現代ならではのロックの精神なのかもしれない。


[Setlist]
1. 無路矢
2. 名無声
3. Henceforth
4. 猛独が襲う
5. 影色舞
6. swim
7. 音一会
8. 人間になりたいうた Piano ver.
9. 詩超絆
10. 迷路日々
11. 迷星叫
12. 碧天伴走
En1. 栞
En2. 壱雫空
En3. 焚音打

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