Japanese
なきごと
Skream! マガジン 2022年12月号掲載
2022.10.22 @渋谷WWW
Writer 藤坂 綾 Photo by ニッタダイキ
今年6月に「Summer麺」(読み:サマーヌードル)、7月に「自転車」をリリース。その2曲に「秘密」のアコースティック・バージョンをプラスした計3曲を収録した会場限定盤『ヒメゴト』をリリースしたなきごとが、"なきごと「ヒメゴト」Release Tour 2022"を全国11ヶ所で開催し、そのファイナル(※振替公演除く)が10月22日、渋谷WWWで行われた。
ステージにはまずリュックと添い寝ごはんが登場。『ヒメゴト』にまつわる面白エピソードを披露したり、誕生日を迎えたばかりだという宮澤あかり(Dr)を祝ったりと、彼らの音楽同様ほのぼのとした空気で会場を温める。
そしてなきごとの登場。サポート・メンバーを加えた4人がドラム・セットの前で向かい合い、気合を入れ、"最高の夜をあなたへ"と「セラミックナイト」でライヴはスタートした。水上えみりのキュート且つ鋭い歌声がフロアに刺さり、一瞬にしてなきごとの世界へと誘われる。「Hanamuke」、「忘却炉」と続き、「ユーモラル討論会」では岡田安未の歪んだギターが一段と存在感を放った。ストイックな佇まいがまたかっこいい。
"改めましてこんばんは。我々がなきごとです"と自己紹介ののち、"あなたたちを楽しませに来ました"と「D.I.D.」。ハンドマイクで歌う水上は"最高! ありがとう!"と言い、「ラズベリー」ではソロを含むメンバー紹介を途中で挟み、パワフルなステージを展開する。
水上の合図でフロアが揺れた「Summer麺」、つま弾くギターからの流れで始まった「知らない惑星」と続き、「メトロポリタン」ではこの日のハイライトとも言える盛り上がりを見せ、水上の口から"ヤバい、最高すぎる" との言葉が漏れた。
"あなたとまだまだいろんな景色を見ていきたいという想いを込めて書きました"と歌った「自転車」では、"僕の自転車はここだ"のあとに"あなたの居場所もここだ"と叫び、幻想的な照明の中「フィルター」をしっとりと聴かせる。さらに"生まれ変わったら猫になりたいという曲"「のらりくらり」、そして幸せとは何かを問う「不幸維持法改定案」と立て続けに演奏。様々な表情を見せてくれる。
序盤のMCで"幸せになると不安になる"と話した水上が、ギターをつま弾きながら"わがままなことを言うと、あなたにはそうは思ってほしくない"と言う。"笑いたくないときは笑わなくていいし、逃げたいときは逃げていい。例えば死にたいと思ったら、次のなきごとのライヴまで待ってほしい。そこからどうしたいか決めればいいし、私は何があってもあなたの選択すべてを全力で肯定する。あなたが泣きたくなったときにちょっとでも音楽が、あなたの耳に流れていますように"と、ラスト「深夜2時とハイボール」。静まり返る客席の前方に、強く握りしめられた拳がいくつか見受けられ、それはまるで彼らの誓いのような気がして胸が熱くなる。静寂を打ち破るかのように大きな拍手が鳴り響き、本編は幕を閉じた。
アンコールでは来年1月11日に1stフル・アルバムをリリースすることを発表。そのアルバムに収録されるという新曲「私は私なりの言葉でしか愛してると伝えることができない」を披露し、"今のなきごとにもピュアなラヴ・ソングがあったんじゃないか"と「憧れとレモンサワー」で終了するものの、拍手は鳴り止まずそのまま手拍子へと変わり、ダブル・アンコールへと突入した。再び登場した4人で「癖」を演奏し、ツアー・ファイナルを締めくくる。
アルバム・リリースと併せ、1月29日から始まる自身最大規模の全国ツアーもこの日に発表された。ファイナルは4月30日渋谷CLUB QUATTROにて初のワンマン・ライヴになるという。来年5周年を迎えるなきごと。ふたりの2023年が今から楽しみで仕方がない。
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