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LIVE REPORT

Japanese

4s4ki

Skream! マガジン 2022年12月号掲載

2022.10.31 @Zepp DiverCity(TOKYO)

Writer 真貝 聡 Photo by Kayo Sekiguchi

東京から世界に向けて新たなオルタナティヴ・ポップスを発信する新世代アーティスト、4s4ki。彼女は今年8月にニュー・アルバム『Killer in Neverland』をリリースし、初めての全国ツアーを敢行。東京を皮切りに、大阪、福岡、北海道、愛知と全国を回り、10月31日にエクストラ公演"4s4ki Oneman Live Tour 2022 EXTRA 『Killer in Neverland ; 電脳郷』"を開催した。会場は4s4ki史上最大キャパとなるZepp DiverCity(TOKYO)。しかも、通常はバックDJ GigandectとMC&ヴォーカル 4s4kiの2名でパフォーマンスをしているが、この日はドラマー Uraraを招き、電子ドラムを加えたトリオ編成。場内に入ると、4s4kiの新しい試みに胸を躍らせた10代や20代の若者を中心に、大勢の観客で賑わっていた。

開演時間になり、ステージ中央の紗幕に映像が投影された。それは近未来都市、個人的な解釈で伝えるなら"ファイナルファンタジーVII"に登場するミッドガルのような世界観(※後日、11月1日に公開された「電脳郷」のMVだったことが判明)。観客が映像に見入っていると、紗幕の後ろにマイクを持った4s4kiが登場。その瞬間、フロアから一斉に手が挙がった。こうして新曲「電脳郷」のMVを初披露し、ライヴはスタートした。ステージ前方まで行き、"行ける? 行ける?"と観客に呼び掛けて「LOG OUT」へ。そのあとも重厚なビートと、サウンドに負けない力強いヴォーカルで魅了する「先制の剣」、しゃがみながらひとりひとりに訴えるように歌った「I LOVE ME」を立て続けに披露。ここでMCになり"こうやって3人体制のライヴが観れるのって、ヤバくない?"と興奮気味に尋ねると、会場から大きな拍手が起きた。"ありがとう。みんなかわいい。だからかわいい曲をやります"という流れから「NEXUS」へ。1番を歌い終えると"手挙げれる?"と客席を煽り、どんどん会場の空気を掌握していく。「Cross out」で"不幸な未来も想像はつくけど/もう本当止まんないよ"と歌ったあと、再びマイクを握った。"ここにいる人、聴いてくれてるかな? 今のこの気持ちね、止められない。しょうがないよね"と声を飛ばしビートに乗せて歌い上げるだけでなく、今この瞬間の気持ちも発する。この抑えきれない衝動をステージで放ち続けているからこそ、彼女の歌には人間味の部分が強く表れているのだ。

会場を見渡して静かに口を開いた。"こんなに大きなステージでライヴができるというのも、本当に幸せなことだなと思ってる。でもさ......どんなに幸せでも、急に「自分なんて消えちゃえばいいのにな」とか「死んじゃえばいいのにな」とか思っちゃうことが私はあるんだけどね。みんなはどうかわからない。でも、そういう気持ちをちょっとでも持っている子がいたら......"。一瞬、下を向いてすぐに顔を上げた。"私が絶対に、絶対に助けてあげるから"。そしてギターを持ち、演奏したのは「ブラックホール」。"生きたいんだよ"と歌いながら何度も自分の胸をバンバンと強く叩いて歌う。演奏が終わりを迎える間際、"みんな大丈夫なんだからね"と優しく発するとフロアから賛同する声が上がった。

ライヴは中盤戦になり、ステージ上は4s4kiひとりとなった。
"初めてのワンマン・ライヴが恵比寿のLIQUIDROOMだったんだけど、ありがたいことにチケットが即完になって。そこから2年でZepp DiverCityに立った。それが全国ツアーのエクストラ・ショーってヤバくない? 本当にみんなのおかげです。みんながいなければ、私は音楽ができないから。みんながいてくれたら、ずーっと音楽を作るからね"。一灯のスポットライトがピアノを照らし、椅子に腰掛けてスーッと息を吸い"じゃ、歌うね"と言って弾き語りをしたのは「風俗嬢のiPhone拾った」。そのピアノの旋律は、儚さ、寂しさ、物悲しさを孕んでいた。続けて演奏したのは「SUCK MY LIFE3」で、原曲はウェットに歌っているが、ステージでは力強く心から声を絞り出すように歌唱し、それが今にも壊れそうな刹那的で胸にくる歌声だった。1番のBメロ"この気持ち誰に"と歌ったところで、ピアノを弾く手を止めた。沈黙の中、観客は静かに4s4kiを見つめている。"僕は嘘つきだからさ、誰にも本当のことを言えないんだよね。だから、ここにいるみんなだけは聴いてよ!"。そして再びピアノに手を置いて"伝えれば良いのだろう"を"伝えれば良いのかな"と歌唱し、"誰彼構わず"の箇所では"でもね たぶんここから逃げ出す勇気もなく あなたのことばかりを考えてるの そんな僕もまた嘘つきでしょ"と歌詞を変えて歌った。

感傷的なムードの中、ステージ奥の幕に海の映像が流れた。Gigandectが再びステージに現れて「クロニクル」が始まると、"思い残すことはもうないや......僕はここまで頑張ってきたし"と今にも泣きそうに震わせて声を乗せたあと、海を自由に泳ぐ魚のように優雅な世界を創出した。後半戦に入るとゲーム音楽×トラップ色が強く出た「into the darkness」、ヒップホップなナンバー「Freedom Kingdom」を炸裂。

終盤になり、改めて4s4kiはツアーの喜びを口にした。"生きてて良かったなって、今回のツアーですっごく思えた。本当にみんなのおかげです......っていうクサイことを言いたくないんです(笑)。なんかさ、楽しい曲でもやってみんなで踊り狂おうよ!"。「35.5」が流れると、会場の熱気は最高潮を迎えた。「おまえのドリームランド」で多幸感を生み出し、観客みんなが笑顔を浮かべながら手を挙げて本編が終了。

このままで終わるはずもなく、すぐにアンコールが起きて、4s4kiをはじめ出演者一同がステージに再登場。"みんな、まだまだ元気そうじゃん!"と言って、畳み掛けるようにノンストップで「新世界」、「超5次元」、「超破滅的思考」、「BOUNCE DANCE」を歌った。"とっても悲しい報告! 次で最後の曲です"と告げると、フロアから"えー!"と別れを惜しむ声が起きた。"本当に私のライヴに来てくださるのは老若男女、性別、年齢もいろんな方がいらっしゃって本当に嬉しいです! 感謝感激です! こんなにいっぱい人がいるZepp......ハァ~! この気持ちのまま最後を迎えるね! よっしゃ「STAR PLAYER」!"。ツアーを締めくくるエクストラ公演は約2時間、29曲を走り抜けて幕を閉じた。

最近、各アーティストが終演後にライヴで披露した楽曲をプレイリストで公開する施策が流行っているが、この日はセトリだけを見て、ステージの模様を脳内再生しようとしても難しいかもしれない。なぜなら、原曲にはない歌い方、その場で浮かんだ衝動的な言葉、そのすべてが生ものだったから。あの日、4s4kiはステージに立っていたというより、ステージで生きていたのだ。

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