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LIVE REPORT

Japanese

été

Skream! マガジン 2019年09月号掲載

2019.07.28 @渋谷WWW

Writer 蜂須賀 ちなみ

東京発の3ピース・オルタナティヴ・ロック・バンド、étéがフリー・ワンマン"été ONEMAN LIVE ~ e4 ~"を開催した。同ライヴは、5月19日に下北沢SHELTERで開催されたツアー・ファイナルで発表されたもの。情報解禁からライヴ開催まで2ヶ月しかなかったが、この日はSHELTERに来ていた人数の3倍近くが駆けつけた。

開演を告げるSEが鳴ると、ヤマダナオト(Ba)、小室 響(Dr)が先に登場。暗転し、ふたりが音を合わせ始めると、少し遅れてオキタユウキ(Gt/Vo)が姿を現した。1曲目は「街の灯を数える」。語気の強いハイトーンのポエトリー・リーディング、ビートを担うこともあれば朗々と歌うこともあるベース・ライン、"腕何本あるの?"と驚かざるを得ないレベルで手数の多いドラム。そこに同期によるピアノやストリングス、コーラスが重なっていく。étéの楽曲は情報量が多いうえに構築的で、少しでもズレが生じたら破綻するタイプのものが多いが、3ピースのアンサンブルはクールというよりかはむしろ情熱的な印象。音の粒が豪雨となり、私たちの身体を強く打つ。

"変拍子やポエトリー・リーディングを用いたポスト・ロック"という言い方をするといわゆる"残響系"をイメージする人も多いかもしれないが、このバンドのアプローチは一筋縄ではいかず、いちジャンルにカテゴライズするのは難しい。例えば、「とおくなるのは、」は3拍子のバラードでメロディは全体的にゆったりしているが、ドラムの動きだけが異様に細かい。「ライフイズビューティフル」のヴォーカルはひと言で"言葉を詰め込む"と言えど、ポエトリー・リーディングというよりかはヒップホップに近く、歌詞の語感とアクセントの置き方でリズムを生み出しているような感じがある。また、この日から販売開始された会場限定盤に収録されている新曲「ラスト/ラスト」、「atmosphere」も披露。特に四つ打ちの「atmosphere」以降はダンス・ミュージック寄りの流れが続き、それまでじっとステージを見つめていた観客も、次第に身体を揺らすようになっていった。

ライヴ中、オキタが"でも、無料=僕らのライヴの価値ではないんだよなぁ。今日君が目の当たりにして、改めて君が僕らの価値を決めてくれればいいと思います"と語っていたこと、それから"君と僕はわかり合えない"という趣旨の発言を繰り返ししていたことが印象に残っている。この日彼らは(フリー・ワンマンにもかかわらず)アンコール込みで18曲披露。MCは最小限に留め、演奏でありったけを語るスタイルの背景には、音楽家としての矜持や、聴き手ひとりひとりの感性と意志を尊重する姿勢があるというわけだ。そういう意味で本編ラストの2曲は非常に象徴的だったように思う。「It」は"人は本質的に孤独である"という前提を踏まえたうえで"I love you"を歌う曲であり、「Burden」には"君が望んで 君が迷って 君が選んで そこに居るんだ"というフレーズがある。

WALTZMOREの夏未(Key/Cho)を加えた編成でアンコール2曲を演奏し、ライヴは終了。フロアの様子を見る限り、この日はétéを初めて観る人も多くいたようだが、バンドはしっかり、その実力と根幹にある哲学を混じり気なく伝える演奏を行っていた。"思考することをやめてしまうな"と訴える彼らの音楽は生易しいものではないが、私たちの居場所を奪うようなことも決してしない。今回のフリー・ワンマンが、そんな彼らの音楽を必要とする人の"出会うべくして出会う"場として機能していたのならば、それ以上に嬉しいことはない。



■Setlist
1. 街の灯を数える
2. crawl
3. ruminator
4. デッドエンド
5. DAWN
6. reflection
7. 手遅れ
8. とおくなるのは、
9. Apathy
10. atmosphere
11. ライフイズビューティフル
12. ドルシネア
13. I am
14. ラスト/ラスト
15. It
16. Burden
En1. シネマ
En2. 眠れる街の中で

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