Japanese
Shiggy Jr.
Skream! マガジン 2019年04月号掲載
2019.02.17 @EX THEATER ROPPONGI
Writer 石角 友香
日本のポップ・ミュージックとして、ここまでファンクやEDM以降のダンス・ミュージックを消化し、オープンなライヴを展開している――今のShiggy Jr.にひと安心どころか大いに刺激を貰ったツアー・ファイナル。セットリストを見てもらえればわかることなのだが、今回は2ndフル・アルバムにして最新作である『DANCE TO THE MUSIC』収録曲を網羅。彼らがいかにニュー・アルバムに自信を持っているかがわかると同時に、そもそもライヴに適したアルバムだということもはっきり認識できた。加えて、今回は鍵盤とギター兼マニピュレートを担うサポート・メンバーがふたりステージ上にいることで、グッと原田茂幸(Gt/Vo)の演奏の自由度が増し、より彼のギター・ソロやフレージングに注目する場面が増えた。もっと言えば、メンバー4人のキャラクターが立って、池田智子(Vo)がひとりでフロントを担いがちだった以前に比べると、演奏のパワーで盛り上げるスタイルのライヴになった印象を受けた。これはツアーでたくましく育った部分かもしれないし、今後息の長いバンドになっていくうえでも頼もしい変化であるように受け取れた。
ダンス・チューンを軸に据えているだけに、冒頭から森 夏彦(Ba)のシンセ・ベースが低音の圧でグイグイ押す「TUNE IN!!」からスタート。そして"シギー(Shiggy Jr.)大人化計画"を顕著に表す「シャンパンになりきれない私を」と、新しい側面で畳み掛けてくる。原田がヴォーカルをとる「you are my girl」ではエレピがレア・グルーヴィな彩りを、そして諸石和馬(Dr)の新世代ジャズ以降顕著な生音ヒップホップ的なドラミングも冴えていた。「you are my girl」、そして「Still Love You」や「looking for you」は細部のアレンジ含め、完成度の高い普遍的なポップスをしっかり伝えられる今のシギーを実感できるターム。特に「looking for you」でのギター、ベース、ドラムの音の良さとアンサンブルは、切なくも苦しい池田の歌をさらに映えさせた。そして、スケールの大きな映画のオープニングめいたSEとドラム・ロールから、ライヴの核心である"ダンス・ゾーン"へ突入。音源以上に低音やメイン・リフの盛り上がりでエレクトロニック・ダンス・ミュージックのカタルシスを押し出した「DANCE DANCE DANCE」、マイナー・チューン繋がりで「we are the future」がCHIC的な大人っぽい洒脱なグルーヴを生む。歌メロのかっこ良さにも改めて瞠目。だが、かっこいいだけに終始しないのがシギーである。「どうかしちゃってんだ」では、森がフェイク・ファーのジャケットにサングラスで今時見ない感じのラッパーに変身して、アドリヴが効きすぎなコール&レスポンスを要求。今回のツアーはこれだけでは止まらない。軽くソロ回しを交えて、「恋したらベイベー」、「LISTEN TO THE MUSIC」まで一気に踊れるナンバーで畳み掛けたその熱量には、今までにない楽しさと圧倒するパワーが混在していた。しかもこのグルーヴは人力なのだ。技巧を前面に出すバンドではないけれど、プレイを堪能する楽しみも圧倒的に増した印象だ。
怒濤のダンス・ゾーンをやりきったあとは、第2章に入ったシギー、そして元来の彼ららしさを象徴する「ピュアなソルジャー」で本編を締めくくった。生真面目すぎるほど誠実で、だからこそ底力を発揮する池田智子という人に似合う曲に育ってきたのだと思う。アンコールでは新曲も披露され、バンドが再びいいテンションで加速をつけてきたことを実感できた、自身最多の9公演のファイナル。メンバーもMCで言っていたが、ライヴ・バンド Shiggy Jr.はもっと評価されて然るべし、だ。
[Setlist]
1. TUNE IN!!
2. シャンパンになりきれない私を
3. サマータイムラブ
4. magic of the winter
5. サングリア
6. you are my girl
7. Still Love You
8. looking for you
9. DANCE DANCE DANCE
10. we are the future
11. どうかしちゃってんだ
12. 恋したらベイベー
13. LISTEN TO THE MUSIC
14. ピュアなソルジャー
en1. サンキュー
en2. D.A.Y.S.(新曲)
en3. 誘惑のパーティー
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