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LIVE REPORT

Japanese

真空ホロウ

Skream! マガジン 2015年01月号掲載

2014.11.30 @代官山UNIT

Writer 齋藤 日穂

3ピース・バンドのいいところは、それぞれが全力で、必死に自分の役割を果たしているところにあると思う。真空ホロウもまさにそのうちのひとつであり、だからこそ松本明人は声を張り上げて歌いながらギターを弾いて、村田智史は渾身の力でベースを唸らせ、大貫朋也は全力でドラムを叩くのだ。ひとりも欠けてはならないという緊張感と使命感によってそのトライアングルは作られていく。この日、トライアングルの欠ける瞬間を目の当たりにしてそのことをまざまざと思い知らされた。自主企画"真空パックvol.8~W(with/対バン)編とO編~"にてKidori KidoriやLACCO TOWERと競演を重ね、その後全国4公演に渡って行われた彼らの自主企画イベント"真空パックvol.8~W編とO(ワンマン)編~"のファイナル公演に足を運んだ。

代官山UNITにて行われた同公演のチケットは見事にソールド・アウト。開演時間のブザーが鳴り響くと、バラバラに散っていた観客の意識がぐっとステージに向けられる。"11月30日、代官山 真空ホロウへようこそ"という松本の惚れ惚れするような紳士な物言いとその言葉で真空ホロウの世界に招き入れられると、超満員のフロアの期待を背負って鳴らされたのは「被害妄想と自己暗示による不快感」。大貫の力強いドラムによってこの日のライヴは封を切られた。ギターのアルペジオと煌びやかで伸びやかな松本の歌声が冴え渡り、会場は一気に熱気を帯びる。その後も「サイレン」、「ホラーガールサーカス」と立て続けに披露。赤いライトに照らされた彼らは全力で怒っているようにも見えるし、全力で泣いているようにも見えた。それが顕著に表れたのは「週末スクランブル」で、自問自答のような歌詞を歪んだサウンドに乗せて咆哮する姿はおどろおどろしく、身体中のフラストレーションを開放させるようなひりひりした空気でフロアを満たしていく。表面張力のように今にも溢れかえってしまいそうな感情の波を、胸ぐら掴んで揺らされたようだった。かと思えば一転して「引力と線とは」や「娼年A」、「perfect circle」のようなメロウな楽曲を濃く、深く鳴らし、そのふり幅の大きさは真空ホロウの可能性を示していると言えるだろう。

ここで本日2度目のMC。聞いたことあるジングルに載せて始まったのは"ジャパネットむらた"。某通販番組のごとくがハイテンションでグッズを紹介していく。......と、調子よく紹介していたのだがここで村田の指がつってしまうというハプニングが起こる。そのまま演奏することもできずに、水分を取ったりマッサージを行うものの一向に快方に向かわない状況にハラハラしながら固唾を呑む。"やってみるか"と言って披露された「アナフィラキシーショック」ではやはりベースの音は響かず、途中で演奏は止まってしまう。しかし、村田の茨城なまりの効いたMCを聞いていると笑えてしまい、こんな状況にもかかわらず会場からは思わず笑みがこぼれる。硬くなった気持ちをゆっくりほぐしてくれるような瞬間に、真空ホロウのファンのあたたかさや優しさをじんわりと感じた。お詫びとして披露された「茨城県民の歌」を3人で歌い上げる一幕もあり、ギラギラとした顔だけでなく、"茨城ー、茨城ー"と歌い上げる3人の柔らかい一面も垣間見れた貴重な瞬間だった。

ようやく再開された演奏に観客のボルテージも最高潮に。もう一度演奏された「アナフィラキシーショック」に始まり、思わず口ずさんでしまうようなメロディが印象的な「バタフライスクールエフェクト」、"踊れー!"と叫んでタイトル通りダンサブルにフロアを揺らした「闇に踊れ」など次々とアップ・テンポな楽曲を披露していく。時に会場を睨み付ける様にぐるりと会場を見渡し、それぞれ持っている楽器を全力で鳴らす姿は攻撃的で力強かった。本編最後は、会場限定CD『the◎』に収録されている「回想列車」を丁寧にディープに演奏して幕を閉じた。

アンコールでは最近"頑張る"という言葉が使えるようになったという松本のMCから"みんな頑張ってるんだよ。解ってんだよ"と、TVアニメ"NARUTO-ナルト-疾風伝"のエンディング・テーマ曲としても使用されていた「虹」を披露。さらに「スノーホワイト」を高らかに鳴らして彼らの自主企画イベントは終了した。陽光の様に暖かい光の中で演奏する彼らは力強く、頼もしいものだった。3人の結束力が浮き彫りになった今、これからリリースされるアルバムはどんなふうに真空ホロウを示してくれるのだろうか。

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