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LIVE REPORT

Overseas

Hostess Club Weekender

2013.02.02 @Zepp DiverCity

Writer 山口 智男

開催4回目となるHostess Club Weekenderの初日(2月2日)に足を運んだ。Hostess Club Weekenderは2012年2月の開催以来、洋楽ファンのツボを押さえたラインナップが支持されているライヴ・イベント。VAMPIRE WEEKENDとDIRTY PROJECTORSが各日のヘッドライナーを務める今回もこれまで同様、海外のトレンドセッターが注目しているアーティストが顔を揃えるということで、開演前からステージ・エリアは開演を待ちわびる大勢の観客で埋まっている。


トップバッターはロサンゼルスの4人組、FIDLAR。“Fuck It Dog, Life's A Rusk(=しょーがーねぇー、人生は賭けだ)”の頭文字をバンド名にしている彼らはサーフ~ガレージ・パンク・サウンドとドラッグ、アルコール、スケボーについてばかり歌っているという享楽主義が歓迎されるとともにTHE HIVESのUSツアーの前座に抜擢され、一気に知名度を上げたという。因みにElvis(Gt)とMax(Dr)のKuehn兄弟はTHE OFFSPRINGに影響を与えたオレンジ・カウンティのハードコア~ゴシック・パンク・バンド、T.S.O.L.のギタリスト、Greg Kuehnの息子だそうだ。
その彼らは “私ハFIDLARデス”という冒頭の挨拶を含め、“私ハビールガ好キデス”“ドラエモンガ好キデス”“大丈夫デスカ?(私ハ)大丈夫デス!”“ウ○コウ○コウ○コ”というしょうもない日本語のMCを挟みながら、Pitchforkでベスト・ニュー・トラックに選ばれた「Cheep Beer」をはじめ、リリースしたばかりのデビュー・アルバム『Fidlar』からの曲をテンポよくたたみかけ、客席を大いに沸かせた。
THE HIVESの前座に抜擢されたことも大いに頷ける威勢のいいサーフ~ガレージ・パンクは、しかし、メンバーがスケーターというだけあってハードコアやスラッシュ・メタルの影響も窺え、そんなところが決してシリアスにならないキャラクターとともにFIDLARというバンドの個性を印象づけていた。そして40分ほどの熱演を終えると、彼らは“オシッコガシタイ”と言い残して去っていった。


インプロ風に演奏を始めたUNKNOWN MORTAL ORCHESTRAは60年代調のサイケデリック・ロックを奏で、FIDLARが作った狂騒の名残を、ゆるゆるとまったりした空気に変えた。ニュージーランドのバンド、THE MINT CHICKSのメンバーだったRuban Nielson(Vo/Gt)が移住したオレゴン州ポートランドで結成した3人組である。
アメリカのみならずヨーロッパでも歓迎されたセルフタイトルのデビュー・アルバムの収録曲を中心にリリースしたばかりの2ndアルバム『II』からも「So Good At Being In Trouble」「Swim And Sleep (Like A Shark)」の2曲を披露。甘美なメロディーとドラマチックな展開を敢えて否定したようなミッドテンポの淡々とした演奏が心地いい陶酔を誘う。その彼らがラストの「Boy Witch」では激しい変拍子を交え、刹那的とも言える熱狂を作り出した。そして、ライヴの流れにやっとうねりが生まれたと思ったとたん、演奏はインプロになだれこみ、そのまま幕を閉じた。


デビュー・アルバム・リリース前の新人にもかかわらず、いきなりこの日のラインナップにおける中堅を任されたところにPALMA VIOLETSがいかに注目されているかが窺えた。初日の目玉と言ってもいい。彼らを楽しみにしていたという人も少なくなかったにちがいない。
THE SMITHS、THE STROKES、THE LIBERTINESを見出したイギリスの老舗インディ・レーベル、ROUGH TRADEのGeoff Travisが1曲聴いただけで契約を申し出たというロンドンの4人組はSid Viciousが歌うEddie Cochranの「Somethin’ Else」とともにステージに現れた。それだけで、なんとなくどういうバンドなのかが窺い知れる。
デビュー・シングルの「Best Of Frends」他、3月にリリース予定のデビュー・アルバム『180』からの曲を披露。
パンク・ロック、パブ・ロック、ビート・ロックなんて言葉を連想させるロックンロール・バンド。メンバーの佇まいからは、初々しさよりもいかにもワーキング・クラスらしいタフさが感じられる。じゃあ、古いタイプのバンドなのかと言うと、一概にはそうとも言えず、キーボードが加わった演奏からはECHO & THE BUNNYMEN、THE CUREといった80年代の英国ニュー・ウェイヴの影響も窺える。どこか懐かしさも感じさせつつ、型にはまらないおもしろさがある。Geoffが惚れこんだのも頷ける。途中、興奮した観客3人がステージに上がり、バンドと一緒にポゴを踊り、彼らの演奏を盛り上げた。


シアトルの5人組、BAND OF HORSESはTHE ROLLING STONESやEAGLES他を手掛けてきた名プロデューサー、Glyn Johnsと組んだ最新アルバム『Mirage Rock』中心のセットと思いきや、これまでリリースしてきた4枚のアルバムからの選曲でキャリアの集大成を思わせるパフォーマンスを披露した。カントリー・ロック・サウンドにニュー・ウェイヴ的なきらめきを加えたり、ハーモニーを強化して往年のウェスト・コースト・ロック風に迫ったりと作品ごとにサウンドのマイナー・チェンジを繰り返してきた彼らは2010年のSUMMERSONIC以来の来日となる今回はパワフルなバンド像をアピール。リズムも含め、曲ごとにもうちょっとメリハリがあってもよかったと思うところはあるものの、大音量の演奏はなかなかの迫力だった。


さっき書いたようにPALMA VIOLETSも初日の目玉だったにちがいない。しかし、一際盛り上がった客席を目の当たりにして、やっぱりみんなVAMPIRE WEEKENDを観にきたのだろうと実感した。
セルフ・タイトルのデビュー・アルバムをリリースするやいなや、スマートな音楽性と涼しげなルックスが大歓迎され、時代の寵児になったニューヨークの4人組。アメリカで1位、イギリスで3位になった2ndアルバム『Contra』収録の「Cousins」以下、2枚のアルバムから曲をたたみかけるように演奏していった。彼らのサウンドを特徴づけているアフロ・ビートとエレクトロニックな音使いも織り交ぜながら、彼らの曲が決して小難しくならず、あくまでも極上のポップ・ソングに聴こえるのは、演奏の軽快さとEzra Koenig(Vo, Gt)の甘い歌声ゆえ。50年代のロックンロールや80年代のファンカラティーナも連想したと言ったら歳がバレるか。そんな魅力に加え、個人的にはEzraが巧みなプレイで奏でる流麗なギター・フレーズとその艶やかな音色にも魅了された。
中盤、5月にリリースする3作目のアルバム『Modern Vampire Of The City』から「Unbelivers」も披露。3作目はトラディショナルなVAMPIRE WEEKENDのサウンドから離れたものになるようだ。あっという間に感じられた1時間半の熱演は新作への期待を募らせるものだった。

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