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LIVE REPORT

Japanese

BIGMAMA

Skream! マガジン 2012年06月号掲載

2012.05.13 @ZEPP TOKYO

Writer 山口 智男

プロフィールによると、デビューからツアーは軒並みソールド・アウトを記録。3rdアルバム『and yet, it moves~正しい地球の廻し方~』リリース・ツアー・ファイナルの赤坂BLITZ公演は、物の数分でチケットが売り切れてしまったというし、2011年3月30日、SHIBUYA-AXで敢行した『Roclassick』ツアーのグランド・ファイナルも大震災の直後だったにもかかわらず、1,700枚のチケットが即日完売してしまったそうだ。
そんな快進撃を考えれば、今回のZepp Tokyoソールド・アウトも全然、不思議なことではなかったのかもしれない。しかし、それでも感慨深いものがあるのは、デビューしたばかりの彼らにインタビューした時の印象がいまだに鮮明に残っているからかもしれない。他のバンドにはない個性を感じさせながらもまだまだ、どこか頼りなさそうだったBIGMAMAはそれから6年、ヴァイオリン奏者を擁するロック・バンドとして一歩一歩着実に歩みを進め、気がつけば、2,000人以上を収容できるZepp Tokyoのステージさえちょっと窮屈に思えるバンドになっていた。

今年1月、バンドの新境地を印象づける4作目のアルバム『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』をリリースした彼らは2月2日の千葉LOOK公演を皮切りに“母がまた母の日を終えるまで”と銘打って、全国ワンマン・ツアーを行ってきた。そして、母の日であるこの日、ついに迎えたツアー・ファイナル(実はこの後、番外編と振替公演が予定されている)。
開演時間を10分過ぎた頃、ステージの前の幕が開き、演奏は『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』のオープニングを飾るイントロ的な位置づけの「beautiful lie, beautiful smile」でスタートした。洋服屋をイメージしたと言うか、『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』リリース時のアー写の世界観を再現したステージ・セットがバンドのスケール・アップを実感させる一方で、「#DIV/0!」「GhostWriter」とたたみかける性急な演奏と激しく点滅するフラッシュ・ライトに煽られ、クラウド・サーフィンや“Oi! Oi! Oi! ”という掛け声で応えるファンの反応がBIGMAMAというバンドがどんなシーンから現れてきたかを窺わせ、おもしろい。

性急な演奏でファンの気持ちをしっかりとつかんだ前半。ファンの熱烈な歓迎に感激した金井政人(Vo, Gt)は“序盤から感極まって何も言えねえや!”と叫ぶと、エレキ・ギターをアコースティック・ギターに持ち替え、「Lovescape」と「Zoo at 2a.m.」を披露。最新アルバム収録の後者は金井が奏でるアコギと柿沼広也(Gt, Vo)のリード・ギターの掛け合いを思わせるコンビネーションがおもしろいパーティー・ソング。サビの“フッフー”“フ~”というコーラスも含め、これまでのBIGMAMAとは趣がやや異なる異色曲だ。その「Zoo at 2 a.m.」をはじめ、中盤は新旧の多彩なレパートリーを披露。スタジオ・ヴァージョンよりもファンキーな味付けが加えられたハード・ロッキンな「アリギリス」、金井が軽快なアコギのカッティングを聴かせながら、ウィスパー・ヴォイスで歌う大人っぽいムードの「週末思想」といった最新アルバムからの2曲はBIGMAMAらしからぬ曲調がファンを若干、戸惑わせながらも(?)バンドの新境地と、そんな新境地をファンにぶつけるバンドの心意気を印象づけていたのでは。
『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』は自分の歌を届けるべき相手を、改めて具体的に思い描き、作ったアルバムだった。そういう作品をひっさげてのツアーの最中、喉を痛め、人生のドン底を味わいながらもなんとかツアーをやり遂げたこの夜を、金井政人は“新たなキーになるBIGMAMAのベスト・ライヴ”と語った。

なるほど。思い返せば、ハイライトはいくつもある。ヴァイオリンがドヴォルザークの「交響曲第9番“新世界より”」のフレーズをかき鳴らす「荒狂曲“シンセカイ”」。新境地をアピールした「Zoo at 2 a.m.」「アリギリス」「週末思想」、曲が持つシリアス・ムードに気圧されたようにファンがじっと聴きいった「I’m Standing on the Scaffold」、ファンと一緒に歌った「I Don’t Need a Time Machine」、バンドのスケール・アップを最後の最後にダメ押しで印象づけたUKロック調の「until the blouse is buttoned up」、そしてアンコールで披露したエモい新曲――僕はそこからBIGMAMAというバンドの無限の可能性を読み取った。いや、無限という言葉が大袈裟ならば、予測不可能と言い換えてもいい。開演前、BIGMAMAはここまで来たという感慨が終演後にはBIGMAMAは一体、どこまで行くんだろうという大きな期待に変わっていた。

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