Overseas
JUSTICE
Skream! マガジン 2012年02月号掲載
2012.01.12 @Zepp Tokyo
Writer 沖 さやこ
JUSTICEにとって、音源においてとライヴにおいてのアプローチは全く異なるものである。前者はソング・ライター、プレイヤー、プロデューサーとして、後者はミックスのテクニックを発揮するDJ、そしてステージのパフォーマーとして。これも彼らの興味深いところのひとつだ。
ステージ中央のブースに2人が立ち、両手を上げる。その前には彼らのシンボルであるクロスが輝き、それと共に大歓声が。それを挟むようにして悠然と佇むマーシャルのキャビネットが左右に9台ずつ。その後方にはステージを3面囲うように天井から吊るされたLEDの幕が下りる。その裏にはスポット・ライト。マーシャルにもLEDが埋め込まれているという手の込みよう。
鳴り響いたのは「Genesis」のクラシカルで荘厳なイントロ。重い低音が轟き、音に合わせて光が白と黒を演出する。黙々と音をミックスしてゆく2人。その音に身体と感情を委ねるフロア。2人はゆっくりとそこへ切り込んでいく。すると曲が進むにつれ、「Genesis」の中から「Civilization」のメロディが顔を出す。するとフロアからはまた大きな歓声が。元々あった曲を混ぜて、まったく新しい顔を作り出す。これぞミックスの極意だ。脳天まで血が噴き上げるような興奮。その鮮やかな手腕に鼓動は加速し続ける。
ほぼノン・ストップでステージは展開されてゆく。音に合わせて輝く瞬発力のある照明は同系色で統一され、大仰でありながらもいたってシンプル。そんな堂々とした光の集合体は、彼らの楽曲やパフォーマンスと驚くべきほどにシンクロしてゆく。音と光が作り出す緊張感と緩急に、体内の血の流れが光の速度くらいに動きまわっているのではないかと思うほどぞくぞくする。「Newjack」のイントロが流れるとフロアからはハンズ・クラップが。彼らの生み出す力強い直球のビートに、オーディエンスも思い思いゆらめく。そう思うと再び「Civilization」のギターが流れ……曲と曲の境目なんて存在しない。どんどん思考能力が奪われ“音に乗る”という本能だけが身体に残っていくような感覚。「D.A.N.C.E.」のフックが流れるとこれまでにない大歓声が起こり大合唱。だがベースで流れているのは「Canon」で……彼らにとって、全ての楽曲はステージに通ず! クロスのオブジェの中にはシンセが仕込まれており、Gaspard Augeが「D.A.N.C.E.」のメロディを弾く場面も。Xavier de Rosneyは卓を見つめ黙々と音を紡いでゆく。途中JAY-Zの楽曲をミックスしたりと、硬派な中にユーモアも忘れないところがまたニクい。Gaspardは両手を握り、顔の前に腕を交差させクロスを象る。言葉など無くても、彼らの悠然たる魂が我々のハートにぶつかってくるのだ。
フロアの熱も衰えることを知らない。「Audio, Video, Disco」では音が落ち着いた途端に、ステージの背面に吊るされた無数のLEDが星空のように輝いた。希望の光を感じさせるアップ・テンポの楽曲とその星屑のような光で、宇宙に連れて行かれたような錯覚に陥った。いや、あれは錯覚ではなく、確実にJUSTICEの創生した宇宙だった。
アンコールでは「On’n’On」「Phantom Pt II」を披露し、約100分のステージに幕を閉じた。音と光が新時代を開拓していくようにエネルギッシュで、常に攻めの姿勢を崩さない希望に溢れた圧巻のステージだった。
- 1