Overseas
JAY-Z
2010.08.07 @千葉マリンスタジアム&幕張メッセ
Writer 沖 さやこ
ステージ上のスクリーンに映し出されるカウントダウン。刻一刻と迫るHIPHOP界のビッグアイコンの登場を、マリンスタジアム全体が今か今かと待ちわびる。カウントが「0:00」になり暗転。とうとうこの日のヘッドライナー・JAY-Zが姿を現した。
バックトラックは完全生演奏。ステージに敷き詰められたスクリーンに映し出されるダイナミックな映像を従え、JAY-Zは言葉をひとつひとつ強く刻んでいく。Memphis Bleekを迎え入れ2MCでのステージも多数。渋くてクールなトラックがループする「On To The Next One」、生楽器が際立つ「D.O.A.」――彼のトラックはブラック・ミュージックの枠に囚われず、様々なジャンルを取り込んだバラエティに富んだものだとずっと解釈していたが、そうではなかった。どんな音でも彼の手に掛かれば、彼のラップが乗れば、HIPHOPになってしまうのだ。その魔術と言っても過言ではない極上のセンスは唯一無二のスキルで、言葉をひとつひとつ巧みに操る姿はどこまでも気品に満ちている。ただただため息。
スクリーンにニューヨークの美しい夜景が映し出された「Empire State Of Mind」では、Bridget Kellyを迎え入れる。終盤ではBeyonceとのコラボ曲「Bonnie & Clyde'03」、Rihannaとのコラボ曲「Umbrella」などをメドレーで披露。観客にノリ方の手ほどきもこなす。会場全てを統率するカリスマ性だけではなく、様々な手法で観衆を湧かせるエンタテインメント性も兼ね揃える。彼はまさしく“ステージに立つべき紳士”なのだ。
コール&レスポンスが起こった「Encore」を披露したJAY-Zは丁寧に挨拶をする。彼は最後、“Peace&Love”と高らかに叫んだ。彼の音楽にはそれが全て詰まっていることをこの日全身で感じた。彼がステージから去ってすぐにスタジアム裏から上がった花火はその具現化のようであった。
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