Overseas
HOLE
2010.08.08 @千葉マリンスタジアム&幕張メッセ
Writer 島根 希実
ロックでビッチでクレイジーで男前、本物のロック・ディーヴァはご健在でした。あぁ憧れのCourtney Love様。そんなCourtney率いるHOLEの登場は、少しじらして10分おしだ。
バンドの登場を待ち切れず、開演前から何度も拍手が巻き起こった会場は超満員。タイトな服に真っ赤な口紅の女の子もいたりとやはり女性人気も高いようだ。しかし前方は、セクシーお姉さまの登場を鼻息荒く待つ野郎ファンが多い。そしてモッシュピット少し後ろでは、グランジ世代、アダルトファンが目を輝かせていた。
真っ黒なアイメイク、真っ赤な口紅、黒のフリルのワンピースで登場したCourtney、まずは「Hi!How are you?」と挨拶しただけで会場はわれんばかりの大歓声。少し落ち着け!と言いたくなるほどに、異様な興奮状態だった。
しかし、当然落ち着けるはずもなく、一曲目「Pretty On The Inside」から、Courtneyがそのハスキーヴォイスが枯れるほど叫び歌えば、早くも前方はモッシュピットと化していく。次の「Skinny Little Bitch」では早くも上着を脱ぎ、「TOKIO!!」と煽る煽る。ヘッドアクセももぎ取り、途中の軽い機材トラブルのノイズも吹き飛ばすシャウトで会場を圧倒していく。女性とは思えぬ統率力だ。
Courtneyのアカペラから始まったのは、今年4月にリリースされたHOLEの12年ぶりとなる最新作『Nobody's Daughter』収録の「Honey」。亡き夫Kurt Cobainのことを歌った曲だ。 汗でメイクが落ちてきて、頬の紅潮がみてとれる中、この強くたくましくしなやかな曲を歌う彼女の姿は、生命力がみなぎっていて美しかった。
HOLEの最高傑作とも名高い『Celebrity Skin』の中でも燦然と輝く名曲「Malibu」でも彼女の美しき生命力は瑞々しく輝き、「Pacific Coast Highway」では、伸びやかに広がっていくヴォーカルが、フロアを包み込んでいった。これは、HOLEであり、Courtney Loveであるという感傷で成立していた状況をブチ壊し、ミュージシャンとしての力量を見せつけてくれた瞬間だった。やっぱりすごいんだよこの人!女であることを武器にしながらも、ロックと共存共生し、この人数のフロアを統率できるだけの存在感と包容力を持った女性ミュージシャン、彼女と張り合える女性なんて、この国にいるのだろうか。
ロック・ディーヴァたる証明も済ませたところで、あとはもう爆発するだけ。「Celebrity Skin」「Plump」「Doll Parts」という『Celebrity Skin』と『Live Through This』から最高の3曲をプレイしてくれた。文句なしのセットリストに、オーディエンスも完全燃焼といった様子だった。
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